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こじらせる二人

こじらせ、ここに極まる

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 ──これってやっぱり私が届けなきゃいけないのかな??

 その日、朝出所してきた舞花は自分の執務机に置かれたものを見て項垂れた。机の上には回復薬の瓶の箱詰めが置いてある。明らかに北方軍に届けてこいと言うことなのだが、少し前にあんなことがあったのだからガングニールズ将軍に顔を会わせ辛いのだ。

 ──行きたくないけど……行くか。

 顔を会わせ辛いからと言っても先送りしては益々会いづらくなる。舞花は重い腰を持ち上げて立ち上がった。

 それに、先日元の世界に行ったときにお土産のマシュマロも買ってきた。
 輸入品が多く揃うスーパーで見つけた一粒が大きなサイズのマシュマロと、コンビニで見つけた果汁が混ぜ込んであるマシュマロだ。買うか迷ったが、一応約束したし、と思い直して購入した。
 舞花は鞄に入れっぱなしになっていたその二つの袋を回復薬の箱の上に乗せると、よいしょとそれを持ち上げようと手を掛けた。

 腕に付いた魔法の腕輪が瓶と当たってカランと鳴る。

 舞花はいったん持ち上げるのをやめて箱から手を離すと、腕に付けている腕輪を見た。

「なんか最近緩んだかな?」

 腕に光るのはアナスタシアに貰って嵌めた、ガングニールズ将軍のところに障害無くいける魔法の腕輪。嵌めた当初はまるで測ったかのように舞花の腕にぴったりとフィットしていたが、いまは少し隙間が開いている。それでもまだ抜けるほどではない。

「よし、行くか!」

 舞花はしばらく腕輪を弄っていたが、今度こそ回復薬の箱を持ち上げると北方軍へと向かったのだった。

 ♢♢♢

「こんにちは、マイカ」
「あ、エルクさん。こんにちは」

 北方軍の施設に向かうと、舞花は廊下を歩いているエルクに出会った。エルクは舞花が抱える回復薬の箱を見ると、「持つよ」と申し出てくれた。

「これって今日から行く遠征訓練用だよね? 昨日、まだ来ないってスデリファン副将軍が心配してた」
「今日から遠征訓練なんですか?」

 今日から遠征訓練だとは知らなかった。舞花は届けるのを先送りにしなくてよかったと胸をなで下ろした。

「うん。もうすぐ出発。ノンシャは行くみたいだよ?」

 そう言えば、遠征訓練への魔法治癒師の派遣の要請書が来ていた気がする。舞花は新米なので対象から外れたようだ。

「遠征訓練頑張ってくださいね。あと、ガングニールズ将軍にこれ届けてもらえませんか?」
「え? マイカが渡してよ。なんか将軍、ここ数日悩み事でもあるのかピリピリしてるんだよね」

 ついでに届ける大役を押し付けようとしたが敢えなく失敗した。エルクはガングニールズ将軍の様子を思い浮かべたのか、ちょっと苦笑いをしている。

 ──ピリピリしている? 元々怖そうなあの人が??

 それは想像しただけでも恐ろしい。何かあったのかな、と舞花は考えるが、あの日以来顔を合わせていないのだから理由を知るよしもない。

「それって、私が届けに行って大丈夫ですかね?」
「え? 大丈夫だって。副将軍は最近マイカが来ないからじゃ無いかって言ってたよ。ほら、将軍ってマイカと丸いお菓子を食べると機嫌良くなるからさ」
「あぁ、(マシュマロが)好きですものね」
「うん。(マイカが)好きみたい」

 エルクにニコッと笑いかけられて、舞花も思わず笑みを漏らす。将軍の執務室にはすぐに到着してしまった。

 ちょっと緊張したけれど、舞花はトントンっとノックしてからそっと扉を開けた。扉を開けた先の執務机に向かっていたガングニールズ将軍は舞花の姿を見つけて目を見開いた。
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