ホームレスOLのシンデレラ物語~ハイスペイケメン上司と秘密のルームシェア

青の雀

文字の大きさ
3 / 19

3.ルームシェア

しおりを挟む
 食事が終わり、新藤部長の車で家に向かう。小夜香が以前住んでいたオンボロマンションは駅前にあったけど、部長のマンションもそれに負けず劣らず超立地がいいところ。マンションの目の前にはコンビニもある。

 しかも33階建てのタワーマンションなんて、初めて入ったわ。

 そこはまるでホテルのエントランスかと思えるほどゴージャスの一言に尽きる。ソファに来客用の部屋、大きな花瓶には、色とりどりの花が生けられている。それに奥にはフロントではなく、コンシェルジュまでいる。

 本当は地階から直通で居住者用のエレベーターに乗れるのだが、高村のため、わざわざ1階に上がりエントランスを見せることにした。

 小夜香がいつも泊まるビジネスホテルに比べたら、100倍は豪華なところ、まさか家賃も百倍ってことはないでしょうね。

 新藤部長は慣れた手つきで、オートロックを解除していく。これは1回では、覚えられない。エントランスには誰でも入れ、その後コンシュルジュにカギを受け取り、居住者用のエレベーターの前で、操作盤にカギをかざすと扉が開く。エレベーターの中にまでオートロックがあり、住民以外の人は乗り降りできない仕組みになっている。

 それに屋内廊下もすべてカーペットが敷き詰められている。歩いていると、ふわふわとした感じがして、心地いい。空調も施されているようで、外はまだ、寒いというのに、ここではコートもいらないぐらいに温かい。

 おまけに体温感知センサーで、自動で照明が灯る。小夜香のオンボロマンションは、しょっちゅう蛍光灯が切れて、真っ暗の中で、手探りでカギを探したもの。

 本当に、こんなところに住まわせてもらってもいいのか?小夜香はだんだん不安になってくる。

 「あ!そうだ。先にゴミ置き場の説明しとくな。ここのエレベーターの裏側にゴミ置き場があって、毎朝清掃員が取りに来て、下まで下ろしてくれる、だからゴミは気が向いたときにいつでも出せるよ。生ごみはディスポーザーがあるから、それで処理してくれって、俺は調理をしないから、もしするならキッチンのディスポーザーを遣ってくれればいいよ。」

 はぁ……。もう、すごすぎて言葉が出ない。

 佐々木部長の部屋はタワーズマンションの30階にあり、眺望がすばらしく素敵なところ。台所は一度も使われていないらしく、ピカピカのままで冷蔵庫の中は、ミネラルウォーターとビールしか入っていない。

 「俺の部屋以外は、自由に何でも使ってくれてかまわないが、男を連れ込むことはダメだ。それと、家賃と水道光熱費は俺が持つから心配するな。一刻も早く新しいところが見つかるまで、だからな。」

 「前のカノジョさんは、ここへ来たことは?」

 「あるわけないよ。あの女はセフレだったから。」

 「それでセフレさんから、肝心のセックスが下手だなんて、言われてシャレにならないですね。」

 また、ケラケラと笑う。

 「何か欲しいものがあるか?」

 ムっとして、新藤部長が言うので、

 「明日の朝ごはんになりそうなものがないので、買ってきてもいいですか?」

 「高村、お前、自炊するのか?」

 「まぁ、貧乏学生でしたからね。」

 「ほぉ……。」

 それにしては、あのレストランでの食事マナーが気になる。どこで、あのマナーを覚えたのだろうか?

 「夜道は危ないから、俺がついて行ってやろう。」

 「いいですよ。子供じゃないのだから、一人で行けます。」

 結局、俺はついていくことにした。高村が俺になびくそぶりを一切見せてこないことが妙に新鮮で、誰かほかの男にかっさらわれてしまうのではないかという不安がよぎる。頭を左右に振り、{一体、俺は何を考えているのだろう。}知らず知らずのうちに顔が赤くなっている。

 あんな、おっさんOLに惚れたのか?ウソだろ?

 コンビニは、部長のマンションの真向かいにあった。下の方の階では、夜中に騒がれてうるさいらしいけど、部長の部屋は30階なので、聞こえない。

 そう、小夜香はこのマンションの地下の駐車場に入る直前に、このコンビニの所在を知っていた。だから、夜道というほど歩かないことも承知のうえで、買い物に行きたいと言ったのだが、なぜか新藤部長はついてきてくれることになり、恐縮してしまう。

 コンビニでは、割高になるけど、とりあえず佐藤のご飯と海苔、牛乳、卵、食パン、バター、マヨネーズ、ヨーグルト、チョコレート、キャラメル、フルーツをどっさりかごに放り込む。もう手がしびれるほど重い。

 それをレジまで、よいしょ、よいしょ。と運んでいると部長がサっと手を伸ばし、レジまで運び、お金まで支払ってくれた。

 「俺も食うからさ。」

 いやいや、部長は絶対キャラメルなんて、食べないよ。と思いながら、マンションの部屋へ戻ってくる。

 買ったものを冷蔵庫にしまっていると、部長が

 「風呂が沸いたから、先に入るといい。」

 お言葉に甘えさせてもらったのだ。部長の部屋のお風呂は拾い、ここしばらくビジネスホテルの小さなユニットバスしか入っていなかったので、久しぶりに広いお風呂で手足を思う存分伸ばせるから嬉しい。

 それに部長のところの入浴剤もシャンプーもいいにおいがする。小夜香は長年の貧乏生活から、アメニティを先に使う癖がついている。だから、自分のシャンプーやリンスは極力使わない。

 お風呂上りは、パジャマに着替え、スーツケースの中身をほどくことにした。何よりうれしいことは、スーツケースの中身をクローゼットに入れられること。ビジネスホテルでも、クローゼットの中にしまっていたはしたけど、なんせビジネスホテルのクローゼットは狭い。

 そうこうしているうちに、夜は更け寝る時間になったのだけど、小夜香の部屋の案内をしてもらっていないことに気づく。

 「ああ、わりぃ、わりぃ。高村の部屋は玄関入って右手の部屋にする。家具を置きたければ、置け。今ある家具は自由に使っていいからな。俺は左側の一番奥の部屋を遣っているからな。これなら事故も起きにくいだろう。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヘンタイ好きシリーズ・女子高校生ミコ

hosimure
恋愛
わたしには友達にも親にも言えない秘密があります…。 それは彼氏のこと。 3年前から付き合っている彼氏は実は、ヘンタイなんです!

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんとの親子丼をちょっと書きたくなっただけです。

処理中です...