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白熱! 球技(珍)大会
しがみつきの恋と大量ラブレターの真相
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いつもの調子を取り戻した恋に、新兎はほっとした。
……が、さすがに腰あたりにずっと引っつかれるのは困る。
元気を取り戻した恋は、「観戦がしたい」と言い出した。
そのため新兎と恋は校庭へ行くことになったが、廊下を歩いている間ずっとこれである。
足が引きずられるのもお構いなしにくっついている彼には狂気さえ感じる。
「恋くーん? あの、重いというか何というか……」
新兎は壁際の手すりを掴んで必死に前進しながら言った。
「捕まえてないとどっか行っちゃいそうなので!」
「つ、捕まえる……?」
ニコニコとしながら全体重をかけてくる恋の方を、新兎は首をギギギと回して見る。
「罪に問われること何もしてないよ!?」
「……」
恋は笑顔から真顔に戻り、いじけた子どもみたいに頬を膨らませた。
「……せんぱい、好きな女の子いるんでしょ」
「はあぁ!?」
いないが。
そう思い、自分の発言を振り返ってみるが、恋の前では勘違いされるような発言もしていないはずだ。
そう、恋の前では。
『──そ、そうなんだよ! そう、好きな子! 好きな子いるんだよ!』
(……あ)
そういえば一週間前くらいのラブレター回収戦線でそんな言い訳をしたような気がする。
なぜかは知らないが、それが恋の耳に入ってしまったようだ。
「そっ、それは勘違い! ラブレターの時の言い訳だから!」
この誤解を解かないと一生くっついている気がするので、必死に弁明する。
「……そう、なんですか?」
疑わしげに見てくる恋に、新兎はぶんぶんと首を振る。
「──なら、良かったです!」
恋は晴れ晴れとした顔で、新兎から離れた。
……と思ったら、頭にしがみついてきた。
「せんぱいに好きな子がいても僕のせんぱいですけどねっ」
上機嫌にゆらゆら揺れるたびに、新兎の前進速度は下がっていった。
◇
「いやー、まさか新兎くんとしづちゃんのクラスが最下位になるなんてね♡」
MVPのトロフィーを抱えながらケラケラ笑っているのは、朱雀だ。
球技大会の後片付けのために生徒会役員で集まったが、会って第一声がこれである。
球技大会の結果は以下の通りである。
女子バレー、朱雀率いる二年D組の優勝。
男子サッカー、白虎率いる二年B組の圧勝。
男女総合優勝が二年D組。
……新兎のクラスの結果は以下の通りである。
女子バレーはしづきの工作により最下位。
男子サッカーは欠員により不戦敗。
男女総合では大差で最下位。
仕方がないとはいえ、酷い結果である。
臨時生徒会室にいる生徒会役員の四人は、それぞれの後片付けを行った。
新兎の仕事は、写真の現像と学校広報誌の球技大会ページの作成だ。
新兎は印刷機の近くに寄り、試し刷りをしてみる。
出てきた紙をペラリと裏返してみると、手紙らしい文章が見えた。
(あ、この間のラブレターか……)
ラブレターにしては珍しいA4の紙だったので、コピー用紙と間違えて入れてしまったようだ。
「……このラブレター、なんであんなに印刷されたんでしょうね?」
新兎が独り言のように呟くと、朱雀が唇に指を当てて考えるような仕草をする。
「そういえば、新兎くんと戸締まりした時に印刷機の音が聞こえたような──」
その時、ガチャリと臨時生徒会室の扉が開く。
「修羅くん、全校配布用の書類は配ってくれた?」
「……全校配布用の書類……?」
二年B組の教師であった。
不思議そうに首を傾げる白虎の足元でじゃれていた佐藤太郎(仮)がコピー機へ登った。
佐藤太郎(仮)はコピー機の操作画面の上でぺちぺちと足踏みをする。
「一週間前くらいの夜に、巡回中に生徒会室を見回ってたら音がするから入ってみたんだよ」
教師はコピー機を指さしながら話す。
「そしたらプリントがたくさん印刷されてたから、全校配布用かと思って下駄箱に入れといたんだけど……違った?」
(……あれ)
先週のラブレター事件の真相が見えてきた気がする。
佐藤太郎(仮)が一枚のラブレターをくわえて臨時生徒会室に持ってくる。
それを印刷機にセットしたまま、印刷機の操作画面で遊び、新兎たちに回収された。
そうして五百枚のラブレターが完成する。
夜に巡回に来た教師が、それを全校配布用だと思って中身をろくに確認せずに、生徒会長である白虎の下駄箱に入れておいた。
そしてそれをしづきが回収して、先週の朝に至るというわけだ。
一週間越しに判明した事実に、新兎は佐藤太郎(仮)を少し恨めしげに見た。
