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最終章 カナリア・ブルスタットはいかがでしょうか
40 断罪の時 アルフレッド視点
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僕の名前はアルフレッド。帝国の第一皇子であり、なおかつ元カナリアの婚約者だ。
しかし僕の元から彼女が離れ、満たされない毎日に飽き飽きしていた。
久々に会った彼女はやはり綺麗で、もう手に入らないからこそ愛おしく感じた。
「アルフレッド殿下、こちらにいらっしゃいましたか」
ガストン伯爵が俺を呼びかける。
今日は特別な日のため、多くの来賓が集まっていた。
彼も不本意ながら呼ぶしかなかった。
「どうかしましたか?」
僕はなるべく笑顔で対応する。
未だ国を支える大貴族の一人なので無碍にはできない。
「いいえ、アルフレッド殿下もそろそろ指定の位置に案内するべきだと思いまして呼びにきただけですよ」
もちろんこの男にそんな親切さはない。
あるのは僕をどう利用しようかだけだろう。
「そろそろ殿下も身を固めるべきですぞ。うちの娘もずっと殿下が選んでくださるのを待っております!」
この男の娘は確かに顔は悪くはない。
だがこいつと同じく人を利用してでも成り上がろうとするため僕はあまり好きではない。
どうしても彼女と比べてしまい、早くこの男を遠ざけたくてたまらなかった。
無視をして、別の料理を探そうとした。
「それにしてもカナリア様はあちらで大変な思いをされているようですな」
僕の動きが止まったことで興味を引けたと思ったようだ。
「どうやら長い間眠りから覚めていないらしいですな。もしかすると実の父親の罪に耐えきれなくなって私を選ぼうとしたのかもしれませんな」
それは僕も聞いている。心配で何度会いに行こうか考えたか。
こいつに言われなくともしっかり僕の耳に届いている。
この下卑た笑いを浮かべるこの男を早く切り捨ててしまいたい。
「アルフレッド様、それにガストン伯爵もお久しぶりです」
別の誰かが声を掛けたのでそちらに目を向けると、紫の髪を持つ令嬢がやってきた。
ブルスタット公国のダミアン王子と結婚した次期王妃に最も近い女性だ。
「おお、ヒルダ王妃!」
「王妃はやめてください」
「何を言うか! 今日は新しいブルスタット公国の新王のお披露目ではないか!」
今日はブルスタット公国で世代交代が起きるのだ。
今のブルスタット国王が退位すると発表して、新たな王が今後は国を治める。
そのため、今日は我が父である皇帝陛下が即位式の前に大規模パーティを開いたのだ。
「おや、皇帝陛下からのお言葉のようですな」
皇帝陛下が立ち上がって、直々に挨拶をなさる。
「今日お集まりいただき感謝する。知っている者も多いだろうが、友好国であるブルスタット公国から新たな王が選出された」
周りから拍手が巻き起こり、俺も拍手をする。
今のブルスタット国王が皇帝の横に並んだ。
「だがその前に我々は謝らねばならぬことがある。先の反逆者となったノートメアシュトラーセ伯爵のことだ」
突然の没落をしたノートメアシュトラーセ家のことは箝口令が敷かれ、多くの噂がまことしやかに囁かれた。
「彼らは反逆の罪で処刑して、息子の元婚約者であるカナリア・ノートメアシュトラーセはブルスタット公国へと送った。だがそれは私の人生で一番の罪だ。彼らに無実の罪を被せてしまったのだからな」
周りからどよめきが上がる。
突然のノートメアシュトラーセ家の悲劇は多くの謎を呼んでいたからだ。
しかしそれは本来は謎のままでおわるはずだったのだ。
とある人物の計画では──。
「馬鹿な……どういうことですか、ヒルダ様!」
ガストン伯爵はヒルダへ詰め寄る。
だがヒルダは頬に手を当てるだけ知らぬ存ぜぬだ。
その返事の代わりに皇帝直属の騎士がガストン伯爵へ包囲した。
「な、何をする! 無礼だぞ! この私を誰だと思っているのだ!」
激昂するガストン伯爵だったが、もう全てが終わりだ。
皇帝陛下の言葉を引き継いで、ブルスタット国王が話をする。
「これはわしの責任でもある。今回の悲劇は我が国の次期王妃候補だったヒルダ・バーミアンとガストン伯爵が起こした悲劇だった。そしてノートメアシュトラーセ伯爵がわしの妻と不貞をしていたと決めつけて殺してしまった」
全ての真実が明るみに出してもらった。
まだ状況に付いてこれていないガストン伯爵はヒルダへと声を荒げる。
「どういうことだ! 其方は我が身可愛さでわしを売ったな!」
共犯者からの裏切りは彼が最も予想していなかったことだろう。
彼女からガストン伯爵とのやり取りした手紙が証拠として受理された。
元々はヒルダも裏切られないように自衛のために持っていたらしい。
だがそれを彼女はこちらへ差し出したのだ。
ヒルダはガストン伯爵の言葉に首を振った。
「いいえ、ガストン伯爵。わたくしも罰を受けます」
そう、彼女は罪を告白してこれから罰を受ける身だ。
「なん……だと。なら次期国王は一体誰が……」
ホールの入り口が開けられた。
新たなブルスタット国王夫妻が。
