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3巻
3-2
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2
宿に戻ると、ミリィとクロードが朝食をとっている最中であった。
「おかえりなさい、ゼフ君」
「んぐんぐ……早く食べないとなくなっちゃうわよ」
見るからにボリューミーな朝食をもぐもぐ食べている。育ち盛りだからだろうか。
確かに、ミリィはもっと成長したほうがいい。胸とか、色々な。
「もちろんそのつもりだが……飯が終わったら、今日はサンレイ山脈に行かないか? 目的はボスなのだが」
そう言うと、二人は手を止めてワシに目を向ける。文句がありそうな顔だ。
「それはいいけど……それならもっと早く言ってよ」
「あそこは遠いですからね。今から行くと昼になりそうですが」
まったくもってその通りである。だが、文句はセルベリエに言ってくれ。
「そもそも、ボスがいるって保証はあるの?」
「知り合いに教えてもらったのだ」
そう言うと、二人の耳がピクリと動く。
「女の子……ですか?」
クロードが聞いてくる。ミリィも同じことを思っているようだ。
「そうだが……」
何故わかったのだろう。
ワシが答えると、はぁ、とため息をつく二人。
「……ま、いっか、私は行ってもいいよ」
「ボクも構いません」
「そうか、レディアには既に言ってある。弁当を作って待っているらしいから、すぐに向かうとしよう」
忙しない移動の後、ワシらはサンレイ山脈の山頂付近に辿り着いた。
前にサニーレイヴンと戦った場所を見渡せる岩場に腰を下ろして、レディアの作ったサンドイッチを食べている。
前回戦ったあたりの地面には、セルベリエが魔導で焼いた跡がある。おそらくあの付近にサニーレイヴンが復活するのであろう。
レディアの作ったサンドイッチを頬張ると、肉汁が溢れ出てきた。
パンの間に挟んであるのは、こぼさずに食べるのが難しいほどの、たっぷりの野菜と鶏肉。
「栄養満点のサンドイッチだからね~」
「すごく美味いぞ、レディア」
「んむ……大きふぎて、口に入れるのが難ひいですね……」
「ほほふはひはいほはららいれほ」
「あっはは、ミリィちゃん、口に物が入ってる時に喋っちゃ駄目だよ~」
なんだかんだで皆すぐ、サンドイッチを平らげてしまった。
そういえば、昼の今ならアインを長時間呼び出しておけるかもしれない。
試しに呼んでみるとするか。
サモンサーバントを念じると、光の中からアインがあらわれる。
「くろーどーっ」
「わわっ!?」
呼び出すなり、アインはクロードの胸に飛び込んでその身を埋めた。
アインがもぞもぞと動くたび、クロードの顔は羞恥に染まる。
「あ、アインちゃんてば……」
「くっくっ、懐かれたようだな」
「クロードいいなぁ~」
「ねぇねぇアインちゃん、これ食べる?」
アインのために作ってきたのだろうか。
レディアは小さなサンドイッチを差し出すが、アインはぷいと横を向く。
「いらない!」
「悪いなレディア。アインはこれしか食べないんだ」
「むぅ……そのジェムストーンをサンドイッチに挟めば……」
ぶつぶつと一人ごちるレディア。アインに拒否されたショックは意外と大きいらしい。
む、そういえばそろそろサニーレイヴンの復活時間か。戦闘待機しておいたほうがいいだろう。
「そろそろサニーレイヴンが復活するかもしれない。ワシとレディア、クロードとミリィがペアで、危なくなったら即テレポートで離脱。作戦は来る途中に話した通りだ」
「おっけー♪」
「わかりました。よろしくお願いします、ミリィさん。さあ、アインちゃんはゼフ君のところへ」
クロードが胸に収まっているアインを捕まえようとするが、アインは羽を器用に動かしてその指を逃れる。
「こ、こらアインちゃん!」
「おいアイン! お前はこっちだ!」
「あたし、くろーどのところがいい!」
「アインちゃん、めっ! ゼフ君の所に戻らないとダメじゃないですか!」
「やだもーん!」
アインはそのままクロードの胸甲に潜り込んで出てこない。
うーむ……完全にクロードに懐いているな。
まぁ、クロードに預けているうちに、何かわかることがあるかもしれない。
「……まぁいい。時間もないしな。アインを頼んだぞ、クロード」
「わかりました。……大人しくしててね、アインちゃん」
「は~いっ」
上機嫌で胸甲から顔を出すアイン。
よく考えたら、魔導を無力化するスクリーンポイントを持つクロードの傍が一番安全か。
ともあれ戦闘準備だ。
皆に強化魔導をかけると、ワシの魔力は半分になった。
「ミリィたちが先行してくれ。こちらは、ワシの魔力が回復してから追いかける」
