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満月の夜に

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宿に帰り、ルセアちゃんとご飯を食べていた辺りから不調を感じる。
いや、不調というよりも、強い衝動が渦巻いているようなそんな気がする……。
ヤりたい事が出来なかった為の欲求不満故のものと思いたかった。
でも、お風呂に入っても衝動は治まらず、むしろより強くなっている気がする。
お風呂上がりのルセアちゃんを見た途端、ドクンと心臓が強く脈打ち、一瞬我を忘れそうになった。

あ、そうか……これ、吸血衝動だ……。
でも、なんでこんな急に……今までなんともなかったのに……。
ダメだ……このままでいたら、ルセアちゃんを、襲ってしまう……。

「レン?  どうしたの?  顔色悪いよ?」
「ごめん……ルセアちゃん……今、近寄らないで……」
「ボク、何か悪いことした?」
「そんなんじゃ……ないから……ただ、このままで、いると……ルセアちゃんの……血を吸っちゃいそう……だから……」
「そういうこと……いいよ。吸っても」
「そんなの……だめ……だよ……。自分を、抑えられる……自信が……ないんだ……下手したら……死んじゃうんだよ……」
「レンなら止めてくれるって信じてるから、心配してないよ……ね、吸って」

ルセアちゃんにうなじを魅せられて、それがすごく美味しそうに見えて……もう無理だった。
ルセアちゃんに抱きついて、そのまま白くて綺麗な首筋へと牙を突き立てる。
そしてそこから血を吸い上げると、得もいわれぬ幸福感で満たされていくのを感じる。

「んっ、あっ、はぁん♡  なに、これ……あっ、すごい、気持ちいい……♡」

何故かルセアちゃんが喘いでいるが、そんなのが気にならないくらいルセアちゃんの血の味に夢中になっている。
初めて飲む血は不思議と嫌悪感はなく、むしろ美味しいとさえ感じてもっと、もっとと吸い上げていく。
どれくらいそうしていたのかは分からないが、腕の中のルセアちゃんがグッタリしている。
というよりも蕩けている。
でも顔色も悪くないし全然余裕そう。

よくよく考えてみれば死ぬほど飲むってそれどれだけの量になるんだって話。
喉が渇いていたとしても300、400mlも飲めばお腹いっぱいになるもんだ。
そんで献血でそんくらいの血を提供とかもあったと思うから、よっぽどの事がない限り死ぬ事はないはず。
まあ、毎日それだけの量を貰ってたら血が増える前に無くなって死んじゃうだろうけど。

とりあえず喉の渇きは無くなったけど、代わりにこっちはどうしようかね……?
腕の中で蕩けているルセアちゃんのちんこがビンビンに勃ってるんだよね。
それに、俺自身もなんていうか……こう、我慢出来そうにないというか……いいかな?
いいよね?
ルセアちゃん(分身)もこんなに辛そうだし……。

「んっ……ああああああああんっ♡」

ルセアちゃんの大きなそれを自ら胎内に埋めていく。
中は押し拡げられ、膜はあっさりと引き裂かれるが、それらは全て快楽となり全身を駆け巡る。
しかし、満たされない。
まるで底に穴の空いたコップに水を注ぐが如く、快楽という名の水を取り込もうとすぐに枯渇するような、不思議な感覚。
もっと、気持ち良くなりたい。
こんなんじゃまだまだ足りない。

「レン……?」
「先に謝っておくね。ごめん、ルセアちゃん」
「レン?  んあっ、やぁっ、そんな、いきなり、激しすぎ……んんっ♡」

俺の下で鳴きながら快楽に耐えているルセアちゃんだけど、それでも早漏さんなルセアちゃんではその時間はほんのわずかしかなく、あっという間に決壊し、中へと精を吐き出していく。
でもまだ足りない。
もっと、欲しい……。

「あっ、はぁんっ♡  んっ、んっ、んっ、あっ、あっ、やっ、はっ、あぁんっ♡  んあああっ、はっ、あっ、あっ、んっ、んんっ♡」
「やぁっ、レン……は、激しっ……んんっ、あああああんっ♡  まっ、んぁっ、はぁっ、やぁんっ♡」

騎乗位で腰を打ち付けていく。
何度も何度も、中に出されようと構わずに腰を打ち付けて俺も果てる。
でも俺の腰は止まらない。
自分の身体の筈なのに、全く制御が効かず本能に動かされるかのようにルセアちゃんを貪る。
熱に浮かされたように、ふわふわとした不思議な気分。
夢の中のような、現実味がない。
気持ちいいのに、もどかしくて……。

「レン……やぁっ、ちょっと、待って……ひぅぅぅぅんっ♡」
「足りない……まだ、全然足りない……」
「レン!」

ーーパンッ!

「いったぁ~!  る、ルセアちゃん?  何で叩くの?」
「レン、目が覚めた?」
「え?  俺は起きてたよ?」
「そうは見えなかった。何かに取り憑かれているようだった」
「取り憑かれるって、何に?」
「そこまでは分からない。でも、レンが普通じゃないのは分かった」

確かに今までとは違って自分の意思の筈なのにどこか他人事のように感じていたし、何よりえっちの感覚が不鮮明な気がした。
何かに憑かれていたのかどうかは分からないけど、それでも自然な状態じゃなかったというのは指摘されて考え直してみた今なら分かる。
一体なぜ?
原因として考えられるのはさっきの吸血衝動。
だけどその吸血衝動も初めての事で自分でも驚いたくらいだ。
この世界で生きてきてひと月近く経つけどそんなのは初めてで……ひと月?
あれ?
そういえば前世の世界では妖怪とかは満月の夜に力を増すとかそういう話があった気がする。
もしかしてそれはこの世界でも同じなのではないか?
そう思い外を慎重に見る。
漆黒の夜空にあって、しかしその存在はしっかりと主張するのは煌々と輝く満月がそこにはあった。

「ねぇ、ルセアちゃん……吸血鬼ってさ、満月の夜になると力が増したりするのかな?」
「そういう話は、確かに聞いた事はある」
「そっか……ごめん、ルセアちゃん。俺、吸血鬼の血に乗せられて、操られて、ルセアちゃんに酷いことして……謝って許されることじゃないよね?  こんなの、嫌だよね?  怖いよね?  こんな俺に、化け物に側にいて欲しくないよね……。俺、ルセアちゃんを傷つけたくないもん……だから、俺……」
「レ~ン。大丈夫だよ。ボクはレンの事を怖いだなんて思わないし、側にいて欲しいって今でもそう思ってるよ。レンは確かに規格外だし性欲怪獣だけど、化け物なんかじゃないよ。優しくて、能天気で、かっこよくて、可愛くて、ボクの大好きな人。レンがボクと一緒にいたくないって言ったって、追いかけて絶対一緒にいてあげる。だから、自分を怖がる必要なんてないよ」
「ルセアちゃん……うん。俺も、ルセアちゃんと、ずっと一緒にいる」

ぎゅっと抱きしめて、耳元で囁くように言ってくれたルセアちゃんの言葉に、俺は恥ずかしげもなく泣いて、そして抱きしめ返す。
ああ、今、俺の渇きは満たされたんだ。
満たされた事が分かると急激に眠気が襲ってきて、そのままルセアちゃんの腕の中で眠りについた。

「おやすみ、ボクの大切な人」

まどろみの中で、そんな声が聞こえた気がした。
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