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野良猫(珍)捕獲劇
善はいそ急がばまわ善は急げ
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「いやちょっと無理があるんじゃ……」
「大丈夫だ……去年の体育祭で使った巨大なトランポリンが、あるはずだ……」
巨大なトランポリンを使う体育祭の競技とはなんだろう。今年入学してきた新兎は理解することができなかった。
中々に気になるが、今はそれどころではない。
白虎の発言が本当だとしたら、トランポリンは体育館脇の倉庫にあるはずだ。
倉庫にある物品を借りるには、借りる人の氏名と用途を書いた希望書を提出しなければいけない。
そのようなものを生徒会が出す場合、希望書を書いて提出するのは……。
(俺じゃん!?)
そう、お察しの通り生徒会庶務こと朝比奈新兎である。
用途の欄に「校庭に置いて二階まで跳ぶ」なんて書いて、教師陣にドン引かれるのは確定だ。
変人扱いされるのは御免だ。何としても止めなくては。
白虎のトランポリン案は、新兎にしか聞かされていない。
面白がって協力しそうな朱雀と、まともな検討もせずに協力しそうなしづきの耳に入ってしまっては、止めることはほぼ不可能だ。
今ここで新兎が、白虎にこの計画を断念させなければ。この調子だと二人に話すのも時間の問題。
だが、幸い二人は「猫じゃらしを取りに行く」やら「ヘリコプターを手配する」やら「一階を取り壊して二階を一階にする」やら話しており、こちらに興味は向いていない。
いや、こちらもこちらで止めなければいけなさそうだが、実現は難しそうなので後回しでいいだろう。
「会長……さすがにやめときましょう」
「む……良い案だと思ったのだが」
「どこがだよ!」と叫びそうになるのを堪え、あくまで穏やかな笑顔を保ちつつ提案する。
「ほら、職員室で合鍵を貰うとか……」
自分で口にしながら良い案だと思った。
(職員室で合鍵を貰う……いいじゃん。それでいこう)
そうと決まれば早速職員室へ行こうではないか。善は急げである。
「新兎くんどこいくの~?」
新兎が動き出したことに気づいた朱雀が、不思議そうに尋ねる。
「あ、えと……職員室に──」
「トランポリンだ……」
新兎は凍りつく。
今白虎は何と言っただろうか。
しっかり「トランポリン」と言っちゃってた気がする。お願いだから気のせいであってほしい。
「トランポリン~? 何それ何それ!」
気のせいじゃなかった。どうしよう。やっぱり急がば回れのほうだった。
「えっと、違くて……」
「校庭に、トランポリンを置くんだ……」
「何それおもしろ~い♡」
白虎は少し誇らしげに朱雀に話す。
「いや、先輩! 急がば回れです。ここは慎重に──」
──ガシャン!
ンニャアアア゛
ドサッ
(おそらく)花瓶が割れた音と、(おそらく)佐藤太郎(仮)の鳴き声と、(おそらく)書類の束が落ちる音が鳴り響く。
「「「「………………」」」」
一同がたっぷり沈黙したあと、白虎がぼそりと呟く。
「……善は、急げ…………」
「大丈夫だ……去年の体育祭で使った巨大なトランポリンが、あるはずだ……」
巨大なトランポリンを使う体育祭の競技とはなんだろう。今年入学してきた新兎は理解することができなかった。
中々に気になるが、今はそれどころではない。
白虎の発言が本当だとしたら、トランポリンは体育館脇の倉庫にあるはずだ。
倉庫にある物品を借りるには、借りる人の氏名と用途を書いた希望書を提出しなければいけない。
そのようなものを生徒会が出す場合、希望書を書いて提出するのは……。
(俺じゃん!?)
そう、お察しの通り生徒会庶務こと朝比奈新兎である。
用途の欄に「校庭に置いて二階まで跳ぶ」なんて書いて、教師陣にドン引かれるのは確定だ。
変人扱いされるのは御免だ。何としても止めなくては。
白虎のトランポリン案は、新兎にしか聞かされていない。
面白がって協力しそうな朱雀と、まともな検討もせずに協力しそうなしづきの耳に入ってしまっては、止めることはほぼ不可能だ。
今ここで新兎が、白虎にこの計画を断念させなければ。この調子だと二人に話すのも時間の問題。
だが、幸い二人は「猫じゃらしを取りに行く」やら「ヘリコプターを手配する」やら「一階を取り壊して二階を一階にする」やら話しており、こちらに興味は向いていない。
いや、こちらもこちらで止めなければいけなさそうだが、実現は難しそうなので後回しでいいだろう。
「会長……さすがにやめときましょう」
「む……良い案だと思ったのだが」
「どこがだよ!」と叫びそうになるのを堪え、あくまで穏やかな笑顔を保ちつつ提案する。
「ほら、職員室で合鍵を貰うとか……」
自分で口にしながら良い案だと思った。
(職員室で合鍵を貰う……いいじゃん。それでいこう)
そうと決まれば早速職員室へ行こうではないか。善は急げである。
「新兎くんどこいくの~?」
新兎が動き出したことに気づいた朱雀が、不思議そうに尋ねる。
「あ、えと……職員室に──」
「トランポリンだ……」
新兎は凍りつく。
今白虎は何と言っただろうか。
しっかり「トランポリン」と言っちゃってた気がする。お願いだから気のせいであってほしい。
「トランポリン~? 何それ何それ!」
気のせいじゃなかった。どうしよう。やっぱり急がば回れのほうだった。
「えっと、違くて……」
「校庭に、トランポリンを置くんだ……」
「何それおもしろ~い♡」
白虎は少し誇らしげに朱雀に話す。
「いや、先輩! 急がば回れです。ここは慎重に──」
──ガシャン!
ンニャアアア゛
ドサッ
(おそらく)花瓶が割れた音と、(おそらく)佐藤太郎(仮)の鳴き声と、(おそらく)書類の束が落ちる音が鳴り響く。
「「「「………………」」」」
一同がたっぷり沈黙したあと、白虎がぼそりと呟く。
「……善は、急げ…………」
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