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14. 初ドロップ

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 カーブを抜け、鉄橋にある足場を走っていく。
 だが、ゴーレムの気配は消えてくれない。

 レナさんを置いて行かないように気をつけて走り、数十秒ほどかけて対岸にたどり着いた。

「ここまで来れば大丈夫だろ……」

 ゴーレムの姿は見えるが、川にかかっている鉄橋の向こう側。
 流石にあの重そうなゴーレムが鉄橋を渡れるとは思えない。

「これだけ距離をとっても追いかけて来るってことは……倒さないと不味くない?」

「確かに。ゆっくりだけどずっと追いかけてきたら不味いな……。
 川に落ちてくれたらいいんだけど……」

 だが、ゴーレムは普通に鉄橋の上を歩いてきていた。

 マジかよ。鉄橋って頑丈なんだな。

「戦うか」

「胸にコアみたいなのがあるから、そこを攻撃してみて。私は足手纏いにならないように少し離れてるね」

「分かった」

 足場の悪い鉄橋の上で戦うのは得策ではないだろう。
 だから、柵を乗り越えて河原へと移動した。ここなら戦いやすい。

「真っ直ぐ私の方に来るんだけど!?」

「あー、レナさんにヘイト行ってるのか。じゃあそのまま河原を進もう」

 その時だった。
 ゴーレムが鉄橋から河原に飛び降りてきて、地響きが鳴った。

 同時にゴーレムの動きが止まった。
 着地硬直だろう。この隙に一気に距離を詰める。

 だが、俺が睡眠スキルの効果範囲まで近付く前にゴーレムは動き出した。
 そしてそのままゆっくりと俺の横を素通りしていく。

 完全に隙だらけだ。
 俺は背後に移動して睡眠スキルを使った。

「コイツも効かないのか……」

 効果は少し動きが鈍くなった程度だった。
 だが、ヘイトはまだ変わらない。

「寝ろ!」

 俺がスキルをかけるたびに動きが鈍くなっていく。
 だが、ある程度鈍くなると全く効果が出なくなった。

「まさか……コイツは寝ないのか?」

 これだけ動きが鈍ければ攻撃が来ても簡単に避けられそうだ。
 というわけで、前に回ってから胸にある水晶のような部分を剣で突いた。

 その時だった。
 ゴーレムが両手を上げて……勢いよく振り下ろした。

「あぶなっ」

 地響きと共にさっきまで俺がいた場所の地面が抉れ、土埃が舞う。
 どう見てもヘイトは俺に向いていた。

「当たったら痛そうだなぁ」

 攻撃に当たれば良くて大怪我、悪くて死だろう。
 しかし、予備動作が分かりやすい上に動きが鈍い。回避は難しくはなさそうだった。

 おまけにゴーレムの周りをぐるぐると回れば狙いを定めようとして攻撃してこないときた。
 ならばやる事は1つだけ。ゲームと同じで回避しながら攻撃するのみだ。

 回避時の無敵時間が存在しないから、そこには注意しないといけないが。

「全然効いてる気がしない」

 ガンッ!

 そして移動。

 その時だった。
 ゴーレムが飛び上がって、地面が揺れた。

 そのせいでバランスを崩してしまった。

 奴の腕が迫ってくる。

「危ないっ」

 だが、奴の腕が俺に振り下ろされる事はなかった。
 俺が転ぶ覚悟で地面を蹴ったのもあるが、レナさんがカバーしてくれたのが大きかった。

 ていうか、レナさんもかなり素早く動けている。
 これなら二人で戦っても大丈夫そうだ。

 ちなみに、このゴーレムは最後に攻撃した人にヘイトを向けるらしい。
 だから、予備動作のタイミングで攻撃すれば、攻撃をキャンセルさせることが出来た。

「中々、壊れ、ないな」

「うん。でも、ヒビが……」

 バシッ。

 ガンッ!

「グオォォォォォッ!」

 再び奴が飛ぶ。

 だが、二度目は引っかからない。
 ジャンプして地面の揺れを回避する。

 そして再び攻撃。
 回避。
 攻撃、回避──。

 そしてついに……。

「オォォォォ……」

 コアが砕け散り、ゴーレムの動きが止まった。

〈経験値を獲得しました〉
〈Lv.20になりました〉

 討伐を知らせるチャットが動く。
 そして、目の前に小さい指輪のようなものが落ちた。

「ドロップか……?」

「そうみたいだね」

 アイテムの説明が出てこないか軽くタッチしてみる。
 だが、何かが起こるということは無かった。

「ダメか……。とりあえず、レナさんが持ってて」

「うん」

 指輪を手渡すと、レナさんは何かに入れるような動きをした。
 その瞬間、指輪が跡形もなく消えた。

 やっぱりアイテムボックスは不思議だなぁ……。

「とりあえず、駅まで歩こう」

 ここから駅まではそれほど離れていない。
 歩いても数分だろう。

 問題はオークが行く手を阻んでいることくらいだ。
 昨日のオークとは違って、そこら辺を彷徨っているオークには睡眠が効く。

 だから、しっかり距離を詰めてから倒せば問題ないだろう。
 そう思って駅に向かっているのだが……。

「はあっ!」

 ザシュッ!

「やぁっ!」

 ドスッ!

 ……俺は何もしてないのに次々とオークが倒されていた。
 レナさん、普通に強くね?
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