量産型英雄伝

止まり木

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31話 会議

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 バタン!と乱暴に扉を閉めるとフォニアさんが爆笑した。
「あはははははははははは!最っ高!最後のあいつらの顔見た?あの真っ赤なマヌケ面!」
 何時もは楚々としているフォニアさんががこんな笑い方をするなんて、余程人類同盟という物に腹に据えかねていたのだろう。
「陛下、その様に笑われては、外の使者の方に聞かれてします」
「いいのよ!あの連中は平時は大量に分担金を持って行った癖に、いざ有事と為れば、援軍すら寄越さないクソ共よ!一体お父様が分担金を出すのにどれだけ苦労したと思っているの!」
 リーリアさんが嗜めているが、そう言っている本人すら、冷笑を浮かべているので本当にたしなめているかは疑問だ。

 それから、約二週間後、再び人類同盟軍からの使者が来た。今度は、あの偉そうなデイビット上級騎士は来ず、走竜に乗った人類同盟軍兵士が、フォニアさんに人類同盟からの手紙を渡してそそくさと帰っていった。

 そして、スベン公国の首脳陣+僕が会議室へと集められた。
「先ほど人類同盟の引渡しの拒否した結果、とある通知が届きました。それによると、スベン公国は、人類の命運を多大なる影響を与える人物。デアフレムデを不当に独占している。これは人類救済を目的としている人類同盟の理念に反する事であり、重大な裏切り行為である。早急に引渡しを行わない場合、次回の会議にて人類同盟からの除名追放を検討せざるをえないと書かれています」
「はっ。奴らが言いそうな事ですな!」
 フォニアさんが、人類同盟からの手紙の内容を告げる。ガルロックさんの主張に他の人達も同意するように声を上げた。
「皆さんご承知の通り、私は、人類同盟からのアマタ様及び飛行機械の引渡しを拒否しました。私はその事を間違ったと思っていません」
「あのぉ断ったのは僕の意思なんで、フォニアさんが気負う事じゃ…」
 僕は手を上げて言うが、僕の意見を無視してフォニアさんは続ける。
「現在我が国の防衛体制は、兵器の生産をアマタ様に完全に依存しており、尚且つ形になっては来たものの通信指揮システムにおいてもまだまだ、改良の余地があり、アマタ様の助言が必要な状態です。今アマタ様がこの国から去られたら、この国が滅ぶのは明らかです」
 そこでフォニアさんは、間をおき、会議室に居る人達を見回し、全員の顔を確認すると宣言した。
「我らはこれからどうすべきか。それを話し合いましょう」

 するとガルロックさんが手を上げた。
「この際私は、人類同盟からの脱退を進言いたします。もはや人類同盟に組して我が国に利益はありますまい。いえ、不利益しかないでしょう」
 その一言に会場がざわついた。
 僕には実感が湧かないけど、人類同盟から抜けるという事がこの世界の人達にとってはとても大変なことである事は分かった。
「脱退してどうするのです?そうなれば食料などの援助物資が貰えなくなりますよ」
 そう言ったのは、城内を文官を取りまとめている人だ。今一番国家の状況を知っている人といえるだろう。
「ですが、アマタ殿を渡すという選択肢は私達にはありません。それで居て人類同盟に残ろうとしたら無理難題を押し付けられる事でしょう。それも国力を削る様な事をです。ならば国力を削られる前に、こちらから縁を切り、独自の道を行くのも一つの手と思われます。食料は、計画を早め、領土をアバドンの手から奪還し、そこを畑とし、栽培しましょう。幸い今は秋ですので、春までに奪還できれば、種籾や種もありますので、植え付けは可能です。兵器の補給に関しては、首都や他の都市に残されたモノを使えば何とかなるかと…」
 各都市にあるモノとは、都市を守ろうとしたフォルスの残骸の事だろうか。
「それは、賭け…ですね」
 フォニアさんは険しい顔をしている。失敗すれば、確実にスベン公国終わる。それは僕にでも分かる。
「ええ、賭けです。ですが、十分に勝ち目のある賭けです。それは陛下もご存知のはず」
 既に長い議論の末、帝国から分捕ってきた物資と、ザムと言う戦力、そして通信指揮システムを使用すれば、国土の奪還、そして維持する事は可能だと僕達は判断していた。
 判断理由には、スベン公国の立地も関係している。スベン公国は、かつての勇者によって作られたクレーターの中にある国家だ。アポリオンは、スベン公国を取り囲む円環状の山脈を越える事が出来ない又はしない事がザム・イーワックを使用しての調査で分かっている。では何処から入ってくるかと言うと、人間と同じように山脈に出来た亀裂を通ってスベン公国へと侵入してくるのだ。つまり、クレーター内部のアポリオンを殲滅し、山脈にある割れ目を塞いでしまえば、アポリオンの侵入を完全に防げるのだ。

「やりましょうフォニア陛下!そして、脱退と同時に我が国が国土を取り戻した事を発表するのです。そうすれば脱退後、おいそれと他の国が我が国を攻め落とそうなどと考えはしないでしょう」
 会議室に居た30歳程に見える人が言った。彼は、文官の一人であり、国土の奪還作戦に最後まで反対していた人だった。何処かの国の政治家の様に反対したいから反対しているのではない。計画の不備や、兵を失うリスクの観点から国家においてそれがメリットより、デメリットが上回ると判断してのことだった。けれどそのお陰で、領土奪還作戦がかなり洗練されたものになっていた。

