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白熱! 球技(珍)大会
如月恋の隠し事
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「恋くん!?」
突如気を失った恋に、新兎は悲鳴じみた声を上げ、彼の顔を覗き込む。
サッカーの試合中だったが、他のチームメイトも心配になったのか、そばに寄ってきた。
「大丈夫か?」「どうしたんだ」という呼びかけに返事はない。
騒ぎが大きくなってきたところに、待機していた保健の先生が駆けつけてきた。
「とりあえず保健室に運びましょう。朝比奈くん、手伝って」
「はいっ」
新兎は慌てながらも担架に恋を乗せ、保健室へと運んだ。
◇
外では試合が再開しているらしい。たまに応援の声が聞こえてくる。
新兎は保健室にいた。
もちろん恋を見守るためである。
本人曰く、「クラスメイトとして」だそうだ。
(どうしたんだろ……)
恋が倒れた時のことを思い出すが、そんなに体力を消耗しているようには見えなかった。
運動したのは事前のウォーミングアップくらいだ。
緊張しちゃったのかな、など新兎が考えてる時、恋の目がパチリと開いた。
しばらく天井を見つめたあと、驚いたようにこちらを見る。
「せんぱい……?」
まだ眠そうな目でぼんやりと新兎を見つめてくる。
◇
恋は頬を撫でる風で目を覚ます。
見覚えのある天井、保健室だ。
確か球技大会の途中だった。
ウォーミングアップで校庭を走ったところまでは覚えているのだ。
(そこからの記憶が……)
身体に力が入らない。
頭はズキズキと痛む。
(じゃあまた……)
なんとなく、自分が横たわっているベッドの右に視線を移してみる。
意識が覚醒しきっておらず、ぼんやりする目をパチパチと瞬かせる。
「せんぱい……?」
そこには新兎がちょこんと座っていた。可愛い。
なんで、と上体を起こそうとしたが、起き上がれない。
「あっ、無理しないでね。恋くん突然倒れちゃったんだよ」
(優しい……)
黙り込んで新兎を見つめていると、何も言っていないのに急に新兎は話し出した。
「いや、ね! クラスメイトとして、クラスメイトとしてだからね」
朝の会話を気にしているのだろうか。
言い訳をするように手をぶんぶんと振る姿がなんだかおかしくて、つい吹き出してしまった。
「……ふふっ」
「なんで笑うの」
不満そうな新兎に、恋は上体を起こす。少しは大丈夫になってきたようだ。
「……僕、病弱なんです」
意外そうに目を見開く新兎に、前髪を弄りながら続ける。
「ちょっと走っただけでも疲れて、倒れて……みんなは大丈夫なのに」
悔しさを紛らわすように目を閉じる。
「なんでみんなと違うのかなーって……なんでみんなと同じようにうまくできないのかな、って」
目を開け、窓の外に見えるグラウンドを羨ましそうに見つめる。
「昔からずっと友だちできなくて。両親にも怒られて……」
苦い思い出は楽しい思い出よりも覚えているものだ。
恋は俯く。
「隠してたんです。友だちできるように」
力なく笑い、グラウンドで繰り広げられているサッカーの試合を眺める。
「昔、『運動できないやつといてもつまんない』って言われたんです。だから隠してて……でも──」
恋は言葉にすることを躊躇するように間を置く。
「──僕は僕でいたいのに」
うまくごまかして、自分を偽装した。
つまらなくない"如月恋"を演じてきた。
何かとても悪いことをしているような気がして、自分が自分じゃなくなるような気がした。
「えっ、いいんじゃない?」
「……え?」
「少なくとも俺は恋くんと一緒にいてつまんないなんて、思ってないよ」
なんてことのないように首を傾げる新兎に、なんだか自分の悩みがものすごくちっぽけに思えた。
「俺はありのままの恋くんでもいいと思うけど……俺も運動苦手だし」
新兎は頭をかいて視線を逸らす。
(あぁ、僕が好きな人は──)
