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49話 デウス・エクス・マキナ 三文芝居の結末
舞台上のステンドグラスがいっせいに砕け散る音がする。
何が起きたのか理解しているのは僕とフォニアさんだけだろう。
砕け散ったガラスの破片が雨のように僕らの周囲に降り注ぐ。
「ぐぁあああああ!」
「ぎゃっ!」
僕らは、机の下に避難しているから一応は安全だが、僕らを取り囲んでいた兵士や、正面に座っていた人類同盟の高官達など溜まったものでは無いだろう。
ガラスの雨が降り止んだタイミングで僕らは机の下から出た。
底に広がっていたのは、さながら野戦病院のような有様だった。
取り囲んでいた兵士達は諸にガラスの雨を受けたせいできらびやかだった制服はぼろぼろになり、頭を庇ったであろう両腕には無数のガラスが突き刺さっり、大量の血を流している。
「痛い!痛いぃ!」
「誰か医者を!医者を呼べぇ!死ぬ!私が死んでしまうぅ!」
案の定人類同盟の高官達も、雨を食らって血を流し、喚いている。
とはいえ何名かは机の下に逃げ込むことに成功したのか軽症な高官も居た。
天井を見上げれば豪華なシャンデリアがギシギシと音をたてながら大きく揺れていた。落ちてこないか心配だな。
「何だ一体何が起きたんだ!」
ドサリという音と元気の良い声がしたのでそちらのほうを向くと、少しだけガラスで切られた服を着たデヴェロア総長が四つんばいになっているが見えた。
あの雨の中をデヴェロア総長は、大した傷もなく無事だったようだ。理由はデヴェロア総長の隣に苦悶の表情で倒れている兵士だろう。彼の背中には大量のガラスが突き刺さっている事から、彼が身を挺してデヴェロア総長を守ったのだろう。忠誠心か、もしくはデヴェロア総長が傷つけられた時の責任追及が怖かったのか。
個人的には、後者だと思う。
兵士達のあまりの痛痛しさに思わず同情しそうになるが、この兵士達は僕らを捕まえようとしていたのだ。仕方がないと思おう。
ふと一緒に机の下から出てきたフォニアさんは大丈夫かと思って声を掛けた。
戦場で何度か見た僕でも結構きついのに…。
「フォニア陛下、大丈夫ですか?あまり見ないほうが…」
「いえ、見ます。見なければなりません」
しかし、フォニアさんは凄惨な光景を目の前にしても平然と、それどころか眉一つ動かさず冷徹に現場を見下ろしていた。
会場では、他国の大使達が全員怯えたように周囲を見回したり、机にしがみついている姿が見えた。
「何だ!今のは!地面が…揺れたのか?」
「こんな話聞いてないぞ!」
「神よ!」
いきなり巨大な地震が起きたらこうなるか…。それにしても、この大陸の人達は地震に慣れているような気がする。うろたえ方が半端じゃない。中には放心している人も居るようだ。
「貴様ら一体何をした!」
もう地面が揺れない四つんばいになっていたデヴェロア総長は、舞台の上で唯一無傷の僕らに向かって叫んだ。
「何って救助が来たんですよ。ほら」
そう言って僕は美しかったステンドグラスはすべてなくなり曇天の空が見えるようになった舞台の奥を指差した。
「!?」
舞台の奥にある窓枠の先に巨大な黒い影が、うずくまっていた。
ボシュー!という排気音と共に白い蒸気が影の下から噴出する。
駆動音を響かせて其れはゆっくりと動き始める。
黒い影のせがどんどん高くなって行く。立ち上がっているのだ。最終的には劇場の最上部に達する。
その黒い影とは、もちろんザムだ。
完全に立ち上がったディムとその特徴的な一つ目を光る。その目はちょうど劇場の最上部にあったステンドグラスの窓枠から見えた。
「ご存知のとおり、僕が召還したザムです」
立ち上がっただけでザムは、混乱していた場を静めた。誰も彼もが動かず、ザムに視線が釘付けだ。いや、正確には静めたわけでは無いだろう彼らの頭の中はいまだに混乱しているだろう。だが、突然現れた巨大な存在に固まってしまっている。