「民を苦しめるわね」
「我らが誠心誠意説明し、納得してもらえるように致します」
 最後まで反対していた文官が答える。
「兵が死ぬわね」
「我らが身命に賭しまして最低限に止めるよう努力いたします」
 ガルロックさんが答える。
「負けは許されないわね」
「もう負けて逃げるのは飽きたわ。ここで、今までの負けを一気に取り返すのよ」
 セリアさんが笑って答えた。
「アマタ様、貴方様を危険に晒してもよろしいのですか?」
 最後にフォニアさんは僕を見た。
 真摯な瞳が僕を見つめる。こんな目を僕は向けられたことは無い。
「僕?危険な目は正直言って嫌だけど、この国は居心地が良いからね。無くなったら困っちゃうよ」
 下手な道化を演じる事しか僕には出来ない。
 この国の人達は皆必死に動いていた。大切な人を守る為に国を守ろうとしていた。そんな人達を僕は応援したくなった。もしかしたら、この世界に召喚されて冷遇されていた所で優しくされたから絆されただけかもしれない。僕が言った事も嘘じゃないけどね。僕一人が危険な目に会うわけじゃない。一緒に戦ってくれる。それなら僕でも耐えられると思うんだ。
「そう…ですか」
 フォニアさんは、一度顔を伏せた。顔を上げた時、彼女の顔には覚悟を決めていた。
「スベン公国公王フォニア・ダリル・スベンの名において命じます!首都ハイレルゲンを奪還なさい!我らが奪われた土地を尊厳を取り返すのです!そして世にスベン公国がある事を知らしめなさい!」
「「「「ハッ!御意のままに!」」」」
 彼女は立ち上がり、腕を前に伸ばして命令を下す。会議室に居た人は僕も含めて全員が、立ち上がり、全員が頭を下げそれを受命した。
 今までアポリオン相手にやられっぱなしであったスベン公国による反抗作戦の実施が決定された。
 アポリオンの再来以来初となる人類側からの反撃。

 きっと他の国は、想像だにしなかっただろう。人類の最初の反撃がスベン公国という小国から始まる事を。


 それから大急ぎで準備を整え、作戦開始日となった。
 目の前には100機のザムが整然と並んでいる。こんな光景、アニメのポスターか、模型誌の作例ぐらいでしか見た事が無い。その足元には、沢山の兵士とメイドさん達が並んでいる。メイドさん達は皆オペレーターをしてくれている人達だ。並んでいる先頭の五人のメイドさん達は全員MRヘッドセットを首から提げている。彼女達は、最初期からオペ子をしてくれていた人達で、今では複数あるオペ子班のそれぞれの長をしている。
 時間になり、僕の乗るザムの掌の上に乗ったフォニアさんが話し始める。
「我が親愛なるスベン公国兵士諸君。アポリオンが我が国に現れてから、我々は敗走を続けました」
 ヘッドセットがフォニアさんの声を拾い、それを指揮官型ザムの拡声機能を使って大きくしているが、それは静かな話し出しだった。
 兵士達も、城壁の上に居る市民もフォニアさんの演説をただ黙って聞いている。
「首都ハイレルゲンを奪われ、先王ダリル・ガレイロス・スベンもこの時の闘いの傷により逝去されました。皆の中にも家族を大事な人をアポリオンによって奪われた者も多いでしょう」
 その声は静かであったが、奪われたものの怒りが込められている。
 城壁の上にはなくした家族を思い出したのだろう。すすり泣く声が聞こえてきた。

「ですが天は我らを見捨てていなかった。タッファ教会により勇者召喚がなされた時、小国でしかなかった我が国には、勇者様がいらっしゃる事が無いのは最初から分かっていました。ですが、勇者様が召喚された時、四人目の方が召喚されました。デアフレムデであるヒデユキ・アマタ様。アマタ様は、神霊機を召喚する事は出来ませんでした。ですが、かわりに召喚する事が出来たのは、鉄巨人ザム。ザムは、アポリオンを相手に優位に戦う事が出来ましたが、神霊機と比べると、たしかに見劣りする力しかありません。しかし、アマタ様は、他の勇者様方に匹敵するほどのお力を持っていました。それはザムを複数召喚出来ると言うお力。そしてザムには、召還者では無い者、我々が乗っても操れるという事。これがどういう事か既に兵士諸君には分かっている事でしょう。今までは勇者様方に守ってもらい、戦ってもらうばかりだった私達が、勇者様方と共に戦えるという事なのです!私達自らが戦えるという事です!」
 そこで一旦フォニアさんが言葉を切る。
 兵士達は全員気合の入った顔をし、今にでも雄叫びを上げそうになるのを必死に堪えているようだった。
 対抗しようにも、支援物資として送られてくるのは、型落ちの旧型フォルスばかり。撃退する事すら困難だった。自分達の無力を嘆いただろう。旧型機しか送ってこない世界に憎悪しただろう。そして三人しか居ない勇者に絶望しただろう。
 借り物とは言え彼らの手でアポリオンに対抗する力を得た。その喜びは僕には想像できない。
「これは、最初の試練にして最初の一歩。自らの領土を自らの手で取り戻しましょう!全軍!獅子奮迅の活躍を期待します!スベン公国奪還作戦開始!我々から奪われたものを我ら手で、奪い返すのです!」
「作戦開始!全員持ち場に着け!パイロットはザムに搭乗し、各隊の先発隊は出撃しろ!」
「「「「ハッ!」」」」
 ガルロックさんの怒鳴り声に合わせて、兵士達が動き出す。パイロット達は、各自自身に割り当てられたザムの足元へ行き、ワイヤーに掴まって乗り込む。奉げ銃をしていたザム達のモノアイに次々と光が灯る。これだけの数がほぼ一斉にモノアイを輝かせるのは壮観な光景だな

 最後の一機まで移動を見送るまでフォニアさんは、ずっと掌の上でそれを見送っていた。
 スベン公国の運命を決める作戦が始まった。
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