二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

文字の大きさ
59 / 94
異世界。

エストラの願い。

しおりを挟む

「このウランを倍増させる科学・・。それが、我らの目指す真の支配の構図を実現させる。
ノア王子は知らぬ間に、その装置の研究も地下組織に命じて行わせている。
子供の頃から、入院がちだった俺は、ゲームの世界にのめり込んでいった・・。
力や武器、戦いに憧れた。国防の専門家だった父の専門書を読み漁ってばかりいたよ。
この世界では、ノア王子が最初に科学の力を使った武器を考案したんだ・・。
そこからは、早かったよ・・。皆、取りつかれるようにより便利で強いものを求めた」

「・・・ふざけるな!!罪もない人間を、力で押さえつけるなど・・・。」

アルベルトは、震える声でエストラを睨み付けた。

黒い剣先にもその動揺は伺えた。

私たちの世界を見て、発展を遂げていた私たちの世界の悪しき物が
彼がこの世界に転生したことで恐ろしい未来へと大きく動いてしまった・・。

エストラは、大きく高笑いをするとフンと呆れたように鼻を鳴らす。

「そんなの・・魔術だってそうだろ?
いや、そっちの方が質が悪いか・・。
どうせ、選ばれた人間の血で使えるかが決まる。
まるで選民主義の縮図だ!!
科学は、誰でもその恩恵に預かれるんだ!!
・・・しかも、使い方も簡単で誰でも操作が可能だ!
素晴らしい力だと思わないか!?」

「死者は?貧困に喘ぎ、その人たちの救済の為に頑張って研究していたノア王子の
救いたかった民の命を奪っていたことは・・。罪悪感はないの?」

ジャリっと一歩近づくと、アルベルトが私の腰に手を回して止めようとする。


「美月、君だって知っているだろ?
発展の為に犠牲は付き物だよ。
強力な兵器を求める国が多くてね。
この国の犠牲者は、その恩恵への代償のようなものだ。」

「・・・エストラ。
ここは、私たちの世界じゃないのよ?ノアもそう!!
持ち込んではいけない力を持ち込めば、沢山の関係のない人が死んでしまうの・・。
この世界で平和に暮らす人を、支配して王様気取りになって何がしたいのよ!!」

「シェンブルグ、アルベルディア、ルーベリア・・・。この3つの国の覇権を取る・・。
それが主の望みだ!!まずはアルベルト王子・・。お前は、目障りなんだよ。
僕の美月に近づくなんて許せない・・。今すぐ死ねっ!!!!」

銃を構えたエストラは、緑色の結晶の弾を取り出して黒い手袋で掴んで装着した。
金色の瞳は鋭く、アルベルトの青い瞳を睨む。

「・・なっ。まさか、それウラン結晶?・・てことは、ウラン弾なの??」

ゾッとした寒感が私の体を走った。

唇が渇ききって声が擦り切れていた。

私は、信じられない目で銃を構えたエストラを見つめていた。

ニヤリと笑ったエストラの笑みに、私の血管がブチ切れた!!

私は、エストラに剣を構えて向かって行く。

「・・おい!!美月!?無茶するな!!」

私の腕を掴もうとしたアルベルトの手は宙を切った。

眉を顰めたアルベルトは、ルードリフとクレイドルに目配せをした。

「行くわよ!!・・氷結粉砕撃破アイスデモリッシュ!!!」

「へえ?君、魔術の全般を使えるの・・??
ああ・・。ますます、欲しいよ・・。君がぁっ!!!!」

銃へと放った氷の礫が、エストラの右手に当たってその銃を取り落とした。

すぐに私の剣が頭上に振り降ろされて、左手で帯剣していた小ぶりな剣で受け止めた。

   カキィン・・!!
           キィーーン 

剣劇が続く様子を、不安そうにアルベルトが見つめていた。

 ガキン・・!!

フラッと足場を取られた瞬間に、肩目がけて降られた剣劇をやっとの思いで受け止めた。

「くっ・・・!!
・・残念ね、剣劇なら負けないわよっ。」

後ろに思い切り飛んで、構えなおした剣を向けて走り出した。

 キィン・・。

「・・・やるね。速いし、重みのある剣だね。」

「そうね。では、これはどう??」

・・・ドカッ!!

「ぐわっ・・!!」

「・・・蹴りにも自信があるのよ。悪いわね・・。」

私の重い剣すらも、片手で受け止めたエストラの腹に蹴りこむ。

ドカッと、洞窟の壁へと吹き飛ばされたエストラの前に金色の髪をサラりと靡かせて
ほほ笑んだアルベルトが、落ちた銃を構えた。

「・・・な、なにっ。」

エストラは、驚きの形相でアルベルトを見た。

「お前たちが作った武器で、殺された沢山の命を思うと・・。
胸が痛むよ。
一発の魔術で楽に死なせてあげたいところだが・・。それは、死んでいった者たちが浮かばれないだろ?
この自分たちの作った武器で殺されるのはどうだ?」

青い瞳は、鋭い殺気を放っていた。

騎士団の黒い騎士服が死神の衣装のように見える。

「くそっ・・!!」

真っ青になったエストラは、すぐに起き上がり剣をアルベルトに向けて突進していった。

引き金を引かずに、アルベルトは間近に迫ったエストラを見つめて銃を構えた。

ゴクリ・・。

私は、驚くべき光景に目を疑っていた。
エストラの剣も素早く振り下ろされようとしていた。

 パァァァアン・・。

触らずとも、引き金が下され至近距離でエストラの胸に玉が一瞬で飲み込まれた。

剣はもうすぐアルベルトの首めがけて届きそうな距離で一発の銃声が鳴り響く。

「・・っ!!アルベルト!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...