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潜在意識

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 王宮のお茶会でのこと

 「公爵令嬢アンスターシア・アボット、貴様との婚約は、今をもって破棄することを宣言する。」

 高らかに宣言されたのは、王太子殿下のブライアンブラッドフォード様

 「なぜでございますか?理由をお聞かせいただきたいのですが。」

 「それは、今朝がた聖女様を召喚できたからで、アンスターシアとは、結婚できなくなったから。早いうちに言っといたほうがいいと思ってね。」

 「それは、おめでとうございます。ブライアン様は聖女様と結婚なさるのが幼き時よりの夢でございましたから、夢がかなわれて本当によろしゅうございますわね。」

 「う、うん。ありがとう。でも愛しているのは、アンスターシアなんだ。だから婚約は破棄しても側にいてほしいのだ。」

 「それはできない相談でございますわよ。第一、聖女様に対して失礼でございましょう。聖女様は異世界から召喚されたわけでございましょうから、何かとご不安があるかと存じます。そんな時に殿下にほかの女性の影がちらついていたら、いかが思われますでしょうか?殿下がきちんと支えて差し上げてくださいませ。」

 「そ、そうだな、わかった。そうしよう。」

 アンスターシアは、急ぎ公爵邸に戻り、聖女様の情報を収集するとともに、この国を出る準備をする。もし、聖女様に子がなせなかった場合、また、側妃として召し上げられることが嫌だからである。

 婚約破棄されて、妃教育が終わっているからと言って、王太子妃の仕事を押し付けられ、子供まで産めというのは、虫が良すぎる。ブライアンはそれぐらいのとこを平気で言ってのける男だからだ。

 召喚された聖女様は、40歳ぐらいで子宮にできものができて、全摘手術を受けた女性であることがわかる。抗がん剤のため、髪の毛がすべて抜け落ちウィッグをかぶり、艶々だったことから若い女性と見間違えて、婚約破棄に至ったというわけである。

 恐れていたことが現実になることがわかり、一刻も早くこの国から脱出しないと、王太子ブライアンの側妃にさせられてしまう。

 馬車に乗せられるだけ荷物を載せて、父が帰ってきてから、隣国へ行くことを告げると、父も一緒に行くという。なんでも聖女様の召喚を成功すると、その代償が大きいらしく下手をすれば、一国を失ってしまう可能性があるとか、王族がもろにその代償をかぶってしまうこともあり、昔、聖女召喚に成功して若く美しい聖女を手に入れたものの、王族に子が産まれず、その王家は潰えてしまった国もあったそうだ。

 今回は、若く美しい聖女様ではないにしても、子がなされないという歴然とした事実があるわけで、そのとばっちりがアボット公爵家に来てはかなわないので、一族として国を出ることにするということで話は決まる。

 家令も執事も、アンスターシアが婚約破棄されて戻ってきたときから、国を捨てる覚悟をしていて、用意は万端に整っている。

 一家、一族総出で馬車を連ね、国境を目指していく。領地の民も王都の民も、不安感からか着の身着のまま逃げ出す者も多い。

 無事、国境を越えることができ、隣国の検問を受けているが、ブラッドフォード国が聖女召喚したという話は、隣国で掴んでいる情報だったため、難民認定として、受け入れてもらえることになる。

 聖女を召喚するということは、それぐらい禁忌事項であり、危険を伴う弊害をもたらすものなのである。

ブラッドフォードからの移民は、一か所に集められることとなり、この地を収める御領主さまから審問が行われることになったのである。

 審問の際に、アンアスターシアが聖女として覚醒してしまったから、さあ大変、大騒ぎになった。人間極限までに追いつめられると、どんな潜在意識が覚醒されるか分かったものではない。

 ブラッドフォードから大量の難民とともに、聖女様が来られたという噂が国中に広まり、ブラッドフォードから、戻ってくるように指示があるも、戻ったら、何が待ち受けているかわからない。

 召喚聖女様との立場がわからないからである。

 難民キャンプ村に、立派な教会をたてていただき、聖女様のお住まいとして、ブラッドフォードの公爵邸に劣るとも勝らないお屋敷も頂戴して、そこで一族は永遠に暮らすことになりました。
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