ザムは、左手をステンドグラスが割れて落ちた窓枠へと差込んだ。
だが、ステンドグラスの窓枠はザムの手を入れるには、小さい。それでもザムは無理やり壁を割り広げながら手を入れる。
劇場の壁にひびが入り崩れ始めた。
そこでザムが何をしようとしているか気づいた人類同盟の高官達が、血まみれながらも騒ぎ出した。
「うわぁ!」
「やめろ!この劇場にどれだけの価値があると思ってるんだ!やめてくれ!」
声を上げたのは人類同盟の高官達だった。何を言っているんだ。止める訳ないのに。
そんな事は意にも解さず、ザムは壁を引くように破壊する。引くように破壊したのは、少しでも破壊した壁の瓦礫が劇場内へと落ちていくのを防ぐ為だ。
壁は、殆ど無抵抗でガラガラと崩れていく。
「うわぁああああああああああ!」
無常にも破壊される劇場の壁を見て発狂する同盟高官達。
壁に穴が開くとそこからザムの上半身が見え、75mmマシンガンを劇場内へと向ける。
『全員動くな!現在この会議室(?)は私が占拠した!死にたくなければ全員動くな!』
動くなも何も、劇場内に居た誰しもが、壁を破壊して進入してきた巨大人型兵器に戦々恐々としていて動くことが出来ない。
ザムのモノアイが左右に動き、劇場内に居る人々を睥睨する。
モノアイに睨まれたと思った大使や高官達から「ひぃ!」とか「うっ!」とか声が上がった。圧倒的存在感を放つ鉄巨人に睨まれたら、そうなっても不思議じゃない。
ああ、そういえばデウス・エクス・マキナって言葉があったな。物語りだとスーパーロボットだったり、すさまじいチート機能を持ったハチャメチャ機械だったりするけど、本来の意味は、舞台の演出技法で、神様が舞台の最後あたりに登場し、問答無用の力技で無理やり物語を終わらせる事を言う。昔の舞台ではクレーンの様な機械仕掛けで神様を演じる役者が登場していたのでデウス・エクス・マキナといわれている。
今までの物語の過程はなんだったんだ!と言いたくなる様な、夢落ちに比肩する演出技法だ。
今僕らも、人類同盟の説得に失敗し、強硬手段に出てきた人類同盟をザムの力で問答無用で意思を通す。三文芝居にふさわしい最後だとも言える。
そして僕らを見つけるとモノアイの動きが止まった。
『陛下。アマタ様お迎えに上がりました』
僕らの救出に来たのはセリアさんだったようだ。
僕だっていきなり壁を破壊して巨大兵器が出てきたら、大興奮の前にビビる自信がある。もちろんその後改めて巨大ロボの登場に大興奮するけどね。
「ご苦労。もうここには用はありません。帰りましょう。護衛達の方にも迎えを」
フォニアさんは、劇場内に居る人々に対して一瞥もせずに先ほどまで議長が座っていた高台の議長席へと向かう。
もはやここには何の用もなくなったという事。僕はその後について行く。
『現在同時進行で近くの演習場を他の二機が制圧しています。ご安心ください。護衛の者達も最後の一機が…』
その時、ズゥン!と人類同盟の城が揺れた。
『訂正します。救助が完了しました』
はっと我を取り戻したデヴェロア総長が叫ぶ。
「取り押さえるのだ!絶対に逃がすな!安心しろ!あの銃は撃てん!あの様な巨大な銃を撃てば、小娘までも巻き込んでただでは済まん!ここで逃げられればお終いだぞ!」
「うぉぉぉぉ!」
その声に答えたのは人類同盟軍の高官だった。彼は運よく最初の衝撃で発生したガラスの雨で軽症しか負っていなかった。そして高官であっても軍人として訓練してきたのか、筋肉質な体をしている。インドア派だった僕では生身では抵抗するのも難しそうだ
その高官が机を乗り越え、バリバリとガラスや瓦礫を踏み潰しながら僕らを取り押さえ様と突っ込んでくる。
『あら、人間相手にこの銃を使う必要があるとでも?』
ザムは何も持っていない左手の指を伸ばし、貫き手を作るとそのままこちらに向かって来ている高官の前の床へと突き出された。
「ぎゃっ!」
