契約婚から玉の輿婚~前世喪女が朝チュン

青の雀

文字の大きさ
6 / 15

6

しおりを挟む
 後宮の正面玄関に馬車が横付けされたのだ。

 急に視察旅行に同行しろと言う陛下からの命令に、内心嬉しさがこみあげてくる。

 だって、馬車の中はやっと二人きりになれるのですもの。

 初めての旅行、前世で言えば新婚旅行のようなもの?でも、あまりにもはしゃぎ過ぎははしたない。

 陛下の側近から今回の視察の話を聞いたときは、ビックリしたけど嬉しい。

 途中で歓迎レセプションがあるということは、パーティがあるからね。

 独身時代ならいざ知らず、結婚してからなら一人で出席はおかしい。それに結婚式へ参加できなかった諸侯へのお披露目ということかもしれない。

 「妃殿下もご準備早くなさってください。」

 侍女たちにせっつかれるけど、わたくしの準備ってなに?何をすればいいの?皆目見当がつかない!

 ともあれ、あれから大急ぎで準備は行われ、侍女たちは殺気立っている。

 わたくしはあの後、お風呂に入り髪を梳かせてもらっている。

 そして今、陛下と二人きりの馬車の中。嬉しくてはしゃぎ過ぎたせいか、何もおっしゃってくださらない陛下をチラチラ見ている。

 「何か用か?さっきから俺に言いたいことがあるのか?」

 なぜか陛下は不機嫌。

 え?それならなぜ?視察に同行しろと?

 「いつも後宮の中ばかりで、たまに外の空気も吸いたかったので、嬉しいのです。」

 「ああ、そうだろうな。もうじき約束まで3か月だから、はしゃいでいるのか?金貨は約束通り、今日支払ってやる!そのかわり白い結婚にはさせない!この視察旅行で貴様を抱きつくしてやる!」

 「今まで一度もお渡りがなかったのに、今さらこの旅行で!?」

 バトラーは急に黙り込む。一度も俺が後宮へ足を踏み入れていないだと……?ひょっとして、あのニセモノが!?

 「では聞くが、2週間ほど前アイン国の使節団が来たときの夜は風邪を引いて臥せっていたであろう。そして先週もそれが長引いて、まだ治っていなかったな?」

 「は?わたくし生まれてこのかた病気知らずでございまして……?何のことを仰せか、見当がつきませんわ。」

 バーバラは、小首をかしげる。

 やっぱりアイツの仕業か!

 「抱きつくすと言った俺が怖くはないのか?」

 「妻としての務めでございますから、果たしとう存じます。それに陛下とは……前に一度朝までご一緒したでは、ございませんか?初めての殿方とならいざ知らず……。」

 最後まで、言い終わる前にバトラーから唇をふさがれる。

 「んん……んふっ。」

 「夜が楽しみになってきたな。」

 その言葉に、身もだえし顔を赤らめる。前世の記憶があるから、ただ1回だけのセックス。今宵は、もう少し抱いてもらえるのかもしれない。

 馬車の窓から見える景色は単調な田園風景、視察旅行は始まったばかり。

 バトラーは、あのニセモノ王女のせいで怒り狂っていた。新妻を抱くことさえ邪魔していた事実を知らされてだ。

 後宮を解体するか?だいたい父王の代から後宮は機能していなかったというのに。帰ったら王宮の自分の部屋の真横に妻の部屋を作ろう。

 この時、バトラーは3か月後に契約が切れることを失念していた。やり場のない怒りで。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『二流』と言われて婚約破棄されたので、ざまぁしてやります!

