公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多

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1. 嫌がらせ

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 王立セントリア学院。
 貴族は全員、16歳になる年から3年間通うことが義務付けられているその学び舎は、民が想像している華やかなものとは少し違った。

「あれが浮気しているレシア様……?」
「そうですわ」

 今日もまた始まったわね……。

 そんなことを思いながら、私は噂話をする子爵令嬢達の横を通り過ぎる。

 ここは華やかなのではなく、悪意に満ち溢れている場所になっている。
 貴族の子女が社交界での立ち回りを学ぶ場所としては少し過激で、半月も経たずに心を病んでしまう者も多いらしい。

「レシア様は今日は浮気相手と一緒じゃありませんのね?」

 そんな学院の教室に入ると、早速そんな声がかけられた。

「あら、まだそんな噂を信じていましたのね?」

 嫌な笑みを浮かべる伯爵令嬢のセラフィに、淡々と返す私。

 公爵令嬢のレシアが1つ上の学年の侯爵令息と交際していながらも同じ学年の第一王子殿下と関係を持とうとしている。そんな噂が流されているのを知っていたから。

「噂、じゃなくて事実だといい加減に認めた方が身のためですわよ?」
「そうですわね。噂は半分事実でないといい加減に公言しないといけないと思っていますわ」

 半分なのは、殿下を狙っていないわけではないから。
 もっと言うと、内密に殿下と婚約することが決まっているから。

 逆に、噂を否定するために動かないのも、内密にしている話が公にならないようにするためだった。

「それよりも、貴女こそ殿下に付き纏うのはやめた方がいいですわよ?」
「殿下は私のこと好いて下さっているので、問題ありませんわ。私はヒロインですもの」
「それは良かったですわね?」

 何がヒロインなのか私にはよく分からなかったから、適当に返事をしながら席に座ろうとする私。
 その瞬間、目の前のセラフィが口元を緩ませた。

 嫌な予感がした。悟られないように椅子を見ると、粘り気のある液体が広がっていた。

 そんな時だった。

「時間になりましたので、朝礼を始めます。全員、起立してください」

 私達のクラスの担任の教授が入ってきて、そう口にした。

 一気に教室の中が静かになり、全員が正面を向いて、殿下が礼をするのに続けて私達も礼をする。

 その間に、机の中から接着剤の蓋が覗いているセラフィの椅子と私の椅子を転移魔法を使って交換する私。

「では、着席してください」

 そんな声がかけられて、全員揃って席に座る。
 その瞬間、セラフィの方から水音に似た音が聞こえてきた。

「本日は1限目が王国史に、4限目が魔法論に変更になっています。注意してください。
 以上になります。礼は座ったままで構いません」

 教授がそう言い、殿下に続けて頭を下げる私達。



 それから1時間後、1限が終わり礼をする時だった。
 隣の席からガタンという音が響いた。

 思わず振り向くと、セラフィのドレスが椅子に付いてしまっていて、椅子が立ち上がると同時に持ち上がったようだった。

 絶望に表情を歪めながら、セラフィは私を睨んできた。
 でも、私は無視を決め込んだ。


 私の行動が良くないことだとは分かっているけれど、こうやって痛い目を見せていかないと学院で生き延びることは出来ない。
 だから、仕方ないとは思っても、人の不幸を楽しむつもりは欠片もなかった。
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