抜き手は舞台の床を軽々と突き破り、床の破片を撒き散らす。高官は突然現れた金属の手に、床の破片を諸に浴びながら衝突した。人の身で巨大な金属の塊に全力でぶつかったのだ。衝撃はかなりの物だったらしく、ばたりと瓦礫が散乱した床に倒れピクリとも動かなくなった。
あっさりと無力化された同盟軍の高官にデヴェロア総長が憤るま間なく、今度は外からヴァッヴァッヴアアァッ!という発砲音が響く。
今の音は聞きなれた75mmマシンガンの発砲音だな。
僕にはすぐに分かったが、75mmマシンガンの発砲音を知らない劇場の人達は、今度は何事かと動揺している。
「何の音だ!?」
『ああ、あの音?人類同盟軍の演習場に駐機してあったカニンガムを掃除した音よ』
75mmというこの世界の射撃兵器では破格の大口径のマシンガンだ。たとえ最新鋭のフォルスだろうとひとたまりもないだろう。
「あっああ!」
『陛下、近くの演習場の制圧を完了しました。こちらに損害はありません』
「馬鹿な!ラガツ居る同盟軍は精鋭中の精鋭!それがそう易々と!しかも厳戒令を出していたのだぞ!」
デヴェロア総長がワナワナと震えながら言う。
「よくやりました。では帰りましょう。仕事が待っています」
そんなデヴェロア総長を無視してフォニアさんは進む。
『はっ!では、こちらに』
ザムが片膝を付き、舞台の上で一番高い場所になっている議長席の背後へと手のひらを差し出す。
「うぐぐ。このような事をしてただ済むと思っているのか!お前はスベン公国は全世界を敵に回したのだぞ!いいのですかアマタ様!」
「僕らは、世界と敵対するつもりはありません」
僕は振り向かずに答える。
「何を言いますか!我々人類同盟に対する蛮行これが世界に対する敵対といわず何と言うのか!」
「人類同盟を世界とはずいぶん傲慢ですね」
それだけ言うと、フォニアさんは半ば破壊された議長席から、差し出されたザムの手に乗る。僕もそれに続く。
「それでは皆様ごきげんよう」
フォニアさんが最後に劇場に居る人々に綺麗なカーテシーを決めるとザムはゆっくりと立ち上がると大穴を背に確保した演習場へと歩き出した。
背後では、デヴェロア総長をはじめ人類同盟の高官達が何かをわめいていたようだが、僕らにとって、それはすでにどうでもいい事だった。
何が起きたのか理解しているのは僕とフォニアさんだけだろう。
砕け散ったガラスの破片が雨のように僕らの周囲に降り注ぐ。
「ぐぁあああああ!」
「ぎゃっ!」
僕らは、机の下に避難しているから一応は安全だが、僕らを取り囲んでいた兵士や、正面に座っていた人類同盟の高官達など溜まったものでは無いだろう。
ガラスの雨が降り止んだタイミングで僕らは机の下から出た。
底に広がっていたのは、さながら野戦病院のような有様だった。
取り囲んでいた兵士達は諸にガラスの雨を受けたせいできらびやかだった制服はぼろぼろになり、頭を庇ったであろう両腕には無数のガラスが突き刺さっり、大量の血を流している。
「痛い!痛いぃ!」
「誰か医者を!医者を呼べぇ!死ぬ!私が死んでしまうぅ!」
案の定人類同盟の高官達も、雨を食らって血を流し、喚いている。
とはいえ何名かは机の下に逃げ込むことに成功したのか軽症な高官も居た。
天井を見上げれば豪華なシャンデリアがギシギシと音をたてながら大きく揺れていた。落ちてこないか心配だな。
「何だ一体何が起きたんだ!」
ドサリという音と元気の良い声がしたのでそちらのほうを向くと、少しだけガラスで切られた服を着たデヴェロア総長が四つんばいになっているが見えた。
あの雨の中をデヴェロア総長は、大した傷もなく無事だったようだ。理由はデヴェロア総長の隣に苦悶の表情で倒れている兵士だろう。彼の背中には大量のガラスが突き刺さっている事から、彼が身を挺してデヴェロア総長を守ったのだろう。忠誠心か、もしくはデヴェロア総長が傷つけられた時の責任追及が怖かったのか。
個人的には、後者だと思う。
兵士達のあまりの痛痛しさに思わず同情しそうになるが、この兵士達は僕らを捕まえようとしていたのだ。仕方がないと思おう。
ふと一緒に机の下から出てきたフォニアさんは大丈夫かと思って声を掛けた。
