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1.婚約破棄
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「公爵令嬢シャルロット・エスペランサ、貴様との婚約は本日、今をもって破棄するものとする!」
「え?なぜでございますか、わたくしが何か粗相をしてしまったということでしょうか?」
「いや、そうではない。俺がもうシャルロットに飽きてしまったのだ。許せ、永の妃教育、大儀であった」
そんなことどうやって、許せられるものではない。飽きたですって?プリプリ怒りながら、吹き抜けの3階部分から玄関ホールを見渡すと、今しがた馬車が着いたのだろうか、赤いドレスを着た令嬢が、しずしずとこちらに向かう階段のところまできたようだった。
かねてより、元・婚約者のクリストファー殿下が浮気しているという噂を聞いていたのだが、まさかあのご令嬢が、男爵令嬢のリリアーヌ・ドイル様のことだろうか?
この階段を使うということは、王子様の部屋直通の階段というわけだから、アイツが浮気相手の令嬢だということは、間違いないだろう。
「ちくしょう!」声には出さず、でもはらわたが煮えくり返るとはこういうことを言うのだと実感する。
シャルロットもまた、この皇子直通の階段を使って、階下へ降り帰宅しようとしている。
そして、ちょうど二階の階段部分の踊り場で、鉢合わせをしてしまう。勝ち誇った顔をしているリリアーヌ。対して、シャルロットは青ざめているように見えるだろうが、怒り過ぎて、頭に血液が集中して、蒼白に見えているだけなのだが、そのシャルロットに対して、無礼にもリリアーヌが口を開く。
「まあ!これは、これは、元。婚約者様のシャルロット様でございますわね?クリスから話は聞いておりますわよ。残念でしたわね?では、ごきげんよう」
腹が立ちすぎて、ロクに言い返せない。それがまた却ってシャルロットの怒りに火が点く。
「この泥棒猫!せいぜい今だけ、殿下の御寵愛を愉しみなさい!では、」ごきげんよう」
シャルロットは、くるりとリリアーヌに背を向け、階段を降りようとした瞬間!
「なんですって!?この捨てられ女が!」
大きな声を出して、リリアーヌは、シャルロットに体当たりしてしまう。
その現場をたまたま目撃していた人が大勢いた。ちょうど、予算編成のため、多くの文官が王族に書類を提出するため2階に来ていたのだ。
「おい!衛兵を呼べー!」
大声をリリアーヌが出してしまったので、皆の注目を全身に浴びる。そのことに気づいていないリリアーヌは、願かにシャルロットが転げ落ちていく様を見て、愉快そうにさらに大声で笑いながら、3階へと向かおうとしてカラダの向きを替えたところ、ピンヒールがなぜか折れてしまい、バランスを崩した挙句、シャルロットと同じように階段を転げ落ちて行った。
目撃者の文官たちは、口々に自ら見てしまったことを興奮しながら、衛兵に話す。
「赤いドレスを着た女が青いドレスを着た令嬢をバカにして、背中を押すところを確かに見た」
「その後、青いドレスの女は、悪びれることなく大笑いした後、なぜかカラダのバランスを崩して、勝手にしたにおちたのだ」
「誰かが突き落としたのではなくて……?」
「あの踊り場にいたのは、たすかに赤いドレスの女だけだった」
その踊り場には、確かにピンヒールが一つ折れた状態で見つかった。赤いドレスを着た女の足には、片方だけ靴が履いていた状態だったので、目撃証言と齟齬がないため、青いドレスの令嬢を殺害せんと至らしめた結果、自らも、バランスを崩し、階段から転げ落ちて、首の骨を折り、即死した。と報告書に書く。
ちなみに、青いドレスの令嬢は、公爵令嬢のシャルロット・エスペランサ様だということがわかり、すぐさま公爵家と第1王子のクリストファー殿下に伝えられる。
「シャルロット!なぜ……?さっきまで、あんなに元気だったのに。俺を置いて逝かないでくれ!」
泣きわめくものの、本来なら婚約者を失った王子は、皆からの同情を惹くところなのだが、あいにく赤いドレスの女の話を聞いてしまった者たちが大勢いたので、その者たちは、白い目で王子を見下ろしている。
ヒソヒソと王子が浮気をして、婚約破棄された公爵令嬢の方がお気の毒だ。あの赤いドレスの女は男爵令嬢の娼婦だったらしい。などと囁かれ、クリストファーの渾身の演技も台無しというところ。
「え?なぜでございますか、わたくしが何か粗相をしてしまったということでしょうか?」
「いや、そうではない。俺がもうシャルロットに飽きてしまったのだ。許せ、永の妃教育、大儀であった」
そんなことどうやって、許せられるものではない。飽きたですって?プリプリ怒りながら、吹き抜けの3階部分から玄関ホールを見渡すと、今しがた馬車が着いたのだろうか、赤いドレスを着た令嬢が、しずしずとこちらに向かう階段のところまできたようだった。
かねてより、元・婚約者のクリストファー殿下が浮気しているという噂を聞いていたのだが、まさかあのご令嬢が、男爵令嬢のリリアーヌ・ドイル様のことだろうか?
