上 下
130 / 134
2章 魔法使いとストッカー

66 ロダンに言う? 言わない?

しおりを挟む
 教会へ城へ帰る道すがら、スルーボードには乗らず私たちは話し合いをしている。

「ロッシーニ、どうしようか? ロダンに言う?」

「変に期待させてもアレですし… 手と足は構造も違うでしょうから、私は何とも…」

 あ~、そこか。恥ずかしい。ロダンの事情を忘れてたわけじゃ無いんだけど、ね。

「それもだけど、ローラとこれから共同開発? って感じになったじゃない? しかも勝手に決めちゃったし」

 ユーリは声を殺して笑っている。リットは陽気な感じで

「今更だろ? 怒られえちゃえよ。どうせ先を進めるならカイ様にも話を通さないといけないしさ」

「ぷぷぷ、お嬢様、ケイトもです」

 ユーリはまだ笑いながらつけ足す。

「はぁーーー。昨日、『発明は』って言われたばかりなんだよね」

「ふふふ」
「あはははは」

「しかし、ローラってあんな感じなんだね。毒気が抜けると普通の子だよね? しかもかわいいし」

「そうだな。領に来た当時は見張りをつけてたんだけど、結構人気があるみたいだぜ? 教会の前を若い男がうろちょろしてるらしい」

「え? 危なくない? あそこって年老いた神父さんと子供だけじゃん」

「大丈夫だって。工房の親方や職人がちょくちょく顔出して世話焼いてるってよ」

「よかった。まぁ、教会は役場からも見えるし大丈夫か」

「あぁ、警備兵の巡回もあるしな。うちの領は他領に比べて本当に平和だからな。犯罪が少ないんだぜ」

 和やかな笑い声が行き交う広場を通りぬけ、だんだん城へと近づいてきた。

「やばいよ。どうしよう。ねぇ、今日の事は内緒にしない? 試作品も一ヶ月先だし、ね? ロッシーニ」

 ロッシーニは一瞬嫌そうな顔をしてから考えている。

「今日か一ヶ月先かの違いでは? どの道怒られるんですよ?」

「わかってるわよ、そんなこと~、ぶ~」

 不貞腐れている私に呆れたのかロッシーニは助け舟を出してくれた。

「わかりました。詳細のレポートを書いていたと言うことにしましょう。なのでご主人様には報告が遅れたと言うことにします。しかし、伸ばせても十日ぐらいですからね」

「わ~い! やった! ロッシーニ大好き!」

 と、抱きつこうとしたら思いっきり片手で止められた。ん? なぜ?

「お嬢様、節度を守ってください。もう十七ですよ? それにお言葉遣いも。ほら、玄関前にケイトが見えます」

 え? っと振り返ると仁王立ちして腰に手を当てたケイトが立っていた。

「何で怒ってる風なの?」

 こそこそとリットに耳打ちする。

「アレじゃないか? アークがケイトに言付けたのかも」

「アーク?」

 ズズズっと足元から顔だけ出したアークが済まなそうに私を見てから目を逸らした。

「すみません。教会へ立ち寄ることを報告に行ったら、たまたまエントランスにケイトさんが居て…」

 …。無言でアークをにらむとズズズとまた影に戻っていった。

「お嬢様、ケイトさんは心配してるんですよ? 怒ってるんじゃ無いと思いますよ?」

 ユーリはニコニコとしているが、アレは絶対違うと思う。うん、絶対違う。長年の勘だけど。
 色々とあきらめた私はとぼとぼと玄関へ向かう。

「お嬢様、行き先が増えることは良しとしないのはお分かりですか?」

「… はい」

「今回は何事もなかったからいいものを。もっと自覚してください」

「… はい」

「ロッシーニも付いていながら何事ですか?」

「しかし… 制限ばかりではお嬢様は何もできなくなる。時間をとって事前にユーリに安全確認をさせたし、リット様とも連携はできていた。これはお嬢様付きの私が判断した最善の行動だ。ケイトは心配しすぎだ」

「しかしですね!」

 玄関前で『ファイッ』とゴングがなりそうだったので急いで止める。

「まぁまぁ、ケイトもロッシーニも。二人とも私のために思ってくれたんだよね? 私もできる限り注意はしてるのよ? だから、今日はこれで終わりにして。心配かけてごめんね、ケイト」

 ケイトの両手を握って必殺上目使いを久しぶりにやってみる。

「もうぉしょうがないですね。お嬢様には敵いません。さ、さ、お部屋に戻りましょう」

「はーい」

「で? ローラとは何のお話だったのですか?」

 外出していた全員が一瞬ビクッとなる。

「は? えっと、詳細はレポートに書くけど、お礼を言われたわ。この領で引き取ってくれて何とか…」

「そうですか。あの子もまだお若いですからね。やり直せているようならよかったですね」

「あはは、そうね」

 一瞬ドキッとなったよ。やっぱり隠し事は心臓に悪い。みんなごめんね。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

孤独なまま異世界転生したら過保護な兄ができた話

BL / 連載中 24h.ポイント:61,805pt お気に入り:3,750

車いすの少女が異世界に行ったら大変な事になりました

AYU
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:52

箱入りの魔法使い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:10

【本編完結】旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:118,423pt お気に入り:8,783

BLはファンタジーだって神が言うから

BL / 完結 24h.ポイント:298pt お気に入り:29

【完】君を呼ぶ声

BL / 完結 24h.ポイント:177pt お気に入り:87

ハヤテの背負い

青春 / 連載中 24h.ポイント:227pt お気に入り:0

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。