公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多

文字の大きさ
2 / 14

2. 偽り

しおりを挟む
 あの後、セラフィは早退することになった。
 ドレスが椅子から剥がれなくなっていて、切る羽目になっていたから。

「これで今日は平穏に過ごせそうですわ」

 セラフィが教室から去ってからそう口にするのはノールチェス公爵家のアリス様で、私とは学院に入る前からの付き合いがある。
 彼女も私と同じようにセラフィに迷惑していた。

「そうですわね。今日はランチを楽しめそうですわ」
「ええ」

 私達がセラフィに受けてきた嫌がらせは、ランチの時間によく行われていた。

 スープを運んでいるときにぶつかられたり、食べているときに頭からジュースをかけられたり、こっそりドレスを切られたこともあった。
 でも、私たちが表立って反撃することは無かった。

 同じことをしたら、セラフィを罪に問うことが出来なくなってしまうから。
 そのせいで嫌がらせが止まることはなかったけれど……。

「そろそろ次の授業の教室に移動しましょう」
「あの先生、時間に煩いですものね」

 そんな会話をしながら席を立つ私達。
 そんな時だった。

「レシア様、セラフィの席に接着剤を垂らしたの、貴女なんですってね? 一体何がしたいのですか!?」
「あら、貴女には私がそんな下らないことをするように見えましたのね? 侮辱された気分ですわ」

 声のトーンを下げながら不機嫌に見えるように伝えると、声をかけてきた伯爵令嬢は視線を彷徨わせた。

「も、申し訳ありませんでした。事実を教えていただけませんか?」
「あれ、セラフィさんが自分で垂らしていましたのよ」
「そうでしたのね……。疑って申し訳ありませんでした」

 そう頭を下げられ、私は一言付け加えた。

「簡単に人の言葉を信じないほうが、身のためですわよ」
「どういう意味ですか?」
「そのままですわ」

 この学院は人を陥れるため、偽りの噂話であふれかえっている。
 だから、私は正義感に溢れる彼女が悪意に呑まれないように助言をしたつもりだった。

 それに、これ以上セラフィに罪のない方が利用されないようにしたかったから。

「では、私は移動するのでこれで失礼しますわ」

 そう言って、私はアリス様と教室を後にした。


「レシア様は優しすぎますわ」
「余計な恨みは買わないほうがいいので、こうしているだけですわ。優しいと思ったら大間違いですわ」
「ふふ、そうでしたわね」

 そんな会話をしながら廊下を進む私達。
 次の授業が行われる講堂に着くと、早速他の令嬢たちが集まってきた。

 全員私達の機嫌を取ろうとしているのか、配慮しているような声をかけてくる。
 でも、公爵家と関係を持ちたいという欲望が見え透いていて、一気に私の気分は悪くなっていった。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

第一王子は私(醜女姫)と婚姻解消したいらしい

麻竹
恋愛
第一王子は病に倒れた父王の命令で、隣国の第一王女と結婚させられることになっていた。 しかし第一王子には、幼馴染で将来を誓い合った恋人である侯爵令嬢がいた。 しかし父親である国王は、王子に「侯爵令嬢と、どうしても結婚したければ側妃にしろ」と突っぱねられてしまう。 第一王子は渋々この婚姻を承諾するのだが……しかし隣国から来た王女は、そんな王子の決断を後悔させるほどの人物だった。

王侯貴族、結婚相手の条件知ってますか?

時見 靜
恋愛
病弱な妹を虐げる悪女プリシア・セノン・リューゲルト、リューゲルト公爵家の至宝マリーアン・セノン・リューゲルト姉妹の評価は真っ二つに別れていたけど、王太子の婚約者に選ばれたのは姉だった。 どうして悪評に塗れた姉が選ばれたのか、、、 その理由は今夜の夜会にて

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

婚約破棄?王子様の婚約者は私ではなく檻の中にいますよ?

荷居人(にいと)
恋愛
「貴様とは婚約破棄だ!」 そうかっこつけ王子に言われたのは私でした。しかし、そう言われるのは想定済み……というより、前世の記憶で知ってましたのですでに婚約者は代えてあります。 「殿下、お言葉ですが、貴方の婚約者は私の妹であって私ではありませんよ?」 「妹……?何を言うかと思えば貴様にいるのは兄ひとりだろう!」 「いいえ?実は父が養女にした妹がいるのです。今は檻の中ですから殿下が知らないのも無理はありません」 「は?」 さあ、初めての感動のご対面の日です。婚約破棄するなら勝手にどうぞ?妹は今日のために頑張ってきましたからね、気持ちが変わるかもしれませんし。 荷居人の婚約破棄シリーズ第八弾!今回もギャグ寄りです。個性な作品を目指して今回も完結向けて頑張ります! 第七弾まで完結済み(番外編は生涯連載中)!荷居人タグで検索!どれも繋がりのない短編集となります。 表紙に特に意味はありません。お疲れの方、猫で癒されてねというだけです。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

田舎娘をバカにした令嬢の末路

冬吹せいら
恋愛
オーロラ・レンジ―は、小国の産まれでありながらも、名門バッテンデン学園に、首席で合格した。 それを不快に思った、令嬢のディアナ・カルホーンは、オーロラが試験官を買収したと嘘をつく。 ――あんな田舎娘に、私が負けるわけないじゃない。 田舎娘をバカにした令嬢の末路は……。

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~

舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」 わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。 ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。 驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。 ※話自体は三人称で進みます。

処理中です...