二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

初参戦!!

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 ガラガラガラ・・・。

物凄い勢いで窓の外の景色が変わって行く。
大きな馬車の車輪がうねる様に進む。

「おい・・。まただ。誰が出る・・?」

目を閉じたクレイドルがダルそうに、呟く。
エリカと、ルナが焼いてもたせたクッキーをバリバリ食べていた私も、一瞬で顔を引き締めた。

「・・・私が行こうかしら。ゴホッ・・。」

「あははは!!美月、お水飲む?水筒だよ。」

紫色の瞳は、数人の黒い気配に臆せずに笑顔で水筒を手渡した。

「両手にクッキーの袋を持って言われてもな。おい、アレクシス・・。頼んだ。」

「はいはい!!・・ああ、飲んだら受け取るね。」

クレイドルは腕を組んだまま、目を閉じていた。
アルベルトは、美月のクッキーの袋から1枚取って口に入れた。

「ああっ・・。アルベルト!!もう、勝手に取らないでよ!!」

「1枚ぐらいいいだろう?食い意地が張りすぎなんだよ、美月は。」

頬を膨らませて、恨みがましく見上げた私を揶揄うように見つめていた。

水筒を棚に入れた瞬間に、アレクシスは馬車の中から姿を消した。

 ガシャン・・!!!

カンカン・・!!!キィーーン・・・。  ・・・ガキン!!!

屋根の上で激しい、剣戟の繰り広げられる音がした。

アルベルトはそっと私の上にシールドを張ってくれて、驚いている私の手元から
また1枚、クッキーを取った。

油断も隙もない・・。

「・・・上、3人くらいいない?」

靴音から計算してざっと3人ぐらいが刺客としてアレクシスと戦っている様子だった。

「さっきは5人いたぞ・・。軽い肩慣らしにもならないな。」

クッキーをボリボリ食べながら、ため息をついたアルベルトにクレイドルが笑った。

「そうだな・・。よし、今度は私が行く。」

「次も俺が行くよー。3人じゃ、準備運動にもならなーい・・。」

アレクシスがまた、クレイドルの横隣りに腰を降ろして水筒の水を飲んでいた。

「早っ・・!!もう、終わったんですか?」

「んーー?うん。終わったよー。もっと歯ごたえのある敵が来ると思ってたんだけどなぁ。
俺、今日で7人しか倒してないんだけどー・・。」

「アルベルトは、9人で、私が8人か・・・。次、やっぱりお前が行け!」

長い髪を1つに結んで、ウザったそうに眉根を寄せたクレイドルがアレクシスの言葉に
眉を顰める。

「えー・・いいの?!・・ラッキー!!次は沢山来ないかなぁ。」

・・・みんな、いつの間に?

てゆーか、皆さん魔術騎士団の前にシェンブルグの王子様だよね?

怪物だらけなんですけど・・!?

「あ、そーだぁ・・。次は、美月も一緒に狩ってみる?」
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