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7. 近づく幸せ
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私がノースティア公爵家の養子になってから2日、私は王家主催の夜会に来ていた。
元々はイスティア公爵様との婚姻が発表される予定だったけど、私とレオン殿下との婚約を発表する日になっている。
ちなみに婚約自体は昨日のうちに結んでいて、これから彼との関係を深めていこうと意気込んでいる。
ミランダ様は「気持ちに気付いてもらえなかった殿下が可哀想」だなんて言っていたけれど、素直に気持ちを告げて来なかった殿下が悪いと思っていた。
そんな複雑な気持ちを抱えて参加しているこの夜会なのだけど、王家主催なだけあって賑わっていた。
「リーシャ、1曲踊らないか?」
「はい、喜んで!」
そうしてワルツが流れ出す。
「いきなり難しい曲だな」
苦笑いしながらそう呟く殿下。
「そうですわね……」
難しい曲なのにも関わらず、彼は余裕の表情で私をリードしてくれた。
完璧なリードのお陰か、私もステップを間違えることは無くて。
周りがリタイアしていく中ペースを乱すことはなくて、気が付けば踊っているのは私だけになっていた。
そして曲が終わると、周りの方々から拍手を送られた。
そして……
「いやー、素晴らしかったですな。私のリーシャをエスコートしてくださりありがとうございました」
……気味の悪い声が聞こえてきて、私は殿下の後ろに隠れた。
「来ないでください……」
「私の婚約者に手を触れるな」
私が震える声を抑えて訴えた直後、レオン殿下が声を上げた。
「は? 婚約者?
それは大変申し訳ありませんでした。どうかご無礼をお許しください」
すぐに深々と頭を下げて謝罪を口にするイスティア公爵様。
すると、周囲の方々が小声で何かを話し始めた。
「リーシャ様、勝手に言い寄られてましたのね……」
「見事に振られてましたな」
「リーシャ様が殿下の婚約者? 妹を虐めていますのに?」
「殿下のお相手、ようやく見つかりましたのね!」
「なんでお姉様が殿下なんかと……!」
それ、聞こえてないつもりでしょうけど、全て聞こえてますわよ?
もちろん口には出さないけれど。
「リーシャ、手を」
「はい」
そう言われて手を差し出す私。
すると、殿下は優しい手つきで私の手をとって、指輪を嵌めてくれた。
「リーシャが僕の婚約者という証だ。何かあった時は君を守ってくれる」
殿下にそんな言葉を向けられて。
「ありがとう、ございます……っ」
嬉し涙は、今回は抑えることが出来た。
夜会の後、私は殿下にノースティア公爵邸まで送ってもらっていた。
「殿下、今日は色々とありがとうございました。また明日、学院で」
「レオンだ」
「はい?」
「殿下と呼ぶのはやめてほしい。僕にはレオンという名前がある」
そう口にする殿下はどこか寂しそうな表情を浮かべていて。
「レオン様、また明日学院で!」
振り向かずに、玄関へと駆け出す私だった。
元々はイスティア公爵様との婚姻が発表される予定だったけど、私とレオン殿下との婚約を発表する日になっている。
ちなみに婚約自体は昨日のうちに結んでいて、これから彼との関係を深めていこうと意気込んでいる。
ミランダ様は「気持ちに気付いてもらえなかった殿下が可哀想」だなんて言っていたけれど、素直に気持ちを告げて来なかった殿下が悪いと思っていた。
そんな複雑な気持ちを抱えて参加しているこの夜会なのだけど、王家主催なだけあって賑わっていた。
「リーシャ、1曲踊らないか?」
「はい、喜んで!」
そうしてワルツが流れ出す。
「いきなり難しい曲だな」
苦笑いしながらそう呟く殿下。
「そうですわね……」
難しい曲なのにも関わらず、彼は余裕の表情で私をリードしてくれた。
完璧なリードのお陰か、私もステップを間違えることは無くて。
周りがリタイアしていく中ペースを乱すことはなくて、気が付けば踊っているのは私だけになっていた。
そして曲が終わると、周りの方々から拍手を送られた。
そして……
「いやー、素晴らしかったですな。私のリーシャをエスコートしてくださりありがとうございました」
……気味の悪い声が聞こえてきて、私は殿下の後ろに隠れた。
「来ないでください……」
「私の婚約者に手を触れるな」
私が震える声を抑えて訴えた直後、レオン殿下が声を上げた。
「は? 婚約者?
それは大変申し訳ありませんでした。どうかご無礼をお許しください」
すぐに深々と頭を下げて謝罪を口にするイスティア公爵様。
すると、周囲の方々が小声で何かを話し始めた。
「リーシャ様、勝手に言い寄られてましたのね……」
「見事に振られてましたな」
「リーシャ様が殿下の婚約者? 妹を虐めていますのに?」
「殿下のお相手、ようやく見つかりましたのね!」
「なんでお姉様が殿下なんかと……!」
それ、聞こえてないつもりでしょうけど、全て聞こえてますわよ?
もちろん口には出さないけれど。
「リーシャ、手を」
「はい」
そう言われて手を差し出す私。
すると、殿下は優しい手つきで私の手をとって、指輪を嵌めてくれた。
「リーシャが僕の婚約者という証だ。何かあった時は君を守ってくれる」
殿下にそんな言葉を向けられて。
「ありがとう、ございます……っ」
嬉し涙は、今回は抑えることが出来た。
夜会の後、私は殿下にノースティア公爵邸まで送ってもらっていた。
「殿下、今日は色々とありがとうございました。また明日、学院で」
「レオンだ」
「はい?」
「殿下と呼ぶのはやめてほしい。僕にはレオンという名前がある」
そう口にする殿下はどこか寂しそうな表情を浮かべていて。
「レオン様、また明日学院で!」
振り向かずに、玄関へと駆け出す私だった。
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