戦場で何度か見た僕でも結構きついのに…。
「フォニア陛下、大丈夫ですか?あまり見ないほうが…」
「いえ、見ます。見なければなりません」
しかし、フォニアさんは凄惨な光景を目の前にしても平然と、それどころか眉一つ動かさず冷徹に現場を見下ろしていた。
会場では、他国の大使達が全員怯えたように周囲を見回したり、机にしがみついている姿が見えた。
「何だ!今のは!地面が…揺れたのか?」
「こんな話聞いてないぞ!」
「神よ!」
いきなり巨大な地震が起きたらこうなるか…。それにしても、この大陸の人達は地震に慣れているような気がする。うろたえ方が半端じゃない。中には放心している人も居るようだ。
「貴様ら一体何をした!」
もう地面が揺れない四つんばいになっていたデヴェロア総長は、舞台の上で唯一無傷の僕らに向かって叫んだ。
「何って救助が来たんですよ。ほら」
そう言って僕は美しかったステンドグラスはすべてなくなり曇天の空が見えるようになった舞台の奥を指差した。
「!?」
舞台の奥にある窓枠の先に巨大な黒い影が、うずくまっていた。
ボシュー!という排気音と共に白い蒸気が影の下から噴出する。
駆動音を響かせて其れはゆっくりと動き始める。
黒い影のせがどんどん高くなって行く。立ち上がっているのだ。最終的には劇場の最上部に達する。
その黒い影とは、もちろんザムだ。
完全に立ち上がったディムとその特徴的な一つ目を光る。その目はちょうど劇場の最上部にあったステンドグラスの窓枠から見えた。
「ご存知のとおり、僕が召還したザムです」
立ち上がっただけでザムは、混乱していた場を静めた。誰も彼もが動かず、ザムに視線が釘付けだ。いや、正確には静めたわけでは無いだろう彼らの頭の中はいまだに混乱しているだろう。だが、突然現れた巨大な存在に固まってしまっている。
ザムは、左手をステンドグラスが割れて落ちた窓枠へと差込んだ。
だが、ステンドグラスの窓枠はザムの手を入れるには、小さい。それでもザムは無理やり壁を割り広げながら手を入れる。
劇場の壁にひびが入り崩れ始めた。
そこでザムが何をしようとしているか気づいた人類同盟の高官達が、血まみれながらも騒ぎ出した。
「うわぁ!」
「やめろ!この劇場にどれだけの価値があると思ってるんだ!やめてくれ!」
声を上げたのは人類同盟の高官達だった。何を言っているんだ。止める訳ないのに。
そんな事は意にも解さず、ザムは壁を引くように破壊する。引くように破壊したのは、少しでも破壊した壁の瓦礫が劇場内へと落ちていくのを防ぐ為だ。
壁は、殆ど無抵抗でガラガラと崩れていく。
「うわぁああああああああああ!」
無常にも破壊される劇場の壁を見て発狂する同盟高官達。
壁に穴が開くとそこからザムの上半身が見え、75mmマシンガンを劇場内へと向ける。
『全員動くな!現在この会議室(?)は私が占拠した!死にたくなければ全員動くな!』
動くなも何も、劇場内に居た誰しもが、壁を破壊して進入してきた巨大人型兵器に戦々恐々としていて動くことが出来ない。
ザムのモノアイが左右に動き、劇場内に居る人々を睥睨する。
モノアイに睨まれたと思った大使や高官達から「ひぃ!」とか「うっ!」とか声が上がった。圧倒的存在感を放つ鉄巨人に睨まれたら、そうなっても不思議じゃない。
ああ、そういえばデウス・エクス・マキナって言葉があったな。物語りだとスーパーロボットだったり、すさまじいチート機能を持ったハチャメチャ機械だったりするけど、本来の意味は、舞台の演出技法で、神様が舞台の最後あたりに登場し、問答無用の力技で無理やり物語を終わらせる事を言う。昔の舞台ではクレーンの様な機械仕掛けで神様を演じる役者が登場していたのでデウス・エクス・マキナといわれている。
今までの物語の過程はなんだったんだ!と言いたくなる様な、夢落ちに比肩する演出技法だ。
今僕らも、人類同盟の説得に失敗し、強硬手段に出てきた人類同盟をザムの力で問答無用で意思を通す。三文芝居にふさわしい最後だとも言える。