(佐藤さんのせいで誤解をいろいろ生んだんだぞ……)
当の佐藤太郎(仮)は特に悪気もなく、楽しそうにコピー機の上で足踏みをしていた。
……が、さすがに腰あたりにずっと引っつかれるのは困る。
元気を取り戻した恋は、「観戦がしたい」と言い出した。
そのため新兎と恋は校庭へ行くことになったが、廊下を歩いている間ずっとこれである。
足が引きずられるのもお構いなしにくっついている彼には狂気さえ感じる。
「恋くーん? あの、重いというか何というか……」
新兎は壁際の手すりを掴んで必死に前進しながら言った。
「捕まえてないとどっか行っちゃいそうなので!」
「つ、捕まえる……?」
ニコニコとしながら全体重をかけてくる恋の方を、新兎は首をギギギと回して見る。
「罪に問われること何もしてないよ!?」
「……」
恋は笑顔から真顔に戻り、いじけた子どもみたいに頬を膨らませた。
「……せんぱい、好きな女の子いるんでしょ」
「はあぁ!?」
いないが。
そう思い、自分の発言を振り返ってみるが、恋の前では勘違いされるような発言もしていないはずだ。
そう、恋の前では。
『──そ、そうなんだよ! そう、好きな子! 好きな子いるんだよ!』
(……あ)
そういえば一週間前くらいのラブレター回収戦線でそんな言い訳をしたような気がする。
なぜかは知らないが、それが恋の耳に入ってしまったようだ。
「そっ、それは勘違い! ラブレターの時の言い訳だから!」
この誤解を解かないと一生くっついている気がするので、必死に弁明する。
「……そう、なんですか?」
疑わしげに見てくる恋に、新兎はぶんぶんと首を振る。
「──なら、良かったです!」
恋は晴れ晴れとした顔で、新兎から離れた。
……と思ったら、頭にしがみついてきた。
「せんぱいに好きな子がいても僕のせんぱいですけどねっ」
上機嫌にゆらゆら揺れるたびに、新兎の前進速度は下がっていった。
◇
「いやー、まさか新兎くんとしづちゃんのクラスが最下位になるなんてね♡」
MVPのトロフィーを抱えながらケラケラ笑っているのは、朱雀だ。
球技大会の後片付けのために生徒会役員で集まったが、会って第一声がこれである。
球技大会の結果は以下の通りである。
女子バレー、朱雀率いる二年D組の優勝。
男子サッカー、白虎率いる二年B組の圧勝。
男女総合優勝が二年D組。
……新兎のクラスの結果は以下の通りである。
女子バレーはしづきの工作により最下位。
男子サッカーは欠員により不戦敗。
男女総合では大差で最下位。
仕方がないとはいえ、酷い結果である。
臨時生徒会室にいる生徒会役員の四人は、それぞれの後片付けを行った。
新兎の仕事は、写真の現像と学校広報誌の球技大会ページの作成だ。
新兎は印刷機の近くに寄り、試し刷りをしてみる。
出てきた紙をペラリと裏返してみると、手紙らしい文章が見えた。
(あ、この間のラブレターか……)
ラブレターにしては珍しいA4の紙だったので、コピー用紙と間違えて入れてしまったようだ。
「……このラブレター、なんであんなに印刷されたんでしょうね?」
新兎が独り言のように呟くと、朱雀が唇に指を当てて考えるような仕草をする。
「そういえば、新兎くんと戸締まりした時に印刷機の音が聞こえたような──」
その時、ガチャリと臨時生徒会室の扉が開く。
「修羅くん、全校配布用の書類は配ってくれた?」
「……全校配布用の書類……?」
二年B組の教師であった。
不思議そうに首を傾げる白虎の足元でじゃれていた佐藤太郎(仮)がコピー機へ登った。
佐藤太郎(仮)はコピー機の操作画面の上でぺちぺちと足踏みをする。
「一週間前くらいの夜に、巡回中に生徒会室を見回ってたら音がするから入ってみたんだよ」
教師はコピー機を指さしながら話す。
「そしたらプリントがたくさん印刷されてたから、全校配布用かと思って下駄箱に入れといたんだけど……違った?」
(……あれ)
先週のラブレター事件の真相が見えてきた気がする。
佐藤太郎(仮)が一枚のラブレターをくわえて臨時生徒会室に持ってくる。
それを印刷機にセットしたまま、印刷機の操作画面で遊び、新兎たちに回収された。
そうして五百枚のラブレターが完成する。
夜に巡回に来た教師が、それを全校配布用だと思って中身をろくに確認せずに、生徒会長である白虎の下駄箱に入れておいた。
そしてそれをしづきが回収して、先週の朝に至るというわけだ。
一週間越しに判明した事実に、新兎は佐藤太郎(仮)を少し恨めしげに見た。
(佐藤さんのせいで誤解をいろいろ生んだんだぞ……)
当の佐藤太郎(仮)は特に悪気もなく、楽しそうにコピー機の上で足踏みをしていた。
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