「わかった! 行こう、クロードっ!」
「了解です。ミリィさん」
テレポートで草むらに降りるミリィとクロード。油断は全く見られない。
いい雰囲気だ。二人とも成長したものだな。
見送るワシに、レディアが神妙な面持ちで話しかけてくる。
「ゼフっち」
「どうした?」
「いつもペアの時はクロちゃんかミリィちゃんを選んでるよね」
「……そうだったかな」
気にしたことはなかったが、言われてみればそうだったかもしれない。
「見た感じだと、その時々で危なっかしいほうを選んでる感じだったんだけど……今日は私なんだ」
「そんなことは……」
言いかけてレディアの方を向くと、悲しそうにじっとワシを見ていた。
普段は見せない表情だ。
もしかして、自分だけグロウスのレベルが低かったことを気にしているのだろうか。
「……馬鹿者、ワシがそんなくだらんことを考えていると思ってたのか? 効率よく戦えるように組む相手を選んでいただけだ」
「だから私のフォローをするために……」
「効率よく敵を屠るためだ。今回はワシとレディアが組むのが一番効率がいい。それだけの話だ……そんなことより、例の武器は持ってきたのか?」
「朝、持ってこいって言ってたヤツ? あるけど……」
そう言ってレディアが袋から取り出したのは、青い宝石を埋め込んだ斧。普段使っている大斧よりさらに大きく、武骨な代物である。
ワシのオーダー通りだ。
「こんな感じでいいのかなぁ……?」
「あぁ、最高の出来栄えだ。これならいけるぞ」
まだ不安そうなレディアの尻をぽんと叩くと、レディアはぴくんと身体を揺らす。
先刻よりはだいぶリラックスしたようである。
「もう、ゼフっちったらどこ触ってんのよ~」
「……丁度いい位置にあっただけで、深い意味はないぞ」
「はいはい、まったく、えっちなんだから」
緊張をほぐそうとしただけなのだが……まぁ目的は果たしたから良しとするか。
「見て! ゼフっち」
レディアが指差す先を見ると、クロードのすぐ傍でサニーレイヴンが炎の中から復活するのが見える。
クロードもそれに気づいたようで、ミリィを後ろに下がらせた。
「ワシらも行こう」
「そうねっ」
元気よく返事するレディアは、いつもの顔に戻っていた。
やれやれ、大人びていても意外と年相応なのだな。ため息をつき、ワシはレディアの手を取ってテレポートを念じる。
ワシらが草むらに降り立ったのと、クロードがサニーレイヴンに斬りかかっていくのはほぼ同時であった。
「だああっ!」
掛け声とともにサニーレイヴンの翼を切りつけると、赤い翼から羽根が舞う。
繰り出される連撃。
まとわりつくクロードを振り払おうと、サニーレイヴンは翼を回転させ打ちつけてくるが、クロードはそれを後ろに飛んで躱す。
離れた獲物を追撃するように放たれたレッドバレットの魔導も、クロードが事前に展開していたスクリーンポイントで全て無効化。
サニーレイヴンは魔導以外の攻撃は大したことはない。
魔導を無効化する魔導、スクリーンポイントを持つクロードにとっては相性の良い相手だ。
クロードは以前戦った時の経験もあるからか、安定した戦いぶりである。
「ブルーゲイルっ!」
ミリィもクロードの後ろに回り込みながら魔導を放つ。
ミリィは徹底してブルーゲイルしか使わない。
サニーレイヴンに蒼系統魔導を使うのは発狂モードになってからにしろと言っただろ、まったく。
「ねーゼフっち、火の鳥になったら蒼属性が効くようになるんだっけ?」
レディアがクロードたちの戦いを見ながら問いかけてくる。
「うむ、サニーレイヴンは発狂モードになると蒼属性が弱点になるのだ」
「そうなったら、私の出番ってことね」
「あぁ、合図はミリィが送ることになっている」
ミリィはスカウトスコープでサニーレイヴンの魔力値を測りながら戦っている。
発狂モード寸前になったら、以前ワシがやったように、ミリィがブルーウォールでボスの動きを封じる。それが合図だ。
動いている魔物をブルーウォールで固定するのは難しいが、ミリィには以前から何度か雑魚相手に練習させているし、クロードがサニーレイヴンの動きを止めているから何とかなるだろう。
さて、そろそろワシも攻撃に参加するか。
「サニーレイヴンは遠くからの攻撃にも魔導で反撃してくる。しっかりと守ってくれよ」
「おっけー♪ 任せときなさい!」
どんと胸を張るレディアの後ろからサニーレイヴンを狙い、タイムスクエアを念じる。
時間停止中に念じるのは、ブラックスフィアとグリーンスフィア。
――二重合成魔導、グラビティスフィア。
サニーレイヴンに向けて魔導を解き放つと、燃えているように赤いその身体の中心に黒い魔力球が生まれ、ゴリゴリと奴の身体を削っていく。
