【二日に一度更新】とある学校の珍事件簿〜奇人:常人=3:1〜

華凛

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ラブレター回収(珍)戦線

高速目泳ぎ庶務、事なきを得る

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新兎は、普通教室棟の二階──自分のクラスの教室がある階でラブレターを捜索していた。

一番生徒がいるであろう場所を押し付けられた新兎は、周りをキョロキョロ見回して慎重に歩いていた。それは不審者の動きそのものであった。

(あ……!)

A4サイズの紙が廊下に数枚落ちている。
すぐ横の窓は開いており、ラブレターと見て間違いないだろう。

新兎は廊下を全力疾走し、紙が落ちている場所に駆け寄った。

「いち、に、さん……四枚かぁ」

五百枚中の四枚を握りしめ、まだまだ道のりは長いなぁと肩を落とした。

そのまま他人の目をはばかるように柱の影まで走り、せわしなく目を動かす。

「あ、なんだこれ」

新兎の背後からクラスメイトの声がした。
新兎は素早く振り返り、目を見開いた。
クラスメイトが見下ろす先には数十枚の紙が廊下の長い距離にわたって広がっている。
光の如く駆け寄り、紙束とクラスメイトの間に立ち塞がる。

「あああこれは! これは、その……」
「? 朝比奈、これ知ってんのか?」

訝しむクラスメイトに、高速で目を泳がせながら言い訳をしようとする。

そのちょっとした騒ぎで、登校してきた数人が群がってくる。
新兎は可能な限り速くラブレターを回収したが、そのうちの一枚が一人の手に渡ってしまった。

「あ、ちょっと、見ないで!」

新兎の悲鳴じみた制止もむなしく、紙をペラリと裏返した。

「って、朝比奈!?」

そのクラスメイトの手にある紙はラブレターだ。
どんな勘違いをされてしまうのだろうか。
俺の学校生活、二年を残して終了……と悲しいことを考えていると、クラスメイトが声を上げた。

「──お前好きな子いるのかよ! にしてもラブレター書くなんて健気だなー」

「……え?」

思っていた勘違いと違った。
しばらくポカンとしていた新兎だが、慌てて思考を巡らせる。
報告書と一時の恥を天秤にかける。答えはすぐに出た。

「──そ、そうなんだよ! そう、好きな子! 好きな子いるんだよ!」

あまりにも不自然すぎる芝居だったが、クラスメイトはニヤニヤと笑って新兎の肩をポンと叩く。

「なんでこんなにあるのかは知らんけど……応援してるぞ、朝比奈」
「う、うん……」

新兎は頬を引きつらせて笑う。
しばらく無理矢理に笑っていると、大事なことを思い出した。

「あ、じゃあこれは秘密で! 特に先生とかね!」
「先生? ああわかった」

なぜ先生? と呟いて去っていくクラスメイトの背中に、新兎は心の中でガッツポーズを決めた。
そしていくつか上履きの跡が付いたラブレターを拾い上げ、深い深いため息を吐いた。

「はぁ…………これで二十五枚か」

先が思いやられるにも程がある。
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