おちおち冥福も祈れない

ヒルミチ ヒナカ

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小話

友引前だった男

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「喜べハル。たまにはおまえの趣味に付き合ってやろう」

 と、上から目線で恩着せがましく、暴君ヴェスナはふんぞり返った。
 そのとき晴澄はるすみは今年一番の真顔をしていただろう。

「趣……味……?」

「……おまえというやつは……」

 憐れむように肩を竦めるヴェスナ。意地悪のつもりではないようだった。
 しかし晴澄が仕事しかしていないのをすぐ隣で見ていて、無趣味なのを知らなかったとは言わせない。

 晴澄という人間が特別物事への関心が薄いことも否定はしないが、基本的に同業者は趣味などのプライベートに費やす時間をなかなか持てず、結果、仕事に生きることを余儀なくされているパターンが多い。
 しいて言うなら晴澄には就寝前の晩酌があるくらいか。手の中のグラスを揺らす。これにはすでに付き合わせているというか、今夜のように邪魔されている。

 むうとヴェスナは唇を尖らせ、自身の膝の上に頬杖をついた。

「じゃあ、おれが服を買うのに付き合え。おまえの服も見立ててやる」
「……毎日葬儀なのにいつ着るんだ」
「友人と出かけるときとか、何かあるだろう」
「友人……?」
「おまえというやつは!」

 憐れみが嘆きに変わる。だが同情しているのは表情と口ぶりだけで、腹の奥底では思いきり笑っているのを知っていた。
 友人に関しても同業者は以下略だ。衣服はスーツがほとんどで、私服は2、3着。長年着回しているわりに古びた印象を与えないのは、着る機会がほぼないからだろう。新しいものを買ったところで着られないのなら意味はない。
 総じて余計なお世話である。

「お前だって友人などいないくせに」
「何を言う。アスカもヒラサカもタツキも親しき友だ」

 勝手に友人認定されていたとは飛鳥たちも驚きだろう。自分は果たして何なのだろうという疑問はさておき、そういうことではないのだと聞き方を変える。

「人間以外は? 同族の中で付き合いの長いやつとかいないのか」
「ふむ。おれたちは相互不干渉だからな。街ですれちがえばそれとわかるが、声をかけるかは気分次第だ。種としての帰属意識があるわけでもない」

 晴澄の興味が向いていることが嬉しいのか、ヴェスナは存外まともに説明をはじめた。

「たとえば“閉ざす者”がいたとして、おれと活動範囲が重なることに益はないから、会うことはないのだ。そもそも存在するのかもわからん。もし出会ったら物理法則がどうなるかは、おれも気になる」

 超常現象は超常現象なりに自然の摂理を理解しているらしい。

 そして初めて知った。この男がいるからといって謎の仲間たちが我が家に集結するわけではないようだ。
 彼ひとりに手を焼いている晴澄にとってはほっとするニュースだった。

「生きモノの形をしてるとも限らんしな。聞くところによるとUFOは“飛ぶ者”だとか」
「……同族を都市伝説扱いか」
「そんな程度にしか互いに興味がないのさ。人間のほうが余程おもしろい」

 ヴェスナは晴澄の肩にもたれ、ノックするように左胸を叩いてみせた。

「ということだから、観念して服を買いに行くぞ。いつものゆるダサ黒コーデでは絶対デートしてやらん。同胞に見られたら恥ずかしいし」
「してくれなくて結構」
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