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異世界へ

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 私の名前は大森英美里26歳、大森商社に勤めるOLで、結婚間近、お相手は同じ会社に勤める安藤康夫29歳、!私たちは、会社に来てから知り合った。いわゆるオフィスラブである。

 結婚式のためにウエディングプランナーのところへ来ているのだけど、ウエディングドレスでお気に入りがない。あれこれ探しているうちに、どんどん時間が過ぎて、いつの間にか康夫の姿が見えない。

 「え?やすおー、どこ行ったの?」

非常階段の踊り場付近に康夫と同じ背広の袖を見かける。なんだぁ、たばこ休憩か?と思って、非常階段へ近づくと何やら揉めているような声がしている。

 そっと覗いてみると、同じ会社の松本小百合と康夫が、何やら喧嘩しているみたい。

 「いったい、いつ大森さんと別れるのよ!私のお腹の中には、アンタの子供がいるのよ。」

 「わかってるさ。でも英美里は社長の一人娘だ。英美里と結婚して、折を見てくたばらせたら、財産を分捕り、必ず迎えに行く。それまでの辛抱だから、待っててくれ。」

 「うーん💛本当に迎えに来てよ。愛している。康夫。」

 チュッチュとキスをはじめ、小百合の胸を揉み、スカートの中に手を…。もう、見ていられなくなり、その場を離れた。

 康夫はわが家の財産目当てだったんだ。腹が立つ。
 とにかく、婚約破棄よね。その日、結婚式場から腹が立ったので、そのまま帰った。父に相談して、「康夫には、他に女がいる。松本小百合と付き合っているのを見た。」

 「なんだって!?」

 「それに結婚してから、私を手にかけ財産を分捕って、それから松本小百合のお腹の中の子供と3人で暮らすつもりみたいなこと、言ってた。どうしよう、お父さん。」

 「わかった。とにかく2人をリストラする。心配するな。英美里のことは、必ず儂が守る。」

 安藤康夫は、取引先などに、大森商社の次期社長は、自分だと吹聴して歩いていたみたいだった。それを理由に、父は解雇にした。むろん、私との婚約も破棄して、松本小百合の身辺を洗ったら、経理課に在籍している松本は、会社の金を不正に引き出していたことが発覚し、刑事告訴して、懲戒解雇にした。その金額は3億8000万円にのぼり、実刑は免れない額となった。生まれてくる子供は、犯罪者の子供として生まれてくることになる。生まれてから1年間は刑務所暮らしとなる。

 安藤康夫は、松本小百合を刑事告訴したことに根をもち、私にストーカー行為をした。警察に相談した当初は、収まったが、ほとぼりが冷めたころ、またつきまとい始めた。

 半径100メートル以内に近づいてはいけないなんて、嘘っぱちよ。
 横断歩道上で、康夫に捕まって、放してくれない、そこへ「パッパーン!」
 トラックが二人に突っ込んだ。意識が遠のく……。

 気が付けば、ヨーロッパの大聖堂の床に寝転がっていた。康夫とともに……。

 「おおー!成功したようだ。」

 「聖女様だけのつもりが、なんだー?こいつ?」

 「もうこれで、失敗したなら向こう100年は召喚儀式ができないから、成功してよかった。それにしてもおかしな身なりだのぉ。」

 英美里は目が覚めた時、康夫が見えたので「ひっ!」と叫び、後ずさった。
 ヨーロッパのオジサンたちは、それを見逃さなかった。
 「聖女様いかがなされましたか?」

 康夫を指さして、「この男に殺されかけた。」
 ヨーロッパのオジサンは、目配せして、康夫だけをどこかへ引きずっていく。

 それからというものの、英美里は「聖女様」と傳ずかれて、豪華な一室まで与えられ、美しいドレス、豪華な食事、昔ヨーロッパへ旅行した時もこんなんじゃなかったというぐらいの豪勢さである。

