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第35話 白羽の思惑:トゥルッセ視点
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トゥルッセはゼナが完全に寝てしまうまで待ち、それから静かに眼鏡を抜き取った。
抜き取った眼鏡をしげしげと見つめてみる。だが、魔力のたぐいは入っていなかった。
この瓶底眼鏡、単なるファッショングラスらしい。
(なんだ、期待外れだな)
トゥルッセはそれを彼女の脇に置く。
期待外れ……といえば、今朝の実験もそうだった。
ゼナほどの【魅了】持ちなら、抱きついただけで能力が発動するかと思ったのだが……。
(だが実験は失敗だった。直接触れただけでは魅了は発動されなかった……。やはり【眼】で見るのが鍵となる……しかしそれも失敗した)
トゥルッセは昼休みのことを思い出す。
偶然だったが、自分が被検体になってしまったのだった。
ゼナに新聞部のことを知らせにいったとき……、彼女は泣いてしまい、そこで涙をぬぐうために眼鏡をとったのだ。
あやうく自分に魅了がかかるかと思ったが――。
(だが、ボクは平気だった)
トゥルッセは確かにゼナの【魅了の裸眼】を見た……しかし、なんともない。
慌てて眼を反らしはしたが、それでも仮説が正しければトゥルッセにも効いていないとおかしいのだ。
魅了が効かなくてほっとするような残念なような、複雑な気持ちである。
(他の鍵が必要なのか? ゼナの魅了を発動させる、【鍵】……)
――そうだ。
トゥルッセはポケットから白い羽を取り出した。
周りに人がいないか確認してからそっと呪文を唱える。すると羽は光り輝き、そして……。
ゼナの周りをくるくると回ったかと思うと、そのままゼナの胸元へと吸い込まれていった。
「んっ……」
とゼナは小さな吐息をあげるが、起きない。どうやらうまくいったようだ。
(さぁ、ゼナ。ボクからのプレゼントだよ。気に入ってくれるといいな、君が好きそうなとびっきり甘い夢だよ。眼を覚ましたとき君がどうなるのか……ボクに観察させておくれよ……)
くすっ。
笑うと、トゥルッセは椅子から立ち上がった。
さて、次は。
あの厄介な魔術教師……チェナートを呼んでこよう。
あいつを被検体に使ったのは間違いだった、と今さらながらに後悔する。
女子生徒に人気があるからという、そのただ一点のみの人選だった。だが実験に使うには、チェナートは知識がありすぎた。
だが今さら変えるわけにもいかない。ハプニングでもないかぎりは、条件は一定であるべきなのだ。
抜き取った眼鏡をしげしげと見つめてみる。だが、魔力のたぐいは入っていなかった。
この瓶底眼鏡、単なるファッショングラスらしい。
(なんだ、期待外れだな)
トゥルッセはそれを彼女の脇に置く。
期待外れ……といえば、今朝の実験もそうだった。
ゼナほどの【魅了】持ちなら、抱きついただけで能力が発動するかと思ったのだが……。
(だが実験は失敗だった。直接触れただけでは魅了は発動されなかった……。やはり【眼】で見るのが鍵となる……しかしそれも失敗した)
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あやうく自分に魅了がかかるかと思ったが――。
(だが、ボクは平気だった)
トゥルッセは確かにゼナの【魅了の裸眼】を見た……しかし、なんともない。
慌てて眼を反らしはしたが、それでも仮説が正しければトゥルッセにも効いていないとおかしいのだ。
魅了が効かなくてほっとするような残念なような、複雑な気持ちである。
(他の鍵が必要なのか? ゼナの魅了を発動させる、【鍵】……)
――そうだ。
トゥルッセはポケットから白い羽を取り出した。
周りに人がいないか確認してからそっと呪文を唱える。すると羽は光り輝き、そして……。
ゼナの周りをくるくると回ったかと思うと、そのままゼナの胸元へと吸い込まれていった。
「んっ……」
とゼナは小さな吐息をあげるが、起きない。どうやらうまくいったようだ。
(さぁ、ゼナ。ボクからのプレゼントだよ。気に入ってくれるといいな、君が好きそうなとびっきり甘い夢だよ。眼を覚ましたとき君がどうなるのか……ボクに観察させておくれよ……)
くすっ。
笑うと、トゥルッセは椅子から立ち上がった。
さて、次は。
あの厄介な魔術教師……チェナートを呼んでこよう。
あいつを被検体に使ったのは間違いだった、と今さらながらに後悔する。
女子生徒に人気があるからという、そのただ一点のみの人選だった。だが実験に使うには、チェナートは知識がありすぎた。
だが今さら変えるわけにもいかない。ハプニングでもないかぎりは、条件は一定であるべきなのだ。
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