この階段を使うということは、王子様の部屋直通の階段というわけだから、アイツが浮気相手の令嬢だということは、間違いないだろう。
「ちくしょう!」声には出さず、でもはらわたが煮えくり返るとはこういうことを言うのだと実感する。
シャルロットもまた、この皇子直通の階段を使って、階下へ降り帰宅しようとしている。
そして、ちょうど二階の階段部分の踊り場で、鉢合わせをしてしまう。勝ち誇った顔をしているリリアーヌ。対して、シャルロットは青ざめているように見えるだろうが、怒り過ぎて、頭に血液が集中して、蒼白に見えているだけなのだが、そのシャルロットに対して、無礼にもリリアーヌが口を開く。
「まあ!これは、これは、元。婚約者様のシャルロット様でございますわね?クリスから話は聞いておりますわよ。残念でしたわね?では、ごきげんよう」
腹が立ちすぎて、ロクに言い返せない。それがまた却ってシャルロットの怒りに火が点く。
「この泥棒猫!せいぜい今だけ、殿下の御寵愛を愉しみなさい!では、」ごきげんよう」
シャルロットは、くるりとリリアーヌに背を向け、階段を降りようとした瞬間!
「なんですって!?この捨てられ女が!」
大きな声を出して、リリアーヌは、シャルロットに体当たりしてしまう。
その現場をたまたま目撃していた人が大勢いた。ちょうど、予算編成のため、多くの文官が王族に書類を提出するため2階に来ていたのだ。
「おい!衛兵を呼べー!」
大声をリリアーヌが出してしまったので、皆の注目を全身に浴びる。そのことに気づいていないリリアーヌは、願かにシャルロットが転げ落ちていく様を見て、愉快そうにさらに大声で笑いながら、3階へと向かおうとしてカラダの向きを替えたところ、ピンヒールがなぜか折れてしまい、バランスを崩した挙句、シャルロットと同じように階段を転げ落ちて行った。
目撃者の文官たちは、口々に自ら見てしまったことを興奮しながら、衛兵に話す。
「赤いドレスを着た女が青いドレスを着た令嬢をバカにして、背中を押すところを確かに見た」
「その後、青いドレスの女は、悪びれることなく大笑いした後、なぜかカラダのバランスを崩して、勝手にしたにおちたのだ」
「誰かが突き落としたのではなくて……?」
「あの踊り場にいたのは、たすかに赤いドレスの女だけだった」
その踊り場には、確かにピンヒールが一つ折れた状態で見つかった。赤いドレスを着た女の足には、片方だけ靴が履いていた状態だったので、目撃証言と齟齬がないため、青いドレスの令嬢を殺害せんと至らしめた結果、自らも、バランスを崩し、階段から転げ落ちて、首の骨を折り、即死した。と報告書に書く。
ちなみに、青いドレスの令嬢は、公爵令嬢のシャルロット・エスペランサ様だということがわかり、すぐさま公爵家と第1王子のクリストファー殿下に伝えられる。
「シャルロット!なぜ……?さっきまで、あんなに元気だったのに。俺を置いて逝かないでくれ!」
泣きわめくものの、本来なら婚約者を失った王子は、皆からの同情を惹くところなのだが、あいにく赤いドレスの女の話を聞いてしまった者たちが大勢いたので、その者たちは、白い目で王子を見下ろしている。
ヒソヒソと王子が浮気をして、婚約破棄された公爵令嬢の方がお気の毒だ。あの赤いドレスの女は男爵令嬢の娼婦だったらしい。などと囁かれ、クリストファーの渾身の演技も台無しというところ。
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