 なんでも聖女召喚は今年になり3度目で、1度目は80歳ぐらいのおばあちゃんが呼ばれ、次は56歳の病気もちのおばちゃん、最後は私で、もし、失敗すると100年後まで呼べないらしいんだって。私以外の2人は、こちらの世界に来て、すぐ亡くなられたそうで、お気の毒です。

 ところで、私と一緒に来た康夫がどうなったかって?なんでも罪人として奴隷になり強制労働させられているらしい。今さら助ける気もないから、ほっとく。

 康夫は康夫で、なんで俺が!? 鞭で打たれながら力仕事をしている。
 あの時、英美里を引き留めても引き留めなくても、異世界召喚されたのだろう。俺が巻き込まれたのだ。

 ほかの奴隷の奴らに聞くと、たいてい巻き込まれ者は、聖女様と関係がいい場合は、元の世界に戻してもらえるそうだが、俺はストーカーをしていたので、無理っぽい。小百合と出会わなければ、今頃英美里と幸せになれたのに。不運だ。と思う。

 小百合と出会ったのは、同じ会社ではあったが、部署が違う。あいつは経理課、俺は営業課、社員旅行でたまたま、席が隣り合わせだったことから、親しくなった。しかし、英美里が入社したときは、心臓が撃ち抜かれた思いをした。「なんて、可愛い子なのだろう。」聞けば、社長の一人娘だとか。どうにかして、英美里と仲良くなり結婚までこぎつけたというのに。あの小百合の奴が妊娠したと言ってきて、話がおかしな方向へ行き出した。

 このまま、一生異世界で終わるのか。

 聖女様が国王陛下と婚約したらしい。結婚すれば、恩赦で自由の身になれることもあるらしい。俺は、どうかな?なんせ、英美里を殺そうとしたから、無理だな。もし、恩赦になっても行く宛てがない。元の日本へ戻れないなら、せめて、あいつを見守ろうか。

 その頃、王城では、「なんで!あんなジジイと結婚しなきゃならないの?」

 聖女様が荒れていた。年頃の王子様には、皆、幼い時からの婚約者がいて、愛し合っているからという理由で、王妃様を亡くされた国王陛下しか、独り身がいないということ。

 逃げ出したいわ。あんなハゲデブに抱かれるぐらいなら死んだほうがマシよ。
 あぁ。帰りたい。聖女の力で何とかなるかもしれない。結婚が決まってから、図書室に籠って、帰る方法を探す。

 とりあえず、康夫と面会した。ひどくやつれているのかと思えば、意外と元気そうだった。

 「ねえ、どうにかして日本に帰りたいの。康夫、何か知らない?」

 「巻き込まれた場合は、聖女の手により帰ることができるらしい。」

 「あなた、また私を騙そうとしているのね、期待した私がバカだったわ。」

 「ち、違うよ!できれば、一緒に帰りたいと思ってる。でもこっちで、いい暮らししてんだろ?でも、英美里に酷いことしてしまったから、許されないことをしたから。」

 「何不自由ない暮らしをね。」

 「俺のことは気にするな、一人で帰れよ。」

 「うん。そうするね。じゃ、また。」

 一度も振り返らず、そのまま帰った。でも後味が悪い。もう一度、康夫のところへ戻り、とりあえず、いつも持ち歩いていた水晶のペンダントを渡す。自分の首に掛けていたものを康夫の首に掛けようとしたら、なぜか水晶玉がキラキラと光り出し、気が付くとあの交差点にいた。

 「え?何?今まで、夢を見ていた?」

 「戻ってこれた!ありがとう、英美里、これから自首するよ。」

 そう言って、警察署のほうへ去っていった。

 変な夢、見ちゃった?まあ、いいっか。と帰宅したら、父が待っていて縁談を勧めてきた。

 相手は世界に誇る友清商社の御曹司様だったわ。
 英美里は聖女のドレスを着たまま、お見合いに臨む。意気投合して、そのまま結婚することになり、わが社も友清のグループ会社に組み込まれることになりました。

 やっぱり、聖女の力はすごい!?



スピンオフhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/431903331/517466795
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