攻撃を受けながらもサニーレイヴンはワシの方を睨み、赤い熱線を放射してきた。
――緋系統魔導レッドブラスター、か。
「レディア!」
「はいはい……っとぉ!」
レディアは先刻取り出した大斧で熱線を受け止めた。
熱線を受けた大斧はバチバチと火花を散らしながらも、その形状を保っている。
通常の武器であれば、ここまで強力な熱線を受けると破損してしまうだろう。
だがレディアに作らせたこの大斧は、武器に蒼属性を付与する海神の涙の結晶を埋め込んでおり、緋属性の魔導を弾くのだ。
熱線が途切れ、レディアが大斧を地面に下ろす。大斧の刃は熱を帯びて少し赤くなっていた。
「お~すごいねこれ。ほんとに魔導を弾いちゃった」
「疑似的にではあるが、魔力線を張り巡らせているからな。かなり大型になってしまったが、緋属性の攻撃はほとんど弾くことができるだろう。フラッドアクスとでも名付けておくか」
「……なんで私が作ったのにゼフっちが名前つけてんの?」
「わ、ワシだって手伝ったではないか」
ジト目でワシを見るレディア。意外と細かい性格である。
「君の相手はこっちですよっ!」
「クルルゥ!?」
クロードが斬撃を加え、サニーレイヴンはまたクロードの方に首を向ける。
いくらフラッドアクスといえども、連続で魔導を受ければ壊れてしまうだろうからな。
クロードには頑張ってもらわなければならない。
《ミリィ、奴の魔力値が70000を切る前にブルーウォールだぞ!》
《はいはい、わかってるわよ!》
ミリィに念を押しておく。
ワシの方もレディアを支援する魔力を残して戦う必要があるからな。瞑想しながら最低限の魔力は維持している。
ワシがグラビティスフィアを放つとサニーレイヴンがレッドブラスターで反撃し、それをレディアがフラッドアクスで叩き落とす。
何度か繰り返していると、レディアがフラッドアクスを地面に突き刺した。
「あっちち、柄にもっと布巻いたほうがいいなぁ……」
どうやら熱を持ってしまったようである。グローブを装着しているがそれでも熱いようで、自分の手にふーふーと息を吹きかけていた。
急拵えの武器は、さすがに粗が多いか。
クロードの方はまだ問題なく戦えているようだ。ミリィの支援も上手くいっている。
クロードの後ろから放たれたブルーゲイルがサニーレイヴンを削り、相手の反撃はクロードがスクリーンポイントで防ぐ。安定した戦いぶりだ。
昔は二人の連携も拙く、見るに堪えなかったが、ずいぶん成長したものだな。
サニーレイヴンはボスの中では中の下といったところで、奴の魔導を何とかできるなら誰でも倒すことはできる。とはいえ二人、しかも低レベルで戦えるのは大したものだ。
レディアは暇でしょうがないのか、屈伸を繰り返している。
そのたびに揺れる胸。……気が散るではないか。
それにしてもクロードの奴、相当タフだな。
流石に防御で手一杯になっているが、殆どダメージを受けてない。
感心しながら見ていると、サニーレイヴンの周りに氷の壁が発現した。連続して生まれる氷の壁に、サニーレイヴンの身体が閉じ込められていく。
――ミリィの合図だ。どうやら発狂モード寸前らしい。
念のためスカウトスコープで確認すると、魔力値は70000を切っている。
「さあいくぞ、レディア」
「おっ、やっと私の出番?」
すっかり退屈していたレディアは身体を起こし、フラッドアクスをぶぅんと振って肩に担いだ。
よし、強化魔導をかけ直しておくか。
ワシはタイムスクエアを念じ、攻撃強化のレッドグローブを二回、さらに速度強化のブラックブーツを二回念じる。
――二重合成魔導、レッドグローブダブル。そして、ブラックブーツダブル。
炎と風、その魔力の光が渦となり、レディアを包んだ。
「おおっ、すごい! 力が溢れてくるよ!」
「まだだぞ」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて強化の感触を確かめ、今にも飛び出していきそうなレディアに、ワシは待ったをかけた。
もう一度タイムスクエアを念じ、時間停止中にブルーウエポンを二回念じる。
――二重合成魔導、ブルーウエポンダブル。
タイムスクエアで同じ魔導を二回念じると、普通に二回撃つよりも効果が上がる。
それは武器に属性を付与するウエポンも同じで、敵の弱点を突けばその攻撃力はさらに上がるのだ。
しかもフラッドアクスは最初から蒼属性が付与された武器である。
つまり蒼属性魔導を三回重ね掛けしたことになるのではないか。
試すのは今回が初めてだが、その可能性は高い。
ブルーウエポンダブルにより蒼属性が三重付与されたフラッドアクスを持ち、身体強化もついたレディアが地面を蹴る。
一陣の風の如く大地を走り抜けるレディア。
