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ラブレター回収(珍)戦線
知らないことだらけの庶務狂、廊下爆走
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恋は第一理科室でラブレターの捜索をしていた。
第一理科室は臨時生徒会室の真下にあり、かつ窓が開いているのを登校中に見たので、ラブレターが飛んできている可能性があると思ったのだ。
「あった」
そこには窓の方向から舞い込んだと思われる紙が十枚ほどあった。
恋がラブレターを回収して立ち上がると、校内放送が響いた。
『我が校で飼っているウサギのぴょんちゃんが、ウサギ小屋から脱走しました。見つけ次第、保護するように』
「ウサギ……」
どこかの誰かを彷彿とさせるような「ウサギ」という単語に、スピーカーの方を振り向く。
『目撃者の情報によると、校庭へ走るところを目撃したそうです』
恋はふと窓越しに校庭を見るが、ぴょんちゃんとやらの姿は見受けられない。
ウサギが逃げたのも大変だろうが、ラブレターの回収を優先させたほうがいいと判断する。
机の下にもラブレターはないか、と椅子をどけて確認する。
机の下に入り込んでいた数枚のラブレターを回収してしばらくすると、誰かが中庭を走っている足音が聞こえた。
こちらに向かってきたら思わずたじろぎそうな速くて大きな足音は、どんどん校庭の方向へと向かっている。
(部活か何かか?)
恋は一瞬不思議そうに首を傾げるが、「部活か」と独り合点してラブレターの捜索を再開する。
「──えええぇ!?」
突如、窓の外から大きな声が聞こえた。女子生徒の声だ。
何事かとさっと立ち上がるが、窓から二メートルほど離れている恋には何も見えない。
それもそのはず、悲鳴の主──しづきはぴょんちゃんを全力で回避して、低木にほぼ全身を突っ込んでいるからだ。
恋はいぶかしげに眉をひそめる。
(部活か何かか?)
彼は知らない。高等部には低木に突っ込む部活がないことを。
すると、不可解な現象に首をひねっている恋の耳に大好きな先輩の声が入ってきた。
「びっくりしたよな~」
「ああ、さっきの朝比奈か」
どうやら廊下に二人の生徒がいるらしい。
恋は無意識に廊下へと耳を傾け、一切の物音を殺した。
「──まさか朝比奈に好きな女子がいるなんてな」
恋は、石のように硬直した。
「アサヒナニスキナジョシガイル」……何度言葉の意味を咀嚼しても脳が理解を拒む。
虚無感に襲われる彼は知らない。
それはラブレター大量誤送による誤解だということを。
事実を知る由もない彼はパチンと瞬きを一つ。
「……は?」
やがて喉から絞り出されたのは低い声。
──僕のものなのに。
心が黒い闇に支配され、恋は理科室を飛び出す。
全国共通の校則を堂々と破り、彼は廊下を爆走する。
その手には、リトマス試験紙と駒込ピペットが握られていた──。
第一理科室は臨時生徒会室の真下にあり、かつ窓が開いているのを登校中に見たので、ラブレターが飛んできている可能性があると思ったのだ。
「あった」
そこには窓の方向から舞い込んだと思われる紙が十枚ほどあった。
恋がラブレターを回収して立ち上がると、校内放送が響いた。
『我が校で飼っているウサギのぴょんちゃんが、ウサギ小屋から脱走しました。見つけ次第、保護するように』
「ウサギ……」
どこかの誰かを彷彿とさせるような「ウサギ」という単語に、スピーカーの方を振り向く。
『目撃者の情報によると、校庭へ走るところを目撃したそうです』
恋はふと窓越しに校庭を見るが、ぴょんちゃんとやらの姿は見受けられない。
ウサギが逃げたのも大変だろうが、ラブレターの回収を優先させたほうがいいと判断する。
机の下にもラブレターはないか、と椅子をどけて確認する。
机の下に入り込んでいた数枚のラブレターを回収してしばらくすると、誰かが中庭を走っている足音が聞こえた。
こちらに向かってきたら思わずたじろぎそうな速くて大きな足音は、どんどん校庭の方向へと向かっている。
(部活か何かか?)
恋は一瞬不思議そうに首を傾げるが、「部活か」と独り合点してラブレターの捜索を再開する。
「──えええぇ!?」
突如、窓の外から大きな声が聞こえた。女子生徒の声だ。
何事かとさっと立ち上がるが、窓から二メートルほど離れている恋には何も見えない。
それもそのはず、悲鳴の主──しづきはぴょんちゃんを全力で回避して、低木にほぼ全身を突っ込んでいるからだ。
恋はいぶかしげに眉をひそめる。
(部活か何かか?)
彼は知らない。高等部には低木に突っ込む部活がないことを。
すると、不可解な現象に首をひねっている恋の耳に大好きな先輩の声が入ってきた。
「びっくりしたよな~」
「ああ、さっきの朝比奈か」
どうやら廊下に二人の生徒がいるらしい。
恋は無意識に廊下へと耳を傾け、一切の物音を殺した。
「──まさか朝比奈に好きな女子がいるなんてな」
恋は、石のように硬直した。
「アサヒナニスキナジョシガイル」……何度言葉の意味を咀嚼しても脳が理解を拒む。
虚無感に襲われる彼は知らない。
それはラブレター大量誤送による誤解だということを。
事実を知る由もない彼はパチンと瞬きを一つ。
「……は?」
やがて喉から絞り出されたのは低い声。
──僕のものなのに。
心が黒い闇に支配され、恋は理科室を飛び出す。
全国共通の校則を堂々と破り、彼は廊下を爆走する。
その手には、リトマス試験紙と駒込ピペットが握られていた──。
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