【二日に一度更新】とある学校の珍事件簿〜奇人:常人=3:1〜

華凛

文字の大きさ
38 / 43
白熱! 球技(珍)大会

如月恋の隠し事

しおりを挟む
「恋くん!?」

突如気を失った恋に、新兎は悲鳴じみた声を上げ、彼の顔を覗き込む。

サッカーの試合中だったが、他のチームメイトも心配になったのか、そばに寄ってきた。
「大丈夫か?」「どうしたんだ」という呼びかけに返事はない。

騒ぎが大きくなってきたところに、待機していた保健の先生が駆けつけてきた。

「とりあえず保健室に運びましょう。朝比奈くん、手伝って」
「はいっ」

新兎は慌てながらも担架に恋を乗せ、保健室へと運んだ。



外では試合が再開しているらしい。たまに応援の声が聞こえてくる。

新兎は保健室にいた。
もちろん恋を見守るためである。
本人曰く、「クラスメイトとして」だそうだ。

(どうしたんだろ……)

恋が倒れた時のことを思い出すが、そんなに体力を消耗しているようには見えなかった。
運動したのは事前のウォーミングアップくらいだ。

緊張しちゃったのかな、など新兎が考えてる時、恋の目がパチリと開いた。
しばらく天井を見つめたあと、驚いたようにこちらを見る。

「せんぱい……?」

まだ眠そうな目でぼんやりと新兎を見つめてくる。



恋は頬を撫でる風で目を覚ます。
見覚えのある天井、、、、、、、、、保健室だ。

確か球技大会の途中だった。
ウォーミングアップで校庭を走ったところまでは覚えているのだ。

(そこからの記憶が……)

身体に力が入らない。
頭はズキズキと痛む。

(じゃあまた、、……)

なんとなく、自分が横たわっているベッドの右に視線を移してみる。
意識が覚醒しきっておらず、ぼんやりする目をパチパチと瞬かせる。

「せんぱい……?」

そこには新兎がちょこんと座っていた。可愛い。
なんで、と上体を起こそうとしたが、起き上がれない。

「あっ、無理しないでね。恋くん突然倒れちゃったんだよ」

(優しい……)

黙り込んで新兎を見つめていると、何も言っていないのに急に新兎は話し出した。

「いや、ね! クラスメイトとして、クラスメイトとしてだからね」

朝の会話を気にしているのだろうか。
言い訳をするように手をぶんぶんと振る姿がなんだかおかしくて、つい吹き出してしまった。

「……ふふっ」
「なんで笑うの」

不満そうな新兎に、恋は上体を起こす。少しは大丈夫になってきたようだ。

「……僕、病弱なんです」

意外そうに目を見開く新兎に、前髪を弄りながら続ける。

「ちょっと走っただけでも疲れて、倒れて……みんなは大丈夫なのに」

悔しさを紛らわすように目を閉じる。

「なんでみんなと違うのかなーって……なんでみんなと同じようにうまくできないのかな、って」

目を開け、窓の外に見えるグラウンドを羨ましそうに見つめる。

「昔からずっと友だちできなくて。両親にも怒られて……」

苦い思い出は楽しい思い出よりも覚えているものだ。
恋は俯く。

「隠してたんです。友だちできるように」

力なく笑い、グラウンドで繰り広げられているサッカーの試合を眺める。

「昔、『運動できないやつといてもつまんない』って言われたんです。だから隠してて……でも──」

恋は言葉にすることを躊躇するように間を置く。

「──僕は僕でいたいのに」

うまくごまかして、自分を偽装した。
つまらなくない"如月恋"を演じてきた。
何かとても悪いことをしているような気がして、自分が自分じゃなくなるような気がした。

「えっ、いいんじゃない?」
「……え?」
「少なくとも俺は恋くんと一緒にいてつまんないなんて、思ってないよ」

なんてことのないように首を傾げる新兎に、なんだか自分の悩みがものすごくちっぽけに思えた。

「俺はありのままの恋くんでもいいと思うけど……俺も運動苦手だし」

新兎は頭をかいて視線を逸らす。

(あぁ、僕が好きな人は──)

新兎に飛びつくようにしてぎゅっと抱きつく。

「せんぱい、大好きです!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純七
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

月弥総合病院

御月様(旧名 僕君☽☽‪︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

秘められたサイズへの渇望

到冠
大衆娯楽
大きな胸であることを隠してる少女たちが、自分の真のサイズを開放して比べあうお話です。

ぼっち陰キャはモテ属性らしいぞ

みずがめ
ライト文芸
 俺、室井和也。高校二年生。ぼっちで陰キャだけど、自由な一人暮らしで高校生活を穏やかに過ごしていた。  そんなある日、何気なく訪れた深夜のコンビニでクラスの美少女二人に目をつけられてしまう。  渡会アスカ。金髪にピアスというギャル系美少女。そして巨乳。  桐生紗良。黒髪に色白の清楚系美少女。こちらも巨乳。  俺が一人暮らしをしていると知った二人は、ちょっと甘えれば家を自由に使えるとでも考えたのだろう。過激なアプローチをしてくるが、紳士な俺は美少女の誘惑に屈しなかった。  ……でも、アスカさんも紗良さんも、ただ遊び場所が欲しいだけで俺を頼ってくるわけではなかった。  これは問題を抱えた俺達三人が、互いを支えたくてしょうがなくなった関係の話。

パパと娘の入れ替わり

廣瀬純七
ファンタジー
父親の健一と中学生の娘の結衣の体が入れ替わる話

処理中です...