ミリィの横を抜け、クロードを飛び越え、サニーレイヴンの脳天に思い切り一撃を食らわす。
サニーレイヴンの身体は、ぴしぴしと音を立てて割れていく。中から炎の塊があらわれた。
――発狂モード。
燃え盛る炎を連想させるサニーレイヴンの瞳が、ぎらりと光る。そしてレディアに狙いを定めた。
「危ない! レディアっ!」
ミリィが叫ぶ。
「下がってくださいミリィさん!」
クロードはワシと一緒に戦ったことがあるので、サニーレイヴンの発狂モードをよく知っている。
ところ構わず魔導を放つサニーレイヴンからミリィを盾で守りつつ、クロードは下がった。
「クァアアアア!!」
「おおっ! よっ、すごい……攻撃……っと、だねぇ!」
サニーレイヴンの金切り声と共に放たれる魔導の数々を、レディアは全て躱している。
火の玉、熱風、熱線――その全てを紙一重で躱し、焼けた空気の渦を潜り抜けてフラッドアクスを振りかぶる。
「とおりゃああああっ!」
がずん、と振り下ろされた一撃はサニーレイヴンの炎の翼を両断し、火の粉が宙に舞った。
バランスを崩してよろめく巨体。
返す一撃で、レディアは敵の胴体も切り裂いた。
サニーレイヴン発狂モードは緋属性レベル2。蒼系統が三重に乗ったフラッドアクスの効果は抜群のようだ。
というか、予想を遥かに超える威力だぞ。
レディアの連撃で、なすすべなくその身体を刻まれるサニーレイヴン。
苦し紛れに放った一撃もレディアに躱され、遥か彼方で大爆発を起こしただけだった。
このまま一人で倒してしまいそうな勢いである。
「凄まじいな」
「で、ですね……」
ワシも、クロードのもとに駆け寄り、レディアの様子を見守っている。
スクリーンポイントをかけているクロードの傍が一番安全だ。
時折サニーレイヴンの魔力値をスカウトスコープで見ているが、どうもレディアの攻撃は、一撃一撃がワシのブルーゲイル並みの威力らしい。
これならばすぐにでも終わってしまうだろう。
もはやサニーレイヴンは死に体。ここにいるワシらを攻撃する余裕もなさそうだ。
レディアに反撃をすることさえ……いや、これは違う!
「レディア! 離れろっ!」
「へ?」
レディアの呆けた声と同時に、サニーレイヴンの身体が大きく膨らんでいく。
ちっ……タイムスクエアっ!
咄嗟にタイムスクエアを念じ、時間を止める。
サニーレイヴンは追い詰められると高密度の魔力で構成された自らの身体を解放し、周囲を全て巻き込む大爆発を引き起こすと聞いたことがある。
かなり珍しい行動らしく、ワシも今まで見たことはなかったが……まさかここで使ってくるとはな。
とにかく考えている時間はない。すぐに倒さねば。
横には魔導を撃つ構えをとっているミリィがいる。
あの一瞬でちゃんと反応し、最善の策を打とうとしているようだ。
ここでミリィが撃つ魔導はわかっている。
ならば一か八か……ワシはミリィの放つその魔導を二回念じる。
時間停止が解除され、同時に解き放たれたのは、ブルーゲイルだ。
――瞬間、膨らみかけたサニーレイヴンを超特大の水竜巻が呑みこみ、レディアは間一髪でそれを回避する。
本来の何倍もある水竜巻が天高く舞い上がり、上空の雲も全て消し飛ばして、爆音を響かせた。
「……ブルーゲイルトリプル」
サニーレイヴンは消滅し、散りゆく火の粉が、ワシの頬に当たって弾けた。
ほっとしていると、レディアがタックルをぶちかましてきた。
「ゼフっちー!」
思い切り抱きつかれ、そのまま押し倒されてしまった。
レディアの胸が顔にぐいぐいと押し付けられる。
息ができない。く……苦しい。
ジタバタと暴れていると、レディアは上体を起こし、馬乗りになった。
そして指で目元を拭う。レディアの目から、きらりと光るものが落ちた。
「……また助けられちゃったね。いっつもおいしいとこ持ってくんだから、も~」
「ていうか、私の魔導も混ぜたのにまるで自分の手柄みたいに……」
納得いかないといった顔のミリィが寄ってくると、レディアはミリィのことも抱き寄せた。
「ミリィちゃんにもとーぜん感謝してるよ! ありがとねっ!」
「ちょ……はなしてよレディアっ! 苦し……うぎゅぅ」
今度はミリィがレディアの胸に埋められた。ワシはその隙に逃げ出す。
ふう、それにしてもなんとか勝てたか。
ミリィとの連携合成魔導、ブルーゲイルトリプル……相当な威力だったな。
とはいえ、今のはタイミングが良かっただけだ。練習しておかなければならないだろう。
いざという時に発動できなければ、意味がないからな。
それにしても先刻の時間停止中、ブルーゲイルを二回も念じることができた。
ブルーゲイルは大魔導としては念唱時間が短いが、中等魔導に比べれば長い。
タイムスクエアのレベルが上がってきたことで、止めておける時間も延びているのだろう。