そして僕らを見つけるとモノアイの動きが止まった。
『陛下。アマタ様お迎えに上がりました』
僕らの救出に来たのはセリアさんだったようだ。
僕だっていきなり壁を破壊して巨大兵器が出てきたら、大興奮の前にビビる自信がある。もちろんその後改めて巨大ロボの登場に大興奮するけどね。
「ご苦労。もうここには用はありません。帰りましょう。護衛達の方にも迎えを」
フォニアさんは、劇場内に居る人々に対して一瞥もせずに先ほどまで議長が座っていた高台の議長席へと向かう。
もはやここには何の用もなくなったという事。僕はその後について行く。
『現在同時進行で近くの演習場を他の二機が制圧しています。ご安心ください。護衛の者達も最後の一機が…』
その時、ズゥン!と人類同盟の城が揺れた。
『訂正します。救助が完了しました』
はっと我を取り戻したデヴェロア総長が叫ぶ。
「取り押さえるのだ!絶対に逃がすな!安心しろ!あの銃は撃てん!あの様な巨大な銃を撃てば、小娘までも巻き込んでただでは済まん!ここで逃げられればお終いだぞ!」
「うぉぉぉぉ!」
その声に答えたのは人類同盟軍の高官だった。彼は運よく最初の衝撃で発生したガラスの雨で軽症しか負っていなかった。そして高官であっても軍人として訓練してきたのか、筋肉質な体をしている。インドア派だった僕では生身では抵抗するのも難しそうだ
その高官が机を乗り越え、バリバリとガラスや瓦礫を踏み潰しながら僕らを取り押さえ様と突っ込んでくる。
『あら、人間相手にこの銃を使う必要があるとでも?』
ザムは何も持っていない左手の指を伸ばし、貫き手を作るとそのままこちらに向かって来ている高官の前の床へと突き出された。
「ぎゃっ!」
抜き手は舞台の床を軽々と突き破り、床の破片を撒き散らす。高官は突然現れた金属の手に、床の破片を諸に浴びながら衝突した。人の身で巨大な金属の塊に全力でぶつかったのだ。衝撃はかなりの物だったらしく、ばたりと瓦礫が散乱した床に倒れピクリとも動かなくなった。
あっさりと無力化された同盟軍の高官にデヴェロア総長が憤るま間なく、今度は外からヴァッヴァッヴアアァッ!という発砲音が響く。
今の音は聞きなれた75mmマシンガンの発砲音だな。
僕にはすぐに分かったが、75mmマシンガンの発砲音を知らない劇場の人達は、今度は何事かと動揺している。
「何の音だ!?」
『ああ、あの音?人類同盟軍の演習場に駐機してあったカニンガムを掃除した音よ』
75mmというこの世界の射撃兵器では破格の大口径のマシンガンだ。たとえ最新鋭のフォルスだろうとひとたまりもないだろう。
「あっああ!」
『陛下、近くの演習場の制圧を完了しました。こちらに損害はありません』
「馬鹿な!ラガツ居る同盟軍は精鋭中の精鋭!それがそう易々と!しかも厳戒令を出していたのだぞ!」
デヴェロア総長がワナワナと震えながら言う。
「よくやりました。では帰りましょう。仕事が待っています」
そんなデヴェロア総長を無視してフォニアさんは進む。
『はっ!では、こちらに』
ザムが片膝を付き、舞台の上で一番高い場所になっている議長席の背後へと手のひらを差し出す。
「うぐぐ。このような事をしてただ済むと思っているのか!お前はスベン公国は全世界を敵に回したのだぞ!いいのですかアマタ様!」
「僕らは、世界と敵対するつもりはありません」
僕は振り向かずに答える。
「何を言いますか!我々人類同盟に対する蛮行これが世界に対する敵対といわず何と言うのか!」
「人類同盟を世界とはずいぶん傲慢ですね」
それだけ言うと、フォニアさんは半ば破壊された議長席から、差し出されたザムの手に乗る。僕もそれに続く。
「それでは皆様ごきげんよう」
フォニアさんが最後に劇場に居る人々に綺麗なカーテシーを決めるとザムはゆっくりと立ち上がると大穴を背に確保した演習場へと歩き出した。
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