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68再会
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オリヴィアは、前世の自分の死因が妻に刺殺されたと知り、動揺を隠せない。
知らず知らずのうちに研究室を出て、自宅に向かっている。前世の妻とは、夫婦仲は良かったはず。それなのに、少なくとも刺殺されるほどの裏切りはしていない。
我が家の玄関先まで来る。一応、玄関チャイムを鳴らす。合いかぎの場所は知っているが、今、入ると不法侵入になりかねない。
たぶん、妻は警察署に出頭し、留置場に入れられているだろうが、娘はどうしているか気になって来てみた。
玄関周りには、警察の規制線が張られていて、まだ警官の姿もちらほらしている。
でもなんとなく、家の中で娘が泣いている気がする。正面から入らないで、隠蔽をかけたまま転移魔法で、家の中へ入ることにしたのだ。
勝手知ったる家の中は、前世と同じで、入ってすぐの部屋が俺の書斎兼応接間になっていた。その隣の部屋がリビングで台所がある。応接間の向かい側に階段があり、階段下のスペースを利用して風呂とトイレがある。
事件現場は何処だ?
おれはそのまま階段をそろりと上がる。上がって最初の部屋が娘の部屋。その隣が妻の部屋で、最奥が俺の部屋となっている。
妻とそのナニをするときは、俺の部屋でする。娘に声が聞こえないように敢えて、ひとつ部屋を空ける。
娘は自分の部屋の扉を開けっぱなしにして、今まさに首を吊ろうとしている瞬間だった。
「バカなことはやめなさい!」
オリヴィアは、ワンピースの上に白衣を着た姿で、前世の娘の前に現れる。
「ほっといて、黙って死なせて。お願い。」
「どうしたの?訳を言ってごらんなさい。」
優しく娘の背中を撫でる。
すると娘は、再び泣きじゃくりながら、
「私がお父さんを殺してしまったのに、お母さんが身代わりになるってきかなくて。でも、お父さんを殺す気なんてなかったの。だって、お父さんのこと大好きだったもの。それなのに……。」
ああ、やっぱり、そういうことだったのか……。妻が自分を殺すわけがないと信じていた。
「詳しく話してごらん。」
「え?ひょっとして、お父さん……?」
「!」
オリヴィアの姿をしているのに、なぜわかる?
「やっぱり!お父さんだ。外人の女の人の姿になっているけど、お父さんよね。」
「うん。どうしてわかった?」
「……なんとなく……?」
血は水より濃い。ということか……?
「そんなことより、どうしてお父さんを刺してしまったんだ?怒らないから言ってみなさい。」
「覚えてないの?」
「あいにく、このカラダに入ったのは、20数年前のことでな。俺は自分の死因を知らずに今まで来たんだ。」
「お父さんがね、乙女ゲームを持っていたの。てっきり私にくれるものだとばかり思っていたら、もうないって、誰か別の人にあげたみたい……それで口論になって、気がついたら、側にあった包丁でお父さんのお腹を刺してしまっていたの。ごめんなさい。お父さん。」
「その乙女ゲームというのは、コレか?」
オリヴィアは異空間から、乙女ゲーム2つを差し出す。
「え!どうしてそれをお父さんが持っているの?あの時はないって人にあげたって。」
「実はな、この乙女ゲームは、つい先頃死んだお父さんに頼んで取り寄せてもらったものなんだ。こんがらがる話かもしれないが、今から話すことをよく聞いてくれ。」
それから、オリヴィアは自分が乙女ゲームの世界に転生したかもしれないという話を娘に聞かせた。
「信じられない!お父さんが乙女ゲームのヒロインに転生して、聖女様だなんて……。」
「あはは。俺も今でも信じられないよ。」
「だったら死んだお父さんは、乙女ゲームの中に転生したってことになるわね。さぞかし苦労するんだろうな。」
自分が殺しておきながら、クスクスと笑う。困った娘だ。
知らず知らずのうちに研究室を出て、自宅に向かっている。前世の妻とは、夫婦仲は良かったはず。それなのに、少なくとも刺殺されるほどの裏切りはしていない。
我が家の玄関先まで来る。一応、玄関チャイムを鳴らす。合いかぎの場所は知っているが、今、入ると不法侵入になりかねない。
たぶん、妻は警察署に出頭し、留置場に入れられているだろうが、娘はどうしているか気になって来てみた。
玄関周りには、警察の規制線が張られていて、まだ警官の姿もちらほらしている。
でもなんとなく、家の中で娘が泣いている気がする。正面から入らないで、隠蔽をかけたまま転移魔法で、家の中へ入ることにしたのだ。
勝手知ったる家の中は、前世と同じで、入ってすぐの部屋が俺の書斎兼応接間になっていた。その隣の部屋がリビングで台所がある。応接間の向かい側に階段があり、階段下のスペースを利用して風呂とトイレがある。
事件現場は何処だ?
おれはそのまま階段をそろりと上がる。上がって最初の部屋が娘の部屋。その隣が妻の部屋で、最奥が俺の部屋となっている。
妻とそのナニをするときは、俺の部屋でする。娘に声が聞こえないように敢えて、ひとつ部屋を空ける。
娘は自分の部屋の扉を開けっぱなしにして、今まさに首を吊ろうとしている瞬間だった。
「バカなことはやめなさい!」
オリヴィアは、ワンピースの上に白衣を着た姿で、前世の娘の前に現れる。
「ほっといて、黙って死なせて。お願い。」
「どうしたの?訳を言ってごらんなさい。」
優しく娘の背中を撫でる。
すると娘は、再び泣きじゃくりながら、
「私がお父さんを殺してしまったのに、お母さんが身代わりになるってきかなくて。でも、お父さんを殺す気なんてなかったの。だって、お父さんのこと大好きだったもの。それなのに……。」
ああ、やっぱり、そういうことだったのか……。妻が自分を殺すわけがないと信じていた。
「詳しく話してごらん。」
「え?ひょっとして、お父さん……?」
「!」
オリヴィアの姿をしているのに、なぜわかる?
「やっぱり!お父さんだ。外人の女の人の姿になっているけど、お父さんよね。」
「うん。どうしてわかった?」
「……なんとなく……?」
血は水より濃い。ということか……?
「そんなことより、どうしてお父さんを刺してしまったんだ?怒らないから言ってみなさい。」
「覚えてないの?」
「あいにく、このカラダに入ったのは、20数年前のことでな。俺は自分の死因を知らずに今まで来たんだ。」
「お父さんがね、乙女ゲームを持っていたの。てっきり私にくれるものだとばかり思っていたら、もうないって、誰か別の人にあげたみたい……それで口論になって、気がついたら、側にあった包丁でお父さんのお腹を刺してしまっていたの。ごめんなさい。お父さん。」
「その乙女ゲームというのは、コレか?」
オリヴィアは異空間から、乙女ゲーム2つを差し出す。
「え!どうしてそれをお父さんが持っているの?あの時はないって人にあげたって。」
「実はな、この乙女ゲームは、つい先頃死んだお父さんに頼んで取り寄せてもらったものなんだ。こんがらがる話かもしれないが、今から話すことをよく聞いてくれ。」
それから、オリヴィアは自分が乙女ゲームの世界に転生したかもしれないという話を娘に聞かせた。
「信じられない!お父さんが乙女ゲームのヒロインに転生して、聖女様だなんて……。」
「あはは。俺も今でも信じられないよ。」
「だったら死んだお父さんは、乙女ゲームの中に転生したってことになるわね。さぞかし苦労するんだろうな。」
自分が殺しておきながら、クスクスと笑う。困った娘だ。
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