といっても、初等魔導であっても流石に三回念じるのはまだ無理だが。
宿に戻ると、ミリィとクロードが朝食をとっている最中であった。
「おかえりなさい、ゼフ君」
「んぐんぐ……早く食べないとなくなっちゃうわよ」
見るからにボリューミーな朝食をもぐもぐ食べている。育ち盛りだからだろうか。
確かに、ミリィはもっと成長したほうがいい。胸とか、色々な。
「もちろんそのつもりだが……飯が終わったら、今日はサンレイ山脈に行かないか? 目的はボスなのだが」
そう言うと、二人は手を止めてワシに目を向ける。文句がありそうな顔だ。
「それはいいけど……それならもっと早く言ってよ」
「あそこは遠いですからね。今から行くと昼になりそうですが」
まったくもってその通りである。だが、文句はセルベリエに言ってくれ。
「そもそも、ボスがいるって保証はあるの?」
「知り合いに教えてもらったのだ」
そう言うと、二人の耳がピクリと動く。
「女の子……ですか?」
クロードが聞いてくる。ミリィも同じことを思っているようだ。
「そうだが……」
何故わかったのだろう。
ワシが答えると、はぁ、とため息をつく二人。
「……ま、いっか、私は行ってもいいよ」
「ボクも構いません」
「そうか、レディアには既に言ってある。弁当を作って待っているらしいから、すぐに向かうとしよう」
忙しない移動の後、ワシらはサンレイ山脈の山頂付近に辿り着いた。
前にサニーレイヴンと戦った場所を見渡せる岩場に腰を下ろして、レディアの作ったサンドイッチを食べている。
前回戦ったあたりの地面には、セルベリエが魔導で焼いた跡がある。おそらくあの付近にサニーレイヴンが復活するのであろう。
レディアの作ったサンドイッチを頬張ると、肉汁が溢れ出てきた。
パンの間に挟んであるのは、こぼさずに食べるのが難しいほどの、たっぷりの野菜と鶏肉。
「栄養満点のサンドイッチだからね~」
「すごく美味いぞ、レディア」
「んむ……大きふぎて、口に入れるのが難ひいですね……」
「ほほふはひはいほはららいれほ」
「あっはは、ミリィちゃん、口に物が入ってる時に喋っちゃ駄目だよ~」
なんだかんだで皆すぐ、サンドイッチを平らげてしまった。
そういえば、昼の今ならアインを長時間呼び出しておけるかもしれない。
試しに呼んでみるとするか。
サモンサーバントを念じると、光の中からアインがあらわれる。
「くろーどーっ」
「わわっ!?」
呼び出すなり、アインはクロードの胸に飛び込んでその身を埋めた。
アインがもぞもぞと動くたび、クロードの顔は羞恥に染まる。
「あ、アインちゃんてば……」
「くっくっ、懐かれたようだな」
「クロードいいなぁ~」
「ねぇねぇアインちゃん、これ食べる?」
アインのために作ってきたのだろうか。
レディアは小さなサンドイッチを差し出すが、アインはぷいと横を向く。
「いらない!」
「悪いなレディア。アインはこれしか食べないんだ」
「むぅ……そのジェムストーンをサンドイッチに挟めば……」
ぶつぶつと一人ごちるレディア。アインに拒否されたショックは意外と大きいらしい。
む、そういえばそろそろサニーレイヴンの復活時間か。戦闘待機しておいたほうがいいだろう。
「そろそろサニーレイヴンが復活するかもしれない。ワシとレディア、クロードとミリィがペアで、危なくなったら即テレポートで離脱。作戦は来る途中に話した通りだ」
「おっけー♪」
「わかりました。よろしくお願いします、ミリィさん。さあ、アインちゃんはゼフ君のところへ」
クロードが胸に収まっているアインを捕まえようとするが、アインは羽を器用に動かしてその指を逃れる。
「こ、こらアインちゃん!」
「おいアイン! お前はこっちだ!」
「あたし、くろーどのところがいい!」
「アインちゃん、めっ! ゼフ君の所に戻らないとダメじゃないですか!」
「やだもーん!」
アインはそのままクロードの胸甲に潜り込んで出てこない。
うーむ……完全にクロードに懐いているな。
まぁ、クロードに預けているうちに、何かわかることがあるかもしれない。
「……まぁいい。時間もないしな。アインを頼んだぞ、クロード」
「わかりました。……大人しくしててね、アインちゃん」
「は~いっ」
上機嫌で胸甲から顔を出すアイン。
よく考えたら、魔導を無力化するスクリーンポイントを持つクロードの傍が一番安全か。
ともあれ戦闘準備だ。
皆に強化魔導をかけると、ワシの魔力は半分になった。
「ミリィたちが先行してくれ。こちらは、ワシの魔力が回復してから追いかける」
「わかった! 行こう、クロードっ!」
「了解です。ミリィさん」
テレポートで草むらに降りるミリィとクロード。油断は全く見られない。
