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69死因
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しかし、このまま無実の罪で妻を留置場に置くことは気が引ける。
神野太郎が死んだ時代は、少年法がバリバリ幅を利かせていた時代。娘に自首させたところで、児童相談所送りで終わるだろうが、将来嫁にやるときに、傷がつく。
どうしたものかと、ぶつぶつ言いながら考えていると、娘は、さっき渡した乙女ゲームにもう夢中になっている。
コラコラ誰のせいで、こんな思いをしていると思っているんだ。
一番いい死因は、刺殺ではなく病死にすることだが、こればっかりは聖女様でもできないこと。
あれこれ悩んでも仕方がない。アイテムカバンの奥深くに隠し込んだステファニーおばあさんの手紙を持ち出し、それに懸命に語り掛けることにした。
今はアイテムかばんも異空間のクローゼットの中にしまい込んでいる。
最初に出会ったころに比べると、オリヴィアも聖女様として板についてきたので、わりとすんなりステファニーおばあさんが来てくれることになった。
久しぶりに見たステファニーおばあさんは、おばあさん呼びしていたことが申し訳なかったぐらいに若々しかった。
「お久しぶりに存じます。ステファニー聖女様。」
「あら、もうおばあさんと呼んでくれないのね。」
「あの節は大変失礼いたしました。とてもお若々しくて、なぜあの時、そう言うように呼んでしまったかわかりません。」
「オリヴィアちゃんは、まだ子供だったからよ。アンダルシアは大変だったわね。」
「ええ、まさかあの世界が乙女ゲームの世界だとは思ってもみませんでした。」
「仕方なかったのよ。なんてったって、前世の死の原因が……乙女ゲームだったもので。ってここにいるから、もう知ってしまったのよね?」
「ステファニー様、そこで相談があります。俺の死を病死にしていただくわけにはいきませんか?」
「奥様が無実の罪で刑に服す、というところが気に入らないのね。かといって、お嬢さんに自首させるのも、忍びない?」
「はい。」
「考えられる手はふたつあるわね。まず一つ目、それはオリヴィアが太郎さんに失恋して、刺殺した犯人になること、そして傷心の末メリケン国へ帰る途中、飛行機事故か何かの事故で死んじゃう。もともとオリヴィアは、異世界人だから消えてしまってもいい存在よね。そして、二つ目、病死にできないこともないけど、そうなると、今いるあの世界がもろとも消えてなくなっちゃうのよね。オリヴィアちゃんの両親も、ライオンちゃんも永遠に会えなくなってしまう。それでもいいのなら、病死と言うことにしたげるけど?」
二度と前世ニッポンに足を踏み入れないか、乙女ゲームの世界が消えてなくなるか、の二者択一は、難しいが、もともと俺は死んだ人間なのだから、ニッポンにいてはいけない人間だ。
「わかった。だったら俺が真犯人になる。で、捕まる前にメリケン国へトンズラするのだな?その前にもう一度だけ、研究室に行ってもいいか?死の間際、もう少しで完成しそうなところまで行っていたデータを持ち出したい。」
「ええ。それぐらいなら、構いませんわ。でも今のオリヴィアちゃんは、魅力的だから気を付けるのよ。あとは、みんなの記憶をいじって、つじつまが合うようにしたげるわ。」
「もう一つ質問してもいいですか?もし、オリヴィアとして、あの世界で死んだ後、再び乙女ゲームの世界に転生するものなのでしょうか?」
「いいえ。今回でチャラになるわ。速水凛子さんのことを言っているのね?彼女は、乙女ゲームの世界に転生しても、そのゲームにこだわり続けたから、また2度目も乙女ゲームに転生してしまったのよ。でもオリヴィアは自由に生きた。だから、2度目の転生はあり得ない。再び、ニッポンで幸せに生まれ変わるわ。」
