ホームレスOLのシンデレラ物語~ハイスペイケメン上司と秘密のルームシェア

青の雀

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18.秘書という仕事

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 弟健一郎は、ゼミ旅行で、カノジョに告り、OKしてもらえたみたいで、すっかり浮かれている。

 それで、しょっちゅうカノジョの家にお泊りをして、家を空けるものだから、小夜香はヨウスケに抱かれっぱなしになっているのだ。

 それというのも、ヨウスケの秘書になってからは朝から晩まで、ずっと一緒にいる。家でも職場でも通勤も、ヨウスケが外出するときも、今まではヨウスケだけが出かけていたのに、最近は、ヨウスケの運転手でもない小夜香が同行することになる。出先で、ヨウスケをフォローするために、なんで?

 要するに、ヨウスケのカバン持ちなのだ。でも、重い鞄は、ヨウスケが持ち、小夜香は金魚のフンよろしく、ヨウスケにくっついて回るだけの仕事しかしていない。

 会社の部長室でお留守番をしていた日々が懐かしく感じる。

 それでもヨウスケは、ハンドルを握っていても、突然、欲情すると、そのまま小夜香をラブホに連れ込み、そこでさんざん転がされる羽目になるから、油断できない。

 今日も、このまま直帰の予定で出てきて、最後にラブホに連れ込まれている。

 「なあ、小夜香、結婚しないか?」

 「え?うん。いいよ。」

 「本当?やったぁー!断られたら、どうしようかと思っていたけど、嬉しいよ、ありがとう。」

 「仕事はどうしたらいい?」

 「俺としては、辞めてほしいけど、小夜香ほど優秀な秘書は後任を探すのが大変だから、続けてほしいけど、小夜香はどうしたい?」

 「子供ができるまでは、続けたいかな?」

 「そうだよね。俺がいない部屋に一人でいても仕方ないしね。あ、でも健一郎君がいるか?」

 「あの子、最近、カノジョさんができて、浮かれているからね。そのうち、カノジョさんと同棲するかもしれないし。」

 「そうだな、じゃ、子供ができるまでは、優秀な秘書さんを頼むとするか。それより、お義父さんに、ご挨拶に行きたいのだけど、いつが、都合がつくか聞いてみてくれないか?」

 「わかったわ。第1秘書の須藤さんに聞いてみるわね。」

 須藤さんからではなく、父からすぐ連絡が来た。土日であれば、国会もないから、いつでも時間は作るということだったので、そのままをヨウスケに伝える。

 「それじゃ、日曜日にして、ウチの両親とも顔合わせしておくか。」

 ヨウスケの両親って、社長御夫妻だよね?なんか、緊張するなー。

 「なに、言ってんだ。緊張しているのは、俺の方だぞ。なんたって、あの高村代議士に目通りができるのだからな。」

 その言葉にケラケラと笑う。

 ヨウスケと結婚することになったことを弟に伝えると、健一郎は「よかった。」と何度も祝福してくれたので、嬉しい。

 「次の日曜日、顔合わせがあるのだけど、来る?」

 「うん。たぶん行った方がいいと思うから、行くよ。これから親戚になるもの同士だからね。美奈香姉さんや優里香姉さん、信一郎も呼ぶの?」

 「あー。そういうこと、全然考えていなかったけど、やっぱり呼ぶべきよね?」

 結婚する両家が一堂にそろって、食事会をするのが顔合わせだから。お互いが好き同士での恋愛結婚でも、結婚は家同士だから、家族全員が行かないと意味はない。

 そうなると美奈香姉さんの旦那様も呼ぶ必要があるかもしれない。

 ヨウスケに聞くと、ヨウスケは一人っ子だから、新藤家からの出席は3名だけだと聞かされ、高村家からは7人の出席になることを伝えたのだ。

 前日、土曜日に社長御夫妻に挨拶に行くと、

 「お噂はかねがねヨウスケから聞いているよ。高村代議士のご令嬢だと聞いて、驚いたが、家柄が違うので、お父様がお許しになるかどうか、わからないよね?でも、ウチのヨウスケを選んでくれて、親として感謝するよ。」

 「本当、こんなに可愛いお嬢さんが、お嫁に来てくれるなんて、夢みたいだわ。仲良くしてね、小夜香さん。」

 父が反対するだなんて、あり得ない話。だって、アノ娼婦と結婚したような男なのだから。

 私たち姉弟に申し訳ないことをした、と謝罪していても足りないことぐらい父が一番よく知っているはず。

 父は、案の定、ヨウスケが相手だと知り。喜んだ。政治献金をしてもらえるからではない。と信じている。

 「いやぁ、めでたい。優里香よりも小夜香が先に嫁に行くことになるなんて、思わなかったけど、こういったことは年齢の順番ではない。幸せになってくれ。」

 その後、姉弟たちがなだれ込み、久しぶりに家族が揃い、昔話に花が咲く。ビックリしたのは、ヨウスケと美奈香姉さんの旦那様が高校の同級生で知り合いだとわかったこと。

 世の中狭いね。

 両家の顔合わせも無事、終わり、これから結婚式に向けて、本格的にスタートする。

 マスコミ発表は、当然、しばらく伏せられる。こういった話は、どこから横やりが入るかわからないから、招待状を出すまでに周到な準備がいる。

 社内的にも、一部の重役にしか知らせず、一般社員には、まだ秘密にしている。

 もっとも、小夜香も役員秘書(ヨウスケの秘書)となってからは、同期や、一般社員との付き合いは、ほとんど皆無になってしまったけど、それもこれも仕方がない。

 新藤商事ぐらいの大手となると常にマスコミに、社長の動向を押さえられているのだから、社長のスケジュールが社外に漏れることはあってはならないこと。

 そのために役員秘書は、小夜香に限らず、守秘義務を徹底される。秘書は意外にも、労働基準法の適用外で、残業代はつかない。その代わり、秘書手当てがつくので、残業代よりはかなり高給取りになる。

 男子社員の管理職並みの給料になるから、ホームレスOLだった小夜香には、ありがたい。

 一般社員と過度の接触を避けるため、お昼休憩も休憩室や社員食堂は使わず、役員室で、お弁当を広げているのだ。

 まあ、小夜香の場合は、あらかじめヨウスケのスケジュールがわかっているので、社内にいるときは、ヨウスケの分のお弁当も作り、二人で応接セットのソファに座り食べている。

 それに一番、待遇面で変わったことは、女子社員の制服を着ることがなくなったこと。これにより更衣室へ行くこともなくなり、同期やほかの女子社員と顔を合わせる機会がめっきり減ったこと、それもこれも守秘義務のための措置であることには、すぐに気づいた。
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