いい雰囲気だ。二人とも成長したものだな。
見送るワシに、レディアが神妙な面持ちで話しかけてくる。
「ゼフっち」
「どうした?」
「いつもペアの時はクロちゃんかミリィちゃんを選んでるよね」
「……そうだったかな」
気にしたことはなかったが、言われてみればそうだったかもしれない。
「見た感じだと、その時々で危なっかしいほうを選んでる感じだったんだけど……今日は私なんだ」
「そんなことは……」
言いかけてレディアの方を向くと、悲しそうにじっとワシを見ていた。
普段は見せない表情だ。
もしかして、自分だけグロウスのレベルが低かったことを気にしているのだろうか。
「……馬鹿者、ワシがそんなくだらんことを考えていると思ってたのか? 効率よく戦えるように組む相手を選んでいただけだ」
「だから私のフォローをするために……」
「効率よく敵を屠るためだ。今回はワシとレディアが組むのが一番効率がいい。それだけの話だ……そんなことより、例の武器は持ってきたのか?」
「朝、持ってこいって言ってたヤツ? あるけど……」
そう言ってレディアが袋から取り出したのは、青い宝石を埋め込んだ斧。普段使っている大斧よりさらに大きく、武骨な代物である。
ワシのオーダー通りだ。
「こんな感じでいいのかなぁ……?」
「あぁ、最高の出来栄えだ。これならいけるぞ」
まだ不安そうなレディアの尻をぽんと叩くと、レディアはぴくんと身体を揺らす。
先刻よりはだいぶリラックスしたようである。
「もう、ゼフっちったらどこ触ってんのよ~」
「……丁度いい位置にあっただけで、深い意味はないぞ」
「はいはい、まったく、えっちなんだから」
緊張をほぐそうとしただけなのだが……まぁ目的は果たしたから良しとするか。
「見て! ゼフっち」
レディアが指差す先を見ると、クロードのすぐ傍でサニーレイヴンが炎の中から復活するのが見える。
クロードもそれに気づいたようで、ミリィを後ろに下がらせた。
「ワシらも行こう」
「そうねっ」
元気よく返事するレディアは、いつもの顔に戻っていた。
やれやれ、大人びていても意外と年相応なのだな。ため息をつき、ワシはレディアの手を取ってテレポートを念じる。
ワシらが草むらに降り立ったのと、クロードがサニーレイヴンに斬りかかっていくのはほぼ同時であった。
「だああっ!」
掛け声とともにサニーレイヴンの翼を切りつけると、赤い翼から羽根が舞う。
繰り出される連撃。
まとわりつくクロードを振り払おうと、サニーレイヴンは翼を回転させ打ちつけてくるが、クロードはそれを後ろに飛んで躱す。
離れた獲物を追撃するように放たれたレッドバレットの魔導も、クロードが事前に展開していたスクリーンポイントで全て無効化。
サニーレイヴンは魔導以外の攻撃は大したことはない。
魔導を無効化する魔導、スクリーンポイントを持つクロードにとっては相性の良い相手だ。
クロードは以前戦った時の経験もあるからか、安定した戦いぶりである。
「ブルーゲイルっ!」
ミリィもクロードの後ろに回り込みながら魔導を放つ。
ミリィは徹底してブルーゲイルしか使わない。
サニーレイヴンに蒼系統魔導を使うのは発狂モードになってからにしろと言っただろ、まったく。
「ねーゼフっち、火の鳥になったら蒼属性が効くようになるんだっけ?」
レディアがクロードたちの戦いを見ながら問いかけてくる。
「うむ、サニーレイヴンは発狂モードになると蒼属性が弱点になるのだ」
「そうなったら、私の出番ってことね」
「あぁ、合図はミリィが送ることになっている」
ミリィはスカウトスコープでサニーレイヴンの魔力値を測りながら戦っている。
発狂モード寸前になったら、以前ワシがやったように、ミリィがブルーウォールでボスの動きを封じる。それが合図だ。
動いている魔物をブルーウォールで固定するのは難しいが、ミリィには以前から何度か雑魚相手に練習させているし、クロードがサニーレイヴンの動きを止めているから何とかなるだろう。
さて、そろそろワシも攻撃に参加するか。
「サニーレイヴンは遠くからの攻撃にも魔導で反撃してくる。しっかりと守ってくれよ」
「おっけー♪ 任せときなさい!」
どんと胸を張るレディアの後ろからサニーレイヴンを狙い、タイムスクエアを念じる。
時間停止中に念じるのは、ブラックスフィアとグリーンスフィア。
――二重合成魔導、グラビティスフィア。
サニーレイヴンに向けて魔導を解き放つと、燃えているように赤いその身体の中心に黒い魔力球が生まれ、ゴリゴリと奴の身体を削っていく。
攻撃を受けながらもサニーレイヴンはワシの方を睨み、赤い熱線を放射してきた。
――緋系統魔導レッドブラスター、か。
「レディア!」
