灰かぶり姫と月の魔法使い

星 佑紀

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第弐譚

0013:ユエ

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 【side ツクヨミ】



「……ルナは自由だ。もう、お前の都合のいいようにはいかない。」


「いいえ、私とルナはとして繋がっていますから。……彼女は、私の望みを全て聞いてくれるでしょう。(笑)」


「ふざけるな、この野郎‼(怒)」



 みんなー! お元気ですかー? どうも、視えない男と対峙してガクブルなツクヨミだよー!

 うーん、話に全然ついていけてないけど、灰かぶり姫の家族と言い張っているこの男は一体何者なのだろう?



「ふざけているのは貴方でしょう、エド。いつまで現世にこだわっているのですか。早く天国の切符を使えば、もう苦しむことなんてないのに。……ほんと、馬鹿なお人だ。(笑)」


「ほざけ‼ ……俺がここに死してもなお居続けるのは、妻との約束だからだ‼」


「でも、貴方が彼女を見捨てたのでしょう? ……彼女の大事な時に傍にいられなかった貴方が、ルナを守ることはできないですよ。(笑)」


「――――っ‼(怒り)」


「……まあ、今回だけは見逃してあげましょう。ルナとの最後の時間、存分に楽しんでくださいね♪ ……それと、ルナに伝言をお願いします。『パパ、大事なお仕事が終わったら、ルナのことすぐに迎えに行くから待っててね♡ あと、黒髪で真っ黒いドレスを着た女装している月の魔法使いはとても危険だからむやみやたらに近づいてはいけないよ♡(猫撫で声)』 と、ね。(笑)」


「……長すぎて覚えられねーわ。ご自分で言ってくれ。」


「あはは、雑なところは相変わらずですねー。……実は私、ここで油を売っているわけにはいかないのですよ。ちょっと、仮面を被っている協力者達に用がありましてね。今日はこれでおいとまさせていただきます。」


「どうぞ、ご勝手に。」



 言うやいなや、シュルシュルッという音とともに、男の気配は跡形もなくなってしまったのであった!



「……めんどくせえ野郎だぜ。……それでツクヨミ、お前、何かしたのか? アイツが名指しで危険視しているのは初めてだぞ?」


「お、お師匠様、僕、何もやってないですよ⁉(灰かぶり姫に木登りはさせたけど。)」


「……お前のを警戒しているのかもな。」



 残りのチョコレートをボリボリ食べながら、お師匠様は呟いた。



「え、エドワード、さっきの男は一体何者なんだ?」



 お師匠様の背後で行方を見守っていた殿下は、お師匠様にそれとなく聞いた。

 ……殿下、不安そうな顔してますが、多分大丈夫ですよ。お師匠様既婚者なので、彼氏とかじゃないはずですよ、おそらく。

 僕は、心の中で殿下にエールを送った。



「アイツ? ……アイツは、俺ののユエだ。今はお義兄にいさまで、敵だがな。(キョトン)」


「エドワードのし、親友だと⁉(驚愕)」


「元だよ、元。……色々あったんだ。俺の妻の兄だから、ルナからみたら叔父にあたるが、それがどうかしたか?」


「あの男とエドワードがし、親族同士なのか⁉」


「まあ、親族付き合いは皆無だがな。」



 ――お、お師匠様、それ以上言うと、殿下が倒れちゃいますよー‼

 僕は心の中で絶叫した。



「あいつは、俺の妻を実家に閉じ込め、俺達のルナを結界無限屋敷に閉じ込め、一家離散させた悪の根源だ。身体が元に戻ったら容赦しねえからな。」



 ……お師匠様ー、たぶんそれは冷静に言うことではないと思うのですよー。

 なんだろう、常に異常な現場でこき使われているせいなのか、感覚が麻痺しているのかな?

 普通、お師匠様の家族が、一家離散してるだなんて、思わないじゃないですか。

 確かに、灰かぶり姫は何故か厳重な結界屋敷で暮らしてるって軽く聞いてましたけど、奥様も閉じ込められているって、知りませんでしたよ⁉


 見てくださいよ、殿下を。

 涙をだーだー流して鼻かんでますよ。



「エドワード、チョコレートもっと食べていいぞ。」


「いや、その味飽きたからもういい。」


「……。(床に突っ伏す)」



 殿下ーー‼

 生きてくださいーー‼


 僕はすかさず殿下を抱き起こし、平手打ちをして正気を取り戻させるのであった。






「…………お前達、遊んでいいのはここまでだからな。今から俺の言う通りに取り掛れ。……そして、忘れるな。ルナを絶対に守り通せ。」



 ――偉大なる魔法使いは、不敵な笑みを浮かべるのであった。――
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