「それを聞いて安心しました。それでは、少し時をさかのぼり、事件現場を大学の研究室にします。」
神野太郎が死んだ時代は、少年法がバリバリ幅を利かせていた時代。娘に自首させたところで、児童相談所送りで終わるだろうが、将来嫁にやるときに、傷がつく。
どうしたものかと、ぶつぶつ言いながら考えていると、娘は、さっき渡した乙女ゲームにもう夢中になっている。
コラコラ誰のせいで、こんな思いをしていると思っているんだ。
一番いい死因は、刺殺ではなく病死にすることだが、こればっかりは聖女様でもできないこと。
あれこれ悩んでも仕方がない。アイテムカバンの奥深くに隠し込んだステファニーおばあさんの手紙を持ち出し、それに懸命に語り掛けることにした。
今はアイテムかばんも異空間のクローゼットの中にしまい込んでいる。
最初に出会ったころに比べると、オリヴィアも聖女様として板についてきたので、わりとすんなりステファニーおばあさんが来てくれることになった。
久しぶりに見たステファニーおばあさんは、おばあさん呼びしていたことが申し訳なかったぐらいに若々しかった。
「お久しぶりに存じます。ステファニー聖女様。」
「あら、もうおばあさんと呼んでくれないのね。」
「あの節は大変失礼いたしました。とてもお若々しくて、なぜあの時、そう言うように呼んでしまったかわかりません。」
「オリヴィアちゃんは、まだ子供だったからよ。アンダルシアは大変だったわね。」
「ええ、まさかあの世界が乙女ゲームの世界だとは思ってもみませんでした。」
「仕方なかったのよ。なんてったって、前世の死の原因が……乙女ゲームだったもので。ってここにいるから、もう知ってしまったのよね?」
「ステファニー様、そこで相談があります。俺の死を病死にしていただくわけにはいきませんか?」
「奥様が無実の罪で刑に服す、というところが気に入らないのね。かといって、お嬢さんに自首させるのも、忍びない?」
「はい。」
「考えられる手はふたつあるわね。まず一つ目、それはオリヴィアが太郎さんに失恋して、刺殺した犯人になること、そして傷心の末メリケン国へ帰る途中、飛行機事故か何かの事故で死んじゃう。もともとオリヴィアは、異世界人だから消えてしまってもいい存在よね。そして、二つ目、病死にできないこともないけど、そうなると、今いるあの世界がもろとも消えてなくなっちゃうのよね。オリヴィアちゃんの両親も、ライオンちゃんも永遠に会えなくなってしまう。それでもいいのなら、病死と言うことにしたげるけど?」
二度と前世ニッポンに足を踏み入れないか、乙女ゲームの世界が消えてなくなるか、の二者択一は、難しいが、もともと俺は死んだ人間なのだから、ニッポンにいてはいけない人間だ。
「わかった。だったら俺が真犯人になる。で、捕まる前にメリケン国へトンズラするのだな?その前にもう一度だけ、研究室に行ってもいいか?死の間際、もう少しで完成しそうなところまで行っていたデータを持ち出したい。」
「ええ。それぐらいなら、構いませんわ。でも今のオリヴィアちゃんは、魅力的だから気を付けるのよ。あとは、みんなの記憶をいじって、つじつまが合うようにしたげるわ。」
「もう一つ質問してもいいですか?もし、オリヴィアとして、あの世界で死んだ後、再び乙女ゲームの世界に転生するものなのでしょうか?」
「いいえ。今回でチャラになるわ。速水凛子さんのことを言っているのね?彼女は、乙女ゲームの世界に転生しても、そのゲームにこだわり続けたから、また2度目も乙女ゲームに転生してしまったのよ。でもオリヴィアは自由に生きた。だから、2度目の転生はあり得ない。再び、ニッポンで幸せに生まれ変わるわ。」
「それを聞いて安心しました。それでは、少し時をさかのぼり、事件現場を大学の研究室にします。」
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