「はいはい……っとぉ!」
レディアは先刻取り出した大斧で熱線を受け止めた。
熱線を受けた大斧はバチバチと火花を散らしながらも、その形状を保っている。
通常の武器であれば、ここまで強力な熱線を受けると破損してしまうだろう。
だがレディアに作らせたこの大斧は、武器に蒼属性を付与する海神の涙の結晶を埋め込んでおり、緋属性の魔導を弾くのだ。
熱線が途切れ、レディアが大斧を地面に下ろす。大斧の刃は熱を帯びて少し赤くなっていた。
「お~すごいねこれ。ほんとに魔導を弾いちゃった」
「疑似的にではあるが、魔力線を張り巡らせているからな。かなり大型になってしまったが、緋属性の攻撃はほとんど弾くことができるだろう。フラッドアクスとでも名付けておくか」
「……なんで私が作ったのにゼフっちが名前つけてんの?」
「わ、ワシだって手伝ったではないか」
ジト目でワシを見るレディア。意外と細かい性格である。
「君の相手はこっちですよっ!」
「クルルゥ!?」
クロードが斬撃を加え、サニーレイヴンはまたクロードの方に首を向ける。
いくらフラッドアクスといえども、連続で魔導を受ければ壊れてしまうだろうからな。
クロードには頑張ってもらわなければならない。
《ミリィ、奴の魔力値が70000を切る前にブルーウォールだぞ!》
《はいはい、わかってるわよ!》
ミリィに念を押しておく。
ワシの方もレディアを支援する魔力を残して戦う必要があるからな。瞑想しながら最低限の魔力は維持している。
ワシがグラビティスフィアを放つとサニーレイヴンがレッドブラスターで反撃し、それをレディアがフラッドアクスで叩き落とす。
何度か繰り返していると、レディアがフラッドアクスを地面に突き刺した。
「あっちち、柄にもっと布巻いたほうがいいなぁ……」
どうやら熱を持ってしまったようである。グローブを装着しているがそれでも熱いようで、自分の手にふーふーと息を吹きかけていた。
急拵えの武器は、さすがに粗が多いか。
クロードの方はまだ問題なく戦えているようだ。ミリィの支援も上手くいっている。
クロードの後ろから放たれたブルーゲイルがサニーレイヴンを削り、相手の反撃はクロードがスクリーンポイントで防ぐ。安定した戦いぶりだ。
昔は二人の連携も拙く、見るに堪えなかったが、ずいぶん成長したものだな。
サニーレイヴンはボスの中では中の下といったところで、奴の魔導を何とかできるなら誰でも倒すことはできる。とはいえ二人、しかも低レベルで戦えるのは大したものだ。
レディアは暇でしょうがないのか、屈伸を繰り返している。
そのたびに揺れる胸。……気が散るではないか。
それにしてもクロードの奴、相当タフだな。
流石に防御で手一杯になっているが、殆どダメージを受けてない。
感心しながら見ていると、サニーレイヴンの周りに氷の壁が発現した。連続して生まれる氷の壁に、サニーレイヴンの身体が閉じ込められていく。
――ミリィの合図だ。どうやら発狂モード寸前らしい。
念のためスカウトスコープで確認すると、魔力値は70000を切っている。
「さあいくぞ、レディア」
「おっ、やっと私の出番?」
すっかり退屈していたレディアは身体を起こし、フラッドアクスをぶぅんと振って肩に担いだ。
よし、強化魔導をかけ直しておくか。
ワシはタイムスクエアを念じ、攻撃強化のレッドグローブを二回、さらに速度強化のブラックブーツを二回念じる。
――二重合成魔導、レッドグローブダブル。そして、ブラックブーツダブル。
炎と風、その魔力の光が渦となり、レディアを包んだ。
「おおっ、すごい! 力が溢れてくるよ!」
「まだだぞ」
ぴょんぴょんと飛び跳ねて強化の感触を確かめ、今にも飛び出していきそうなレディアに、ワシは待ったをかけた。
もう一度タイムスクエアを念じ、時間停止中にブルーウエポンを二回念じる。
――二重合成魔導、ブルーウエポンダブル。
タイムスクエアで同じ魔導を二回念じると、普通に二回撃つよりも効果が上がる。
それは武器に属性を付与するウエポンも同じで、敵の弱点を突けばその攻撃力はさらに上がるのだ。
しかもフラッドアクスは最初から蒼属性が付与された武器である。
つまり蒼属性魔導を三回重ね掛けしたことになるのではないか。
試すのは今回が初めてだが、その可能性は高い。
ブルーウエポンダブルにより蒼属性が三重付与されたフラッドアクスを持ち、身体強化もついたレディアが地面を蹴る。
一陣の風の如く大地を走り抜けるレディア。
ミリィの横を抜け、クロードを飛び越え、サニーレイヴンの脳天に思い切り一撃を食らわす。
サニーレイヴンの身体は、ぴしぴしと音を立てて割れていく。中から炎の塊があらわれた。
――発狂モード。