志熊みゅう
恋愛
「どうして君は何をやらせても『二流』なんだ!」  皇太子レイモン殿下に、公衆の面前で婚約破棄された侯爵令嬢ソフィ。皇妃の命で地味な装いに徹し、妃教育にすべてを捧げた五年間は、あっさり否定された。それでも、ソフィはくじけない。婚約破棄をきっかけに、学生生活を楽しむと決めた彼女は、一気にイメチェン、大好きだったヴァイオリンを再開し、成績も急上昇!気づけばファンクラブまでできて、学生たちの注目の的に。  そして、音楽を通して親しくなった隣国の留学生・ジョルジュの正体は、なんと……?  『二流』と蔑まれた令嬢が、“恋”と“努力”で見返す爽快逆転ストーリー!

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

拝啓~私に婚約破棄を宣告した公爵様へ~

岡暁舟
恋愛
公爵様に宣言された婚約破棄……。あなたは正気ですか?そうですか。ならば、私も全力で行きましょう。全力で!!!

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

やさしい・悪役令嬢

きぬがやあきら
恋愛
「そのようなところに立っていると、ずぶ濡れになりますわよ」 と、親切に忠告してあげただけだった。 それなのに、ずぶ濡れになったマリアナに”嫌がらせを指示した張本人はオデットだ”と、誤解を受ける。 友人もなく、気の毒な転入生を気にかけただけなのに。 あろうことか、オデットの婚約者ルシアンにまで言いつけられる始末だ。 美貌に、教養、権力、果ては将来の王太子妃の座まで持ち、何不自由なく育った箱入り娘のオデットと、庶民上がりのたくましい子爵令嬢マリアナの、静かな戦いの火蓋が切って落とされた。

【完結】謀られた令嬢は、真実の愛を知る

白雨 音
恋愛
男爵令嬢のミシェルは、十九歳。 伯爵子息ナゼールとの結婚を二月後に控えていたが、落馬し、怪我を負ってしまう。 「怪我が治っても歩く事は難しい」と聞いた伯爵家からは、婚約破棄を言い渡され、 その上、ナゼールが自分の代わりに、親友のエリーゼと結婚すると知り、打ちのめされる。 失意のミシェルに、逃げ場を与えてくれたのは、母の弟、叔父のグエンだった。 グエンの事は幼い頃から実の兄の様に慕っていたが、彼が伯爵を継いでからは疎遠になっていた。 あの頃の様に、戻れたら…、ミシェルは癒しを求め、グエンの館で世話になる事を決めた___  異世界恋愛:短編☆(全13話)  ※魔法要素はありません。 ※叔姪婚の認められた世界です。 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

もしもゲーム通りになってたら?

クラッベ
恋愛
よくある転生もので悪役令嬢はいい子に、ヒロインが逆ハーレム狙いの悪女だったりしますが もし、転生者がヒロインだけで、悪役令嬢がゲーム通りの悪人だったなら? 全てがゲーム通りに進んだとしたら? 果たしてヒロインは幸せになれるのか ※3/15 思いついたのが出来たので、おまけとして追加しました。 ※9/28 また新しく思いつきましたので掲載します。今後も何か思いつきましたら更新しますが、基本的には「完結」とさせていただいてます。9/29も一話更新する予定です。 ※2/8 「パターンその6・おまけ」を更新しました。 ※4/14「パターンその7・おまけ」を更新しました。

悪役令嬢は名女優 〜そんな小芝居で私を断罪できるとでも?〜

本見りん
恋愛
 元女優のこの私は、婚約者の王子の三文芝居に我慢が出来なくてよ!  いきなり始まった婚約破棄劇の真っ最中に蘇った前世の記憶。  『婚約破棄』? 『私がそこの令嬢をいじめた』? ……何を言っているのかしら? そんな三流の小芝居でこの私を陥れようだなんて! 前世名女優と呼ばれたこの私が本物の演技というものを見せて差し上げますわ!  王宮でのパーティーでいきなり『婚約破棄』を言い出した婚約者のファビアン王子に、前世は大女優だった侯爵令嬢セシリアが演技で反撃させていただきます!   『小説家になろう』様にも投稿しています。

処理中です...