26 / 43
ラブレター回収(珍)戦線
高速目泳ぎ庶務、事なきを得る
しおりを挟む
新兎は、普通教室棟の二階──自分のクラスの教室がある階でラブレターを捜索していた。
一番生徒がいるであろう場所を押し付けられた新兎は、周りをキョロキョロ見回して慎重に歩いていた。それは不審者の動きそのものであった。
(あ……!)
A4サイズの紙が廊下に数枚落ちている。
すぐ横の窓は開いており、ラブレターと見て間違いないだろう。
新兎は廊下を全力疾走し、紙が落ちている場所に駆け寄った。
「いち、に、さん……四枚かぁ」
五百枚中の四枚を握りしめ、まだまだ道のりは長いなぁと肩を落とした。
そのまま他人の目をはばかるように柱の影まで走り、せわしなく目を動かす。
「あ、なんだこれ」
新兎の背後からクラスメイトの声がした。
新兎は素早く振り返り、目を見開いた。
クラスメイトが見下ろす先には数十枚の紙が廊下の長い距離にわたって広がっている。
光の如く駆け寄り、紙束とクラスメイトの間に立ち塞がる。
「あああこれは! これは、その……」
「? 朝比奈、これ知ってんのか?」
訝しむクラスメイトに、高速で目を泳がせながら言い訳をしようとする。
そのちょっとした騒ぎで、登校してきた数人が群がってくる。
新兎は可能な限り速くラブレターを回収したが、そのうちの一枚が一人の手に渡ってしまった。
「あ、ちょっと、見ないで!」
新兎の悲鳴じみた制止もむなしく、紙をペラリと裏返した。
「って、朝比奈!?」
そのクラスメイトの手にある紙はラブレターだ。
どんな勘違いをされてしまうのだろうか。
俺の学校生活、二年を残して終了……と悲しいことを考えていると、クラスメイトが声を上げた。
「──お前好きな子いるのかよ! にしてもラブレター書くなんて健気だなー」
「……え?」
思っていた勘違いと違った。
しばらくポカンとしていた新兎だが、慌てて思考を巡らせる。
報告書と一時の恥を天秤にかける。答えはすぐに出た。
「──そ、そうなんだよ! そう、好きな子! 好きな子いるんだよ!」
あまりにも不自然すぎる芝居だったが、クラスメイトはニヤニヤと笑って新兎の肩をポンと叩く。
「なんでこんなにあるのかは知らんけど……応援してるぞ、朝比奈」
「う、うん……」
新兎は頬を引きつらせて笑う。
しばらく無理矢理に笑っていると、大事なことを思い出した。
「あ、じゃあこれは秘密で! 特に先生とかね!」
「先生? ああわかった」
なぜ先生? と呟いて去っていくクラスメイトの背中に、新兎は心の中でガッツポーズを決めた。
そしていくつか上履きの跡が付いたラブレターを拾い上げ、深い深いため息を吐いた。
「はぁ…………これで二十五枚か」
先が思いやられるにも程がある。
一番生徒がいるであろう場所を押し付けられた新兎は、周りをキョロキョロ見回して慎重に歩いていた。それは不審者の動きそのものであった。
(あ……!)
A4サイズの紙が廊下に数枚落ちている。
すぐ横の窓は開いており、ラブレターと見て間違いないだろう。
新兎は廊下を全力疾走し、紙が落ちている場所に駆け寄った。
「いち、に、さん……四枚かぁ」
五百枚中の四枚を握りしめ、まだまだ道のりは長いなぁと肩を落とした。
そのまま他人の目をはばかるように柱の影まで走り、せわしなく目を動かす。
「あ、なんだこれ」
新兎の背後からクラスメイトの声がした。
新兎は素早く振り返り、目を見開いた。
クラスメイトが見下ろす先には数十枚の紙が廊下の長い距離にわたって広がっている。
光の如く駆け寄り、紙束とクラスメイトの間に立ち塞がる。
「あああこれは! これは、その……」
「? 朝比奈、これ知ってんのか?」
訝しむクラスメイトに、高速で目を泳がせながら言い訳をしようとする。
そのちょっとした騒ぎで、登校してきた数人が群がってくる。
新兎は可能な限り速くラブレターを回収したが、そのうちの一枚が一人の手に渡ってしまった。
「あ、ちょっと、見ないで!」
新兎の悲鳴じみた制止もむなしく、紙をペラリと裏返した。
「って、朝比奈!?」
そのクラスメイトの手にある紙はラブレターだ。
どんな勘違いをされてしまうのだろうか。
俺の学校生活、二年を残して終了……と悲しいことを考えていると、クラスメイトが声を上げた。
「──お前好きな子いるのかよ! にしてもラブレター書くなんて健気だなー」
「……え?」
思っていた勘違いと違った。
しばらくポカンとしていた新兎だが、慌てて思考を巡らせる。
報告書と一時の恥を天秤にかける。答えはすぐに出た。
「──そ、そうなんだよ! そう、好きな子! 好きな子いるんだよ!」
あまりにも不自然すぎる芝居だったが、クラスメイトはニヤニヤと笑って新兎の肩をポンと叩く。
「なんでこんなにあるのかは知らんけど……応援してるぞ、朝比奈」
「う、うん……」
新兎は頬を引きつらせて笑う。
しばらく無理矢理に笑っていると、大事なことを思い出した。
「あ、じゃあこれは秘密で! 特に先生とかね!」
「先生? ああわかった」
なぜ先生? と呟いて去っていくクラスメイトの背中に、新兎は心の中でガッツポーズを決めた。
そしていくつか上履きの跡が付いたラブレターを拾い上げ、深い深いため息を吐いた。
「はぁ…………これで二十五枚か」
先が思いやられるにも程がある。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ
みずがめ
ライト文芸
俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。
そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。
渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。
桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。
俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。
……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。
これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる