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第12章 二度目の恋
第147話 もう一度あなたに恋をする
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エリー王女と共に上ったツリーハウスで、セイン王子は一人、腕で目を覆いソファーに寝そべっていた。傍から見れば眠っているように見えるが、意識ははっきりしている。
体を動かしていても静かにしていても頭の中にはいつもエリー王女がいた。日に日に大きくなるレイの感情。自分を制御できず苛立っていた。
暫くじっとしていると、誰かが階段を上ってくる気配がした。
ギルが迎えに来たのだろう。しかし、起き上がる気にはなれなず、目を腕で覆ったままでいた。
気配はすぐ側で止まる。
「あの……セイン様……起きておられますか?」
遠慮がちなその声を聞いた途端、心臓が跳ねた。
「……会ってはダメだとお伝えしたはずですが」
もう一度聞きたいと思っていたその声に、今すぐ手を伸ばし抱き締めたいと思った。
けれども顔も上げずに、心にもない言葉を冷たく吐き捨てる。
「申し訳ございません……少しだけ……少しだけお時間を頂けないでしょうか……」
エリー王女の震える声に瞳を強く結んだ。
覚悟を決め体を起こし、視線を合わさないように座り直す。
「……わかりました。では、エリー様もこちらにお掛け下さい」
「はい……あ、あの……出来ればお立ち頂いても宜しいでしょうか……」
疑問に思い見上げると、エリー王女が瞳を潤ませて立っていた。セイン王子の胸が熱くなる。
先日の言葉を気にしているのだろうか。
悲しませたいわけではないのに……。
さっと視線を外し、平静を装いながら立ち上がった。
するとエリー王女が胸の中に飛び込んできた。
「っ!」
想像もしていなかった出来事に息を飲む。
どうしていいか分からずただ立ち尽くしていると、エリー王女が腕を回し、きゅっと力を入れた。
「セイン様……私は全てを知りました。私のせいでご迷惑をおかけして申し訳ございません。ですが……」
少し体を離し見上げるエリー王女と視線がぶつかる。
「生きていてくれてありがとうございます……」
エリー王女の潤んだ瞳から涙が一滴溢れた。
笑みを浮かべるエリー王女はとても綺麗で心が揺さぶられる。
「エリー……様……」
「私は……」
――――今でもあなたを愛しております。
雷が全身に走ったように心が痺れた。
エリー王女の真っ直ぐな瞳から逃れられず、身動き一つ出来なかった。
断らなければ……。
そう思うのに、言葉が出てこない。
それは今でもレイはエリー様が好きだから。
心が喜んでいるのだ。
だけど……。
何も言えずにいると、エリー王女の右手が頬に添えられた。
「たとえセイン様にレイの記憶がないとしても……もう一度、私を好きになってほしいです」
つま先で立ち、頬に添えた手を後頭部へ回し、セイン王子の唇に柔らかな唇を寄せる。
触れあった瞬間、何かがセイン王子の内側をこじ開けた。
――――エリー……っ!
体の奥底から聞こえてきた声と共に世界が真っ白になった。
記憶のフラッシュバック。
唐突に始まり、思わずエリー王女にしがみつき首元に顔を埋《うず》めた。
「セ、セイン様……?」
様子がおかしいことに気が付いたエリー王女が呼びかけている。朦朧としながらもすぐ横にあるソファーになんとか横になった。
「い、今ギルを呼びます!」
慌て何処かに行こうとするエリー王女の腕を掴む。
「大丈夫……少しだけ待って……お願い……」
「は、はい……」
エリー王女がセイン王子の手を握り、側に寄り添った。
握りしめたエリー王女の温もりに安心し、深い記憶の波に飲まれていく。
エリー王女と出会い、恋をした。
そこから数ヶ月の記憶が蘇る。
ずっと好きでいてくれた……。
俺を見つけてくれた……。
握られた手をきゅっと握る。
「セイン様……? 大丈――――」
顔を覗き込んできたエリー王女の言葉を遮り、唇を塞いだ。
唇を離すと目を丸くしているエリー王女に笑みを作る。
「あ、あの……」
赤らめたエリー王女の頬を撫で、ゆっくりと体を起こした。手を引き、隣に引寄せ抱き締める。
「エリー、ごめん。思い出したよ……辛い思いをさせちゃったね……本当にごめん」
「思い……。ほ、本当に……本当に思い出したのですか……?」
声が震わせながら、エリー王女も抱き締め返してくる。
「うん……エリーと出会ってからの記憶だけみたいだけど、思い出したよ。ありがとう……本当に……ずっと想っていてくれて……」
「レイ! レイ……レイ……ああ…………っ」
胸の中で泣きじゃくるエリー王女の頭を何度も優しく撫でた。
「ごめん……」
謝っても謝りきれない。
何度も何度も謝るがその度にエリー王女は首を振った。
「ごめん……今度は一緒になれる方法を考えよう……」
エリー王女は胸の中で頷き、きゅっとしがみつく。
「好きだよ……エリー」
中途半端だったエリー王女への記憶と想いがはっきりと蘇り、やっと気持ちが落ち着いた。
もう離れない。離さない。
無理やりエリー王女を胸から引き離し、もう一度唇を寄せた。今度は優しいキスではない。
これ以上悲しい思いをさせない。
そう心に誓いながら、今まで出来なかった分を取り戻すかのように激しく唇を求めた。
体を動かしていても静かにしていても頭の中にはいつもエリー王女がいた。日に日に大きくなるレイの感情。自分を制御できず苛立っていた。
暫くじっとしていると、誰かが階段を上ってくる気配がした。
ギルが迎えに来たのだろう。しかし、起き上がる気にはなれなず、目を腕で覆ったままでいた。
気配はすぐ側で止まる。
「あの……セイン様……起きておられますか?」
遠慮がちなその声を聞いた途端、心臓が跳ねた。
「……会ってはダメだとお伝えしたはずですが」
もう一度聞きたいと思っていたその声に、今すぐ手を伸ばし抱き締めたいと思った。
けれども顔も上げずに、心にもない言葉を冷たく吐き捨てる。
「申し訳ございません……少しだけ……少しだけお時間を頂けないでしょうか……」
エリー王女の震える声に瞳を強く結んだ。
覚悟を決め体を起こし、視線を合わさないように座り直す。
「……わかりました。では、エリー様もこちらにお掛け下さい」
「はい……あ、あの……出来ればお立ち頂いても宜しいでしょうか……」
疑問に思い見上げると、エリー王女が瞳を潤ませて立っていた。セイン王子の胸が熱くなる。
先日の言葉を気にしているのだろうか。
悲しませたいわけではないのに……。
さっと視線を外し、平静を装いながら立ち上がった。
するとエリー王女が胸の中に飛び込んできた。
「っ!」
想像もしていなかった出来事に息を飲む。
どうしていいか分からずただ立ち尽くしていると、エリー王女が腕を回し、きゅっと力を入れた。
「セイン様……私は全てを知りました。私のせいでご迷惑をおかけして申し訳ございません。ですが……」
少し体を離し見上げるエリー王女と視線がぶつかる。
「生きていてくれてありがとうございます……」
エリー王女の潤んだ瞳から涙が一滴溢れた。
笑みを浮かべるエリー王女はとても綺麗で心が揺さぶられる。
「エリー……様……」
「私は……」
――――今でもあなたを愛しております。
雷が全身に走ったように心が痺れた。
エリー王女の真っ直ぐな瞳から逃れられず、身動き一つ出来なかった。
断らなければ……。
そう思うのに、言葉が出てこない。
それは今でもレイはエリー様が好きだから。
心が喜んでいるのだ。
だけど……。
何も言えずにいると、エリー王女の右手が頬に添えられた。
「たとえセイン様にレイの記憶がないとしても……もう一度、私を好きになってほしいです」
つま先で立ち、頬に添えた手を後頭部へ回し、セイン王子の唇に柔らかな唇を寄せる。
触れあった瞬間、何かがセイン王子の内側をこじ開けた。
――――エリー……っ!
体の奥底から聞こえてきた声と共に世界が真っ白になった。
記憶のフラッシュバック。
唐突に始まり、思わずエリー王女にしがみつき首元に顔を埋《うず》めた。
「セ、セイン様……?」
様子がおかしいことに気が付いたエリー王女が呼びかけている。朦朧としながらもすぐ横にあるソファーになんとか横になった。
「い、今ギルを呼びます!」
慌て何処かに行こうとするエリー王女の腕を掴む。
「大丈夫……少しだけ待って……お願い……」
「は、はい……」
エリー王女がセイン王子の手を握り、側に寄り添った。
握りしめたエリー王女の温もりに安心し、深い記憶の波に飲まれていく。
エリー王女と出会い、恋をした。
そこから数ヶ月の記憶が蘇る。
ずっと好きでいてくれた……。
俺を見つけてくれた……。
握られた手をきゅっと握る。
「セイン様……? 大丈――――」
顔を覗き込んできたエリー王女の言葉を遮り、唇を塞いだ。
唇を離すと目を丸くしているエリー王女に笑みを作る。
「あ、あの……」
赤らめたエリー王女の頬を撫で、ゆっくりと体を起こした。手を引き、隣に引寄せ抱き締める。
「エリー、ごめん。思い出したよ……辛い思いをさせちゃったね……本当にごめん」
「思い……。ほ、本当に……本当に思い出したのですか……?」
声が震わせながら、エリー王女も抱き締め返してくる。
「うん……エリーと出会ってからの記憶だけみたいだけど、思い出したよ。ありがとう……本当に……ずっと想っていてくれて……」
「レイ! レイ……レイ……ああ…………っ」
胸の中で泣きじゃくるエリー王女の頭を何度も優しく撫でた。
「ごめん……」
謝っても謝りきれない。
何度も何度も謝るがその度にエリー王女は首を振った。
「ごめん……今度は一緒になれる方法を考えよう……」
エリー王女は胸の中で頷き、きゅっとしがみつく。
「好きだよ……エリー」
中途半端だったエリー王女への記憶と想いがはっきりと蘇り、やっと気持ちが落ち着いた。
もう離れない。離さない。
無理やりエリー王女を胸から引き離し、もう一度唇を寄せた。今度は優しいキスではない。
これ以上悲しい思いをさせない。
そう心に誓いながら、今まで出来なかった分を取り戻すかのように激しく唇を求めた。
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