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男装の麗人
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ある王宮の舞踏会でのこと、数多の貴族が歓談する社交の場で、突如、大声で叫ばれた。
「侯爵令嬢マリーベル、貴様との婚約を今、をもって破棄することを宣言する。」
そう言い放ったのは、公爵家次男のアンドリュー様だった。
マリーベルは、ベルナール将軍の末娘でありながら、幼いころから文武両道の後継ぎとして育てられていた男装の麗人である。今は、近衛騎士団に所属している。
今日は、要人警護の意味合いから、女装(?)というか令嬢の姿で参加しているが、公務中である。マリーベルの令嬢姿は、人目を惹くほどの美形であって、黙って、佇む姿は、どこかの王族の姫様と見まがうほど美しい。庇護欲を駆り立てられ、外国の要人が来たときは、騎士など止めて、自分の側妃に、と望む声が後を絶たないほどである。
そんなマリーベルに対して、大声で婚約破棄を通告したアンドリューに対し、非難のまなざしや声が上がる。
マリーベルは、仕事中だがこれは売られた喧嘩だとの認識があり、一応理由を聞くと。
「我が愛するリリアーヌ嬢ができたからだ。」
「どなたですか?」
「貴様より、愛する女性ができたから、貴様との婚約は破棄すると言っておる!」
マリーベルは、着用していた左手の手袋をアンドリューに投げつけた。
外野は、当然のごとく、「やんや」「やんや」の大歓声が巻き起こった。
「な、なんだとぉ!女の分際で、俺に勝てると思っているのか?」
「尋常に勝負!」
マリーベルは、下半身の巻きスカート状のドレスをはぎ取った。ドレスの下には、スパッツのような足にフィットするズボンを履いていた。それでも、マリーベルの見事な肢体が露になり、外野から、再び嘆息とも言える歓声が起こった。
アンドリューは、渋々、剣を手にした。一太刀、二太刀、三太刀目でついに!アンドリューの心臓に…!
マリーベルは、寸止めした。勝負が決まったからだ。しかし、アンドリューは、剣を手放さない。刺すべきか…?
「そこまでだ!」騎士団長が声をかけてくれる。
ほっとして、剣を収めたマリーベルの背後から、アンドリューの剣が襲う。それを一太刀で騎士団長が切り伏せた。正当防衛です。
アンドリューのカラダから血しぶきが上がっているのに、大歓声は止まらない。
公爵家にアンドリューの遺体を引き取ってもらい、せっかくの舞踏会を血で汚してしまったことの詫びを騎士団長とともに、王族に謝りに行った。
王の間に、二人して恐縮して跪いた。国王陛下が登場。
「此度のこと、天晴であった。勝負がついているにもかかわらず、後ろから相手を刺すなどの行為は、言語道断。貴族として恥ずべき行為である。アンドリューの公爵家には、重い罰を下した。気にするな。大儀であった。」
「……おお!そうであったマリーベルには、褒美を遣わそう。」
国王陛下が目で合図をしたら、違う扉から王太子殿下が登場した。
王太子殿下は、マリーベルの前に片膝をついて、
「侯爵令嬢マリーベル、私の妻になってもらえないだろうか?マリーベルのその美しさ、気品、強さ、そのすべてをわが物にしたい。あなたへ一生の愛を捧げたいのです。」
マリーベルは、騎士団長を一瞥したら、頷いている。
「はい、喜んで一生、お側に仕えさせていただきとう存じます。」
3か月後、強く美しい王太子妃が誕生し、誰も要人を襲うなど不埒なものがいなくなり、平和な時代が続くのでした。
「侯爵令嬢マリーベル、貴様との婚約を今、をもって破棄することを宣言する。」
そう言い放ったのは、公爵家次男のアンドリュー様だった。
マリーベルは、ベルナール将軍の末娘でありながら、幼いころから文武両道の後継ぎとして育てられていた男装の麗人である。今は、近衛騎士団に所属している。
今日は、要人警護の意味合いから、女装(?)というか令嬢の姿で参加しているが、公務中である。マリーベルの令嬢姿は、人目を惹くほどの美形であって、黙って、佇む姿は、どこかの王族の姫様と見まがうほど美しい。庇護欲を駆り立てられ、外国の要人が来たときは、騎士など止めて、自分の側妃に、と望む声が後を絶たないほどである。
そんなマリーベルに対して、大声で婚約破棄を通告したアンドリューに対し、非難のまなざしや声が上がる。
マリーベルは、仕事中だがこれは売られた喧嘩だとの認識があり、一応理由を聞くと。
「我が愛するリリアーヌ嬢ができたからだ。」
「どなたですか?」
「貴様より、愛する女性ができたから、貴様との婚約は破棄すると言っておる!」
マリーベルは、着用していた左手の手袋をアンドリューに投げつけた。
外野は、当然のごとく、「やんや」「やんや」の大歓声が巻き起こった。
「な、なんだとぉ!女の分際で、俺に勝てると思っているのか?」
「尋常に勝負!」
マリーベルは、下半身の巻きスカート状のドレスをはぎ取った。ドレスの下には、スパッツのような足にフィットするズボンを履いていた。それでも、マリーベルの見事な肢体が露になり、外野から、再び嘆息とも言える歓声が起こった。
アンドリューは、渋々、剣を手にした。一太刀、二太刀、三太刀目でついに!アンドリューの心臓に…!
マリーベルは、寸止めした。勝負が決まったからだ。しかし、アンドリューは、剣を手放さない。刺すべきか…?
「そこまでだ!」騎士団長が声をかけてくれる。
ほっとして、剣を収めたマリーベルの背後から、アンドリューの剣が襲う。それを一太刀で騎士団長が切り伏せた。正当防衛です。
アンドリューのカラダから血しぶきが上がっているのに、大歓声は止まらない。
公爵家にアンドリューの遺体を引き取ってもらい、せっかくの舞踏会を血で汚してしまったことの詫びを騎士団長とともに、王族に謝りに行った。
王の間に、二人して恐縮して跪いた。国王陛下が登場。
「此度のこと、天晴であった。勝負がついているにもかかわらず、後ろから相手を刺すなどの行為は、言語道断。貴族として恥ずべき行為である。アンドリューの公爵家には、重い罰を下した。気にするな。大儀であった。」
「……おお!そうであったマリーベルには、褒美を遣わそう。」
国王陛下が目で合図をしたら、違う扉から王太子殿下が登場した。
王太子殿下は、マリーベルの前に片膝をついて、
「侯爵令嬢マリーベル、私の妻になってもらえないだろうか?マリーベルのその美しさ、気品、強さ、そのすべてをわが物にしたい。あなたへ一生の愛を捧げたいのです。」
マリーベルは、騎士団長を一瞥したら、頷いている。
「はい、喜んで一生、お側に仕えさせていただきとう存じます。」
3か月後、強く美しい王太子妃が誕生し、誰も要人を襲うなど不埒なものがいなくなり、平和な時代が続くのでした。
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