新兎に飛びつくようにしてぎゅっと抱きつく。
「せんぱい、大好きです!」
突如気を失った恋に、新兎は悲鳴じみた声を上げ、彼の顔を覗き込む。
サッカーの試合中だったが、他のチームメイトも心配になったのか、そばに寄ってきた。
「大丈夫か?」「どうしたんだ」という呼びかけに返事はない。
騒ぎが大きくなってきたところに、待機していた保健の先生が駆けつけてきた。
「とりあえず保健室に運びましょう。朝比奈くん、手伝って」
「はいっ」
新兎は慌てながらも担架に恋を乗せ、保健室へと運んだ。
◇
外では試合が再開しているらしい。たまに応援の声が聞こえてくる。
新兎は保健室にいた。
もちろん恋を見守るためである。
本人曰く、「クラスメイトとして」だそうだ。
(どうしたんだろ……)
恋が倒れた時のことを思い出すが、そんなに体力を消耗しているようには見えなかった。
運動したのは事前のウォーミングアップくらいだ。
緊張しちゃったのかな、など新兎が考えてる時、恋の目がパチリと開いた。
しばらく天井を見つめたあと、驚いたようにこちらを見る。
「せんぱい……?」
まだ眠そうな目でぼんやりと新兎を見つめてくる。
◇
恋は頬を撫でる風で目を覚ます。
見覚えのある天井、保健室だ。
確か球技大会の途中だった。
ウォーミングアップで校庭を走ったところまでは覚えているのだ。
(そこからの記憶が……)
身体に力が入らない。
頭はズキズキと痛む。
(じゃあまた……)
なんとなく、自分が横たわっているベッドの右に視線を移してみる。
意識が覚醒しきっておらず、ぼんやりする目をパチパチと瞬かせる。
「せんぱい……?」
そこには新兎がちょこんと座っていた。可愛い。
なんで、と上体を起こそうとしたが、起き上がれない。
「あっ、無理しないでね。恋くん突然倒れちゃったんだよ」
(優しい……)
黙り込んで新兎を見つめていると、何も言っていないのに急に新兎は話し出した。
「いや、ね! クラスメイトとして、クラスメイトとしてだからね」
朝の会話を気にしているのだろうか。
言い訳をするように手をぶんぶんと振る姿がなんだかおかしくて、つい吹き出してしまった。
「……ふふっ」
「なんで笑うの」
不満そうな新兎に、恋は上体を起こす。少しは大丈夫になってきたようだ。
「……僕、病弱なんです」
意外そうに目を見開く新兎に、前髪を弄りながら続ける。
「ちょっと走っただけでも疲れて、倒れて……みんなは大丈夫なのに」
悔しさを紛らわすように目を閉じる。
「なんでみんなと違うのかなーって……なんでみんなと同じようにうまくできないのかな、って」
目を開け、窓の外に見えるグラウンドを羨ましそうに見つめる。
「昔からずっと友だちできなくて。両親にも怒られて……」
苦い思い出は楽しい思い出よりも覚えているものだ。
恋は俯く。
「隠してたんです。友だちできるように」
力なく笑い、グラウンドで繰り広げられているサッカーの試合を眺める。
「昔、『運動できないやつといてもつまんない』って言われたんです。だから隠してて……でも──」
恋は言葉にすることを躊躇するように間を置く。
「──僕は僕でいたいのに」
うまくごまかして、自分を偽装した。
つまらなくない"如月恋"を演じてきた。
何かとても悪いことをしているような気がして、自分が自分じゃなくなるような気がした。
「えっ、いいんじゃない?」
「……え?」
「少なくとも俺は恋くんと一緒にいてつまんないなんて、思ってないよ」
なんてことのないように首を傾げる新兎に、なんだか自分の悩みがものすごくちっぽけに思えた。
「俺はありのままの恋くんでもいいと思うけど……俺も運動苦手だし」
新兎は頭をかいて視線を逸らす。
(あぁ、僕が好きな人は──)
新兎に飛びつくようにしてぎゅっと抱きつく。
「せんぱい、大好きです!」
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