「よくぞ来てくれた、シリウス・ブルスタット、そしてカナリア・ノートメアシュトラーセ」
皇帝陛下が彼らの入場に拍手で迎えた。
しかし僕の元から彼女が離れ、満たされない毎日に飽き飽きしていた。
久々に会った彼女はやはり綺麗で、もう手に入らないからこそ愛おしく感じた。
「アルフレッド殿下、こちらにいらっしゃいましたか」
ガストン伯爵が俺を呼びかける。
今日は特別な日のため、多くの来賓が集まっていた。
彼も不本意ながら呼ぶしかなかった。
「どうかしましたか?」
僕はなるべく笑顔で対応する。
未だ国を支える大貴族の一人なので無碍にはできない。
「いいえ、アルフレッド殿下もそろそろ指定の位置に案内するべきだと思いまして呼びにきただけですよ」
もちろんこの男にそんな親切さはない。
あるのは僕をどう利用しようかだけだろう。
「そろそろ殿下も身を固めるべきですぞ。うちの娘もずっと殿下が選んでくださるのを待っております!」
この男の娘は確かに顔は悪くはない。
だがこいつと同じく人を利用してでも成り上がろうとするため僕はあまり好きではない。
どうしても彼女と比べてしまい、早くこの男を遠ざけたくてたまらなかった。
無視をして、別の料理を探そうとした。
「それにしてもカナリア様はあちらで大変な思いをされているようですな」
僕の動きが止まったことで興味を引けたと思ったようだ。
「どうやら長い間眠りから覚めていないらしいですな。もしかすると実の父親の罪に耐えきれなくなって私を選ぼうとしたのかもしれませんな」
それは僕も聞いている。心配で何度会いに行こうか考えたか。
こいつに言われなくともしっかり僕の耳に届いている。
この下卑た笑いを浮かべるこの男を早く切り捨ててしまいたい。
「アルフレッド様、それにガストン伯爵もお久しぶりです」
別の誰かが声を掛けたのでそちらに目を向けると、紫の髪を持つ令嬢がやってきた。
ブルスタット公国のダミアン王子と結婚した次期王妃に最も近い女性だ。
「おお、ヒルダ王妃!」
「王妃はやめてください」
「何を言うか! 今日は新しいブルスタット公国の新王のお披露目ではないか!」
今日はブルスタット公国で世代交代が起きるのだ。
今のブルスタット国王が退位すると発表して、新たな王が今後は国を治める。
そのため、今日は我が父である皇帝陛下が即位式の前に大規模パーティを開いたのだ。
「おや、皇帝陛下からのお言葉のようですな」
皇帝陛下が立ち上がって、直々に挨拶をなさる。
「今日お集まりいただき感謝する。知っている者も多いだろうが、友好国であるブルスタット公国から新たな王が選出された」
周りから拍手が巻き起こり、俺も拍手をする。
今のブルスタット国王が皇帝の横に並んだ。
「だがその前に我々は謝らねばならぬことがある。先の反逆者となったノートメアシュトラーセ伯爵のことだ」
突然の没落をしたノートメアシュトラーセ家のことは箝口令が敷かれ、多くの噂がまことしやかに囁かれた。
「彼らは反逆の罪で処刑して、息子の元婚約者であるカナリア・ノートメアシュトラーセはブルスタット公国へと送った。だがそれは私の人生で一番の罪だ。彼らに無実の罪を被せてしまったのだからな」
周りからどよめきが上がる。
突然のノートメアシュトラーセ家の悲劇は多くの謎を呼んでいたからだ。
しかしそれは本来は謎のままでおわるはずだったのだ。
とある人物の計画では──。
「馬鹿な……どういうことですか、ヒルダ様!」
ガストン伯爵はヒルダへ詰め寄る。
だがヒルダは頬に手を当てるだけ知らぬ存ぜぬだ。
その返事の代わりに皇帝直属の騎士がガストン伯爵へ包囲した。
「な、何をする! 無礼だぞ! この私を誰だと思っているのだ!」
激昂するガストン伯爵だったが、もう全てが終わりだ。
皇帝陛下の言葉を引き継いで、ブルスタット国王が話をする。
「これはわしの責任でもある。今回の悲劇は我が国の次期王妃候補だったヒルダ・バーミアンとガストン伯爵が起こした悲劇だった。そしてノートメアシュトラーセ伯爵がわしの妻と不貞をしていたと決めつけて殺してしまった」
全ての真実が明るみに出してもらった。
まだ状況に付いてこれていないガストン伯爵はヒルダへと声を荒げる。
「どういうことだ! 其方は我が身可愛さでわしを売ったな!」
共犯者からの裏切りは彼が最も予想していなかったことだろう。
彼女からガストン伯爵とのやり取りした手紙が証拠として受理された。
元々はヒルダも裏切られないように自衛のために持っていたらしい。
だがそれを彼女はこちらへ差し出したのだ。
ヒルダはガストン伯爵の言葉に首を振った。
「いいえ、ガストン伯爵。わたくしも罰を受けます」
そう、彼女は罪を告白してこれから罰を受ける身だ。
「なん……だと。なら次期国王は一体誰が……」
ホールの入り口が開けられた。
新たなブルスタット国王夫妻が。
「よくぞ来てくれた、シリウス・ブルスタット、そしてカナリア・ノートメアシュトラーセ」
皇帝陛下が彼らの入場に拍手で迎えた。
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