【R18】婚約者が変態すぎて困るのですがどうしたらいいでしょうか?

卯月ミント

文字の大きさ
4 / 38

第4話 いじめ犯、手加減せずに見つけよう

しおりを挟む
 ふぅ、とフレデリクがひとつ息をついた。

「さて。なんの話をしていたのだったかな」

「えっと、眼鏡に涙がつくと拭いても跡が残っちゃうよねっていう……」

 まさに今目の前にある涙の跡が気になるゼナである。

「そんなことひとっつも話題になっていませんわね」

「君たちをいじめた犯人をゼナの三つ編みで暗殺するという話だ」

「ひぃぃっ」

 思わず三つ編み日本を胸の前で握りしめるゼナ。凶器にされてしまうというのか? その場合自分は犯人にされてしまうのか……?

「それも違いますしゼナ様を怯えさせないでください」

「ふふふ。怯えるゼナも可愛いな」

「わざとかよ……ほんとしょうもないですわね」

 はぁ、とため息をつくナルティーヌ。その動作はどうにも芝居がかっていて鼻につく。

「いいですかしら、ご両人。ナルがここにきた理由はただ一つでした。ナルをいじめてきた奴に報復するためです。ナルの予想では犯人はゼナ様だったんだけど……違うんだって分かりました。だから真犯人を捜しましょう」

「お、お願いします!」

 ゼナは勢いよく頭を下げた。いじめ犯を探してくれるなんて、しかもなんだか頼もしそうなナルティーヌが。最高ではないか。

「ゼナ様をいじめていた犯人と同じ人かどうかは分かりませんわよ? ていうかゼナ様っていまも現在進行形でいじめられているのですか?」

「い、いえ。そういえば最近はめっきり……」

「うーむ、となると同一犯人がいじめのターゲットをゼナからナルティーヌに変えた、という可能性が考えられるな」

「まあ、その可能性もなくはないですわね。すべては捕まえてから吐かせてやりますけど」

 ボキリ、と指を鳴らして不敵に笑うナルティーヌ。

「今まではゼナ様がいじめ犯だと思って遠慮していたのですけれど……違うとなれば話は早いですわ。真犯人を捕まえて大腿骨の一本でも追って差し上げましょう」

「え、え……」

 大腿骨の一本て折られたらかなりの重傷よね? なんて思ってしまうゼナだった。だがそれよりも、

「私に遠慮してくれていたのですか、ナルティーヌさんは……」

「ええ。いくらいじめてきてるとはいえ、公爵家のご令嬢に手を出したらこっちが悪者になっちゃいますからね。だからできるだけ穏便に婚約破棄ですましたろって思ってたんです」

「うっ。そうだったのですか……」

 ゼナは思わず感激してしまった。

(ナルティーヌさん、優しいところがあるのね……これって優しいのよね?)

 確かに、大腿骨の一本を折られるよりは婚約破棄された方が身体的外傷は少ない。
 婚約破棄か、足を折られるか。
 どちらがマシとはなかなか断定できないが、大腿骨よりは婚約破棄というのがこの男爵令嬢ナルティーヌなりの気遣いだったのだ。

「だけど違うのだと分かった以上、もう我慢しなくてもいいわけです。徹底的にヤリましょう。いじめ犯は首を……いえ大腿骨を洗って待っているといいですわ」

 足の骨を洗え。なんと頼もしい言葉だろうか。

「ううう。お世話になります、ナルティーヌさん」

 もう一度、深く礼をするゼナ。

「それで、どうやって犯人捜すつもりなんだい?」

 フレデリクが問うと、ナルティーヌはニヤリと笑った。

「簡単なことです。こんど私のこと階段から落とそうとしたら逆に落としてやればいい。それだけのことですわよ」

 こうして、ゼナとフレデリクに仲間が加わったのであった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...