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34運転

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 レジャーランドでジェットコースターを死ぬほど乗らされて、クタクタになったマリンストーンは、速攻で温泉街へ戻る。

 本来なら、ひと風呂浴びて、冷たいビールを呷りたいところなのだが、今日は執務室にブルーレイドを連れて行かなければならない。

 ったく。飛んだ厄介者が来たものだ。

 執務室のドアをノックすると、中にはスティーブン王子も来られていた。なるほど……俺が頼んだので、もしかするとクランベールが受け入れてくれる可能性もあると踏んだか?

 ブルーレイドだけが、執務室に入ることが許され、他のものは、廊下で待機することになった。

 まぁ、そらそうだろうな。面接でも保護者は中へ入れない。え?儂はいつからブルーレイドの保護者になった?どうでもいいっか。

 それから1時間以上、扉は開くことがなかった。

 開いたときは、さすがにブルーレイドは疲れ切った表情をしていたのだ。

 「どうだった?」

 「辺境領へ戻り、車の教習所に通えってさ。」

 とりあえず、二人で温泉に入ることになり、さらに詳しく話を聞き出す。

 「マーガレット様に、コテンパンにやられたよ。」

 よく見るとブルーレイドのカラダは赤く腫れあがっていて、ところどころ青くなっているところもある。

 「何をされた?」

 「リングのようなところへ連れていかれて竹を束ねた様なもので、叩きのめされたよ。マーガレット様は、その姿になると、人の気持ちがわかるとおっしゃっていた。でもその甲斐あり採用されたようなものだから、文句はない。」

 「そうか。まずは、おめでとう。」

 「できれば今日中に辺境領へ帰りたいが……可能だろうか?」

 「まぁ、そう焦るな。辺境領へ帰ると言っても、住むところもまだだろ?マギーランドで働くことになるか?クランベールかによって、住まいが替わるだろう。」

 「なぜクランベールなのだ?」

 「マーガレットのほかにもう一人男性が居ただろ?あれが婿殿なのだ。」

 「ええ?だから、俺がヤられているとき、目を逸らしたんだな?」

 「そうなのか?」

 夫婦げんかになった時、絶対怒らせてはダメだと思ったんだろうな。

 「自動車の教習とは、どういうものか?」

 「学科と実技、それに最後はカリメンといって、一般道や高速道路を走らされる。それで教官がOKしたら、卒業できると言うところだ。」

 「マリンストーンはそれに合格したのか?」

 「そうだ。3か月かかったぜ。馬より便利だし、早い。」

 「うん。頑張るよ。」

 それから風呂上りに冷えたビールを飲む。

 「なんといううまさだ。こんなうまいもの初めて飲んだ。」

 「だろ?だからやめられないのだ。とにかく今は、家のことはこっちで探せ。使用人用の宿舎もあったはずだから、そこを遣わせてもらえばいい。ああでも、しばらくは車がないと教習所までの通勤が大変だなぁ。」

 「やっぱり辺境領の移民部屋を借りるよ。」

 「ウチの公爵家を間借りするか?家賃はいらないよ。使用人も自分の家だと思って、使ってくれ。」

 「いいのか?お言葉に甘えるよ。」

 「お前とは、学園の頃からの付き合いだからな。クリストファー殿下とは違う。それにマーガレットのお眼鏡にかなったのだから、心配するな。アイツもそれを見越して、教習所通いを提案したのだと思うよ。今日はココの宿を使え。明日、迎えに来る。」

 「え?マリンストーンはどこかへ行くのか?」

 「ああ。俺はこう見えても一国一城の主だから、領地へ戻り仕事をせねばならない。」

 「ええー!?」



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 「なかなかいい拾い物をしたわ。スティーブンもそう思うでしょ?」

 「ああ、でもあそこまでやることはないと思うよ。やりすぎだよ。」

 「あら、そうかしら?でも立ち向かってくる気概が大したものだと思うのよ。」

 クランベール王城で夫婦の寝室での会話。色っぽい話はひとつもない。

 マーガレットが意識的に避けているので、まだ前世男であった記憶が新しいので、なかなか女として、スティーブンに身をゆだねる気になれない。

 でも、一応妻としての役目は果たしている。演技かもしれないけど?カラダは女性として、反応しているので問題はないようだ。

 「マギー、こっちへおいで。君の口から他の男の話を聞くのはイヤだ。」

 「あらぁ?父と同い年のオジサンよ?」

 「たとえオジサンでも、嫌なものは嫌なんだ。マギーは俺の女なんだからな。」

 「そんなモノみたいに言わないで。」

 「モノだなんて、思ってないさ。ホラ、もう濡れている。」

 そこから先は、よく覚えていない。ただ、目くるめく快楽の海に彷徨い続けたことだけ。

 よくあさ、辺境領へ飛び、ブルーレイドの教習所入学の手続きを行う。授業料は全額免除とする。

 しばらく住むところは、公爵邸で居候させるのが一番いいかも?家財道具はすべてそろっているので、使用人もわざわざ雇う必要もない。

 着るものも、お父様の古手ならいくらでもあるので、わざわざ作ることもないだろう。温泉街へ赴任が決まったら、その時、作ればいいだけの話だもの。

 いい仕事をしてもらうための下準備は整う。衣食住が決まれば、後は自動車運転を覚えてもらうだけ。

 マーガレットは、その日が来るのをひたすら楽しみにしている。

 仕事のパートナーとして、夫としてスティーブンは申し分がないけど、秘書が欲しかったマーガレットとしては、これ以上ないと思えるような人材が手に入ったのだ。

 自動車の運転ができるようになれば、いずれオスプレイの操縦も覚えてもらおうかしらね。

 それとも新幹線の運転のほうがいいかしら。面接の時、新幹線のことを質問攻めにされたからね。
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