二者択一で転移した令嬢は2つの月の狭間で揺れる。

館花陽月

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異世界。

最後の晩餐②

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苦く笑う私の前に、母がクスクスと笑う。

「じゃあね・・。唱えてみたら?
ハチ公より、やっぱモヤイって。」

母の言葉に目を見開く。

何、その寒すぎる呪文・・・。

「ハチ公より、やっぱモヤイ。」

アルベルトは、難なく唱えた。

すごい適応・・・!!

次の瞬間パァァッと、窓の外が光る。

「・・・なんだ??窓の外が明るいけど・・。」

奏が驚いて席を立って窓辺へと進む。

私は、急に輝きを一層強くした月の光に目を覆う。

丸い玉が現れて、虹色の猫がストッと着地した・・・。

「・・そこ、テーブルだよ?!!」

虹色の猫に突っ込みを入れると、その猫(イムディーナ)は笑い出した。

「せっかく来てやったのに、その扱いは酷いぞ。
アルベルトの姿を5分だけ変えてやろうと思ったのに、やめようかな??」

「・・・すいませんでした!!」

すぐに謝りを入れた。

「どうか、宜しくお願いします!!
こんな親への挨拶嫌です・・。思い出したら絶対笑っちゃうもの!!」

私は、ズザッとテーブルの上に座したイムディーナに土下座で頼み込んだ。

イムディーナは、手を翳しアルベルトの姿を元の姿へと戻す・・。

銀色の光が体を包み、金糸のような髪と、美しい深い青の瞳が現れた。

「まぁ。さすがはルナとカイザルの子ねぇ。美形だわ。」

母が呆然とした顔でアルベルトを見ていた。

兄と弟も、自分と並ぶか上かぐらいの不安そうな瞳でその変化に驚いていた。

スラリと伸びた長身と、黒い騎士服姿の王子は床にサッと屈んで父に礼を取る。

「美月を・・。娘さんを僕に下さい。生涯、大切にするとあの月に誓います。」

美しい所作と、あふれ出る気品の王子に父と母は嬉しそうに頷いた。

「美月を宜しくお願いします・・。そうか・・。君で良かった・・。」

「え・・?」

アルベルトは、驚いて青い瞳を揺らした。

「カイザルとルナは、僕たちにとっても大切な友人だ。
その息子なら、安心して娘を託せる・・。
なんせ、命がけの恋をした2組のカップルの子供たちだからな・・。
許さなかったら、どうなってしまうか・・。
不思議な縁に感謝するよ。不束な娘ですが、どうか守ってやって下さい。」

父の穏やかな笑顔に、アルベルトは嬉しそうに破顔した。

「あっ、そうだ・・。アルベルトは、お母さまが初恋らしいよ?」

クスリと笑った私の爆弾に、父は驚いて顔を顰めた。

「こらっ、美月!!あれは物語のだな・・。」

「どうせ美化したんですよね??鬼団長もかわいい時代があったんですね。」

「美月も幼いころは天使みたいに可愛かったけどな!!」

騒ぎ出した私たちに、イムディーナは苦笑いで見つめていた。

たった5分の変身は終わりを告げ、私は旅立つ・・。

「お母さん、お父さん・・。今まで有難う!!いつでもまた会いにくるから。」

私は、アルベルトを胸に抱いて手を振った。

兄と弟は、切なそうに眉を下げて微笑む。

「美月、無茶しちゃだめよ。あんた、すぐ暴走するから・・。」

その言葉に、胸の中のアルベルトは噴き出した。

「・・・ちょっと。そこ!!笑わない。」

コホンと咳払いをしたアルベルトはまだ顔がニヤケていた。

父に肩を抱かれた母は、薄っすら涙を溜めて私を見た。

月の光が眩く降り注ぐ・・・。

薄くなる視界に、私は目を細めた。

「幸せになるんだぞ・・・。誰よりも。」

一度も見たことがない父の涙が青い瞳に揺れていた。

私は、涙で前が見えなくなっていた。

父の言葉に、胸の中のアルベルトは切なそうに瞳を揺らした。

消えていく私の世界の欠片を最後まで、見つめていた。
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