燃え盛る炎を連想させるサニーレイヴンの瞳が、ぎらりと光る。そしてレディアに狙いを定めた。
「危ない! レディアっ!」
ミリィが叫ぶ。
「下がってくださいミリィさん!」
クロードはワシと一緒に戦ったことがあるので、サニーレイヴンの発狂モードをよく知っている。
ところ構わず魔導を放つサニーレイヴンからミリィを盾で守りつつ、クロードは下がった。
「クァアアアア!!」
「おおっ! よっ、すごい……攻撃……っと、だねぇ!」
サニーレイヴンの金切り声と共に放たれる魔導の数々を、レディアは全て躱している。
火の玉、熱風、熱線――その全てを紙一重で躱し、焼けた空気の渦を潜り抜けてフラッドアクスを振りかぶる。
「とおりゃああああっ!」
がずん、と振り下ろされた一撃はサニーレイヴンの炎の翼を両断し、火の粉が宙に舞った。
バランスを崩してよろめく巨体。
返す一撃で、レディアは敵の胴体も切り裂いた。
サニーレイヴン発狂モードは緋属性レベル2。蒼系統が三重に乗ったフラッドアクスの効果は抜群のようだ。
というか、予想を遥かに超える威力だぞ。
レディアの連撃で、なすすべなくその身体を刻まれるサニーレイヴン。
苦し紛れに放った一撃もレディアに躱され、遥か彼方で大爆発を起こしただけだった。
このまま一人で倒してしまいそうな勢いである。
「凄まじいな」
「で、ですね……」
ワシも、クロードのもとに駆け寄り、レディアの様子を見守っている。
スクリーンポイントをかけているクロードの傍が一番安全だ。
時折サニーレイヴンの魔力値をスカウトスコープで見ているが、どうもレディアの攻撃は、一撃一撃がワシのブルーゲイル並みの威力らしい。
これならばすぐにでも終わってしまうだろう。
もはやサニーレイヴンは死に体。ここにいるワシらを攻撃する余裕もなさそうだ。
レディアに反撃をすることさえ……いや、これは違う!
「レディア! 離れろっ!」
「へ?」
レディアの呆けた声と同時に、サニーレイヴンの身体が大きく膨らんでいく。
ちっ……タイムスクエアっ!
咄嗟にタイムスクエアを念じ、時間を止める。
サニーレイヴンは追い詰められると高密度の魔力で構成された自らの身体を解放し、周囲を全て巻き込む大爆発を引き起こすと聞いたことがある。
かなり珍しい行動らしく、ワシも今まで見たことはなかったが……まさかここで使ってくるとはな。
とにかく考えている時間はない。すぐに倒さねば。
横には魔導を撃つ構えをとっているミリィがいる。
あの一瞬でちゃんと反応し、最善の策を打とうとしているようだ。
ここでミリィが撃つ魔導はわかっている。
ならば一か八か……ワシはミリィの放つその魔導を二回念じる。
時間停止が解除され、同時に解き放たれたのは、ブルーゲイルだ。
――瞬間、膨らみかけたサニーレイヴンを超特大の水竜巻が呑みこみ、レディアは間一髪でそれを回避する。
本来の何倍もある水竜巻が天高く舞い上がり、上空の雲も全て消し飛ばして、爆音を響かせた。
「……ブルーゲイルトリプル」
サニーレイヴンは消滅し、散りゆく火の粉が、ワシの頬に当たって弾けた。
ほっとしていると、レディアがタックルをぶちかましてきた。
「ゼフっちー!」
思い切り抱きつかれ、そのまま押し倒されてしまった。
レディアの胸が顔にぐいぐいと押し付けられる。
息ができない。く……苦しい。
ジタバタと暴れていると、レディアは上体を起こし、馬乗りになった。
そして指で目元を拭う。レディアの目から、きらりと光るものが落ちた。
「……また助けられちゃったね。いっつもおいしいとこ持ってくんだから、も~」
「ていうか、私の魔導も混ぜたのにまるで自分の手柄みたいに……」
納得いかないといった顔のミリィが寄ってくると、レディアはミリィのことも抱き寄せた。
「ミリィちゃんにもとーぜん感謝してるよ! ありがとねっ!」
「ちょ……はなしてよレディアっ! 苦し……うぎゅぅ」
今度はミリィがレディアの胸に埋められた。ワシはその隙に逃げ出す。
ふう、それにしてもなんとか勝てたか。
ミリィとの連携合成魔導、ブルーゲイルトリプル……相当な威力だったな。
とはいえ、今のはタイミングが良かっただけだ。練習しておかなければならないだろう。
いざという時に発動できなければ、意味がないからな。
それにしても先刻の時間停止中、ブルーゲイルを二回も念じることができた。
ブルーゲイルは大魔導としては念唱時間が短いが、中等魔導に比べれば長い。
タイムスクエアのレベルが上がってきたことで、止めておける時間も延びているのだろう。
といっても、初等魔導であっても流石に三回念じるのはまだ無理だが。
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