公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

8. セラフィside 勘違い

「どうして……どうしてなの……。どうしてゲームと同じにならないのよ!?」

　腰の痛みから早退したセラフィはベッドに横になりながら、そんなことを呟いていた。

「これも嫌がらせをしてこないあの女のせいだわ」

　そう決めつけているが、そもそもこの世界はゲームと同じ世界ではない。
　悪役令嬢に嫌がらせをすること自体、本来のゲームには存在していない。

　この記憶は、セラフィの妄想とゲームの記憶が合わさった結果だった。
　そして狙っているはずの王子の顔もゲームとは異なっていて、よくない方向に向かわせてしまっているのだが……本人はまだ気付かない。

「こうなったら、あの女に大怪我をさせるしかないわ……」

　火傷で醜い顔になれば、王子は可愛い自分の方を向いてくれる。そんな狂った考えからの作戦だったが、レシアの家が魔法に強いと知ったのがついさっきのことで、火傷をさせる作戦は失敗したと悟っていた。

　そして、今度は階段から突き落として怪我をさせようと画策している。

「学院にも来れないようにすれば、王子様は私を見てくれるはず……。だって、私はヒロインなんだから」

　歪む前の記憶では、セラフィがヒロイン気取りの悪役令嬢で、レシアがヒロインなのだが……それに気付くことはない。

「そうと決まれば、早速練習よ！」

　そう決めたセラフィは、早速レシアと体格の似た侍女を呼んで、護身術の練習と称して突き落とすための練習を始めた。



　そして翌日……。

「身体中が痛いわ……」

　しっかりと筋肉痛になってしまい、この日は学院を休むことにした。
　幸い、魔法の授業以外は記憶にある授業よりも簡単で、受ける必要はなかったから。

　それでも、王子が1位でレシアが2位。セラフィは魔法の成績が足を引っ張って4位だった。
　でも、今日はその魔法の授業もない。だから、安心して休むことができた。