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異世界。
導かれた答え。②
しおりを挟むポロッと零れた涙に気付いたアルベルトが、ゆっくりと顔を動かした。
ぺたんと座っている私の姿を見て、苦しそうに瞳を揺らす。
「僕は大丈夫だ・・。死なないよ・・。君を残して・・は・・。」
青い瞳が揺れていた。
伸ばした手が力なく、地面へと落ちる。
「・・・アルベルト!?アルベルト!!しっかりして・・。」
「にゃぁぁん・・・。」
月の光が、差し込み草原が光り輝く・・・。
草っ原のアルベルトが倒れている、少し先の地面に見たことのある
銀色の猫が淡い光の玉に乗って現れた。
「・・銀色の猫!?・・あなた、イムディーナ!?」
銀色の猫が、私をジッと見つめて立ち上がる。
尻尾をピンと立てて、歩き出した。
「ちょっ・・。待ってよ!!何処行くの???」
歩いて数十メートル先が光に照らされ、銀色の猫がその場所の
前でお座りをして私を見つめた。
暗がりではよく確認出来なかったが、比較的最近まで使われていた
であろう民家がそこにあった。
私は、慌ててその家へと走りこむと、大きくないベッドと、テーブルセット、バストイレと、
小さなキッチンが備え付けられた家だった。
私は、あまりの嬉しさに足元で、ウロウロしている銀色の猫を掴んで持ち上げた。
「・・この家、使っても大丈夫なの??
怪我をしたアルベルトをここに運んで手当てしても安全かな!?」
私は、あまりの驚きに大きな声で話しかけた。
しーっとイムディーナは、肉球を私の口に当ててニイィっと微笑んだ。
「大丈夫だ・・!!
我が結界を張った場所だから、敵にも気づかれない。
殿下に異変を感じて、我が狩り小屋のようなログハウスが近くにある場所に
馬(ペガサス)を誘導したのだ・・。
こちらもノア王子が重症で、エレクトラもルードリフも軽症を負っている・・・。
デルメの町が爆発で半分以上が吹き飛んだんだ。
アルベルトと、クレイドルの読心の魔術で、町長の様子が可笑しかったことで
深夜の襲撃に備えて準備していたんだが・・。
ノア王子だけが、町長に飲まされた強い睡眠薬によって逃げ遅れてしまって・・・。」
「そんな・・・。ノア王子は大丈夫なの!?」
「私がいる・・。大丈夫だ!!
それにここには、怪我はしているが医魔術師のエレクトラもいるしな・・。
ただ、王子はエストラの裏切りを知って精神(こころ)の方がな・・・。
数日は、近くの広い洞窟に隠れることになった。
その間、敵からみんなを隠さねばならぬ。
もちろん、その間はみなの治療も続けねばならなくなった。
・・美月、アルベルトは大丈夫か??」
「分かりません!!!黒い矢に、背中を射抜かれていて・・・。
矢を粉砕して、消毒と止血をしております。
・・・安全な場所を確保したので、すぐにトリート魔術を施します!!」
「美月、お前なら大丈夫だ・・!!!もし、万が一、
何かあったら私を呼ぶといい。
他の者の怪我はともかく、アルベルトも大変そうだが・・。
ノア王子の体の回復に時間はかかりそうだ・・。
また、連絡を取り合い合流しよう・・。
銀色の猫は、そちらに置いておくので結界を張る役目と、
必要なものはそいつが供給してくれるのでな・・。
連絡も、毎夜取り合うことにしよう・・・!!!
デルメの採掘場が全ての謎を知る手がかりになりそうだな・・。
美月、アルベルトを頼んだぞ・・・。」
「はい・・!!!分かりました・・。
死なせたくないもの。
・・やれるだけやってみます。
どんな病気や怪我をも治すって・・。
私があの日からずっと目指してきた道ですから。
・・・わたしが、必ずアルベルトを元気にしてみせます!!」
「頼んだぞ・・。
・・美月も、無理をせぬようにな!!!」
光が消え去り、猫がにゃぁーんと普通の鳴き声を取り戻した。
静まり返った部屋の中・・。
私は、ベッドにアルベルトを運び入れて背を上にして寝かせた。
そっと両手を握り、息を吐き出す。
私は目を閉じて、強く祈りを込める。
手を翳し、トリート魔術を施した術式を唱えて光の魔術を繰り出した。
患部に当てて翳した光は、暗い部屋の中の明かりとなって部屋の中を照らした。
「くっ・・。」
全身から、力が吸い取られるような力の吸引力に汗が滲んだ。
力が抜けて、へばりそうになるような魔力の大量消失・・・。
踏ん張るように、床に座り込んでベッドの上のアルベルトの横顔を見つめた。
苦痛に歪む表情を浮かべたアルベルトは息を荒く吐いていた。
思い出すのは、恥ずかしそうに、顔を赤らめながらそっぽを向くアルベルト。
人前では、模範的な王子様なのに、いちいち私に毒づいて突っかかってくる
似非王子で短気団長・・。
だけど
何故か私をいつも最後まで信じてくれる人・・。
自分の想いよりも、わたしが待っている家族の元へと戻ることを
望んでくれる優しい人。
・・・アルベルト、知ってる?
相手を想い、相手の幸せを考えて自分は我慢する・・。
私の幸せを心から望んでくれる。
そんな想いって、きっと
もうすでに恋なんて越えていた・・。
「・・・貴方が死んだら、私は多分、今度こそ耐えられない・・・。
だって、わたし・・。貴方が・・とっても好き。
何度、消しても・・。全然消えてくれないの・・・。アルベルトが好きよ。」
涙目になりながら、絞り出すように光を放つ・・。
血が搾り取られるような、貧血のような震えと痺れに耐えてぎゅうっと目を見開いた。
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