灰かぶり姫と月の魔法使い

星 佑紀

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第弐譚

0014:【幕間】幼きルナとお兄ちゃん

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 ――これは、灰かぶり姫ルナがまだ幼い頃のお話。――



 みなさんこんにちは!


 私の名前はルナ・トランス! 見ての通り、元気な十歳児です!


 私の今日のスケジュールはね、朝早くにお水を汲み上げて、朝食の準備、片付け、お屋敷全室のお掃除、お洗濯、お針仕事……たくさんお仕事がありすぎてとても楽しいの‼


 そしてね、午後からは、剣術のお稽古のお兄ちゃんが来てくれて、ビシバシ鍛えてもらうんだ!



「灰かぶりー、ちゃんとお掃除してるでしょうねー?(怪訝)」


「お、継母様おかあさま!」



 お兄ちゃんのことを考えてニマニマしながらテーブルを拭いていると、継母様おかあさまがお部屋の中へ入ってきました。

 継母様おかあさまは、すぐに壁際の戸棚の上を指で触っていらっしゃいます。どうしましょう。そこはまだ乾拭きしていないのに。……また継母様おかあさまにガミガミ叱られるのだと、私はグッと身構えました!



「灰かぶり、ここの埃全然取れていないじゃない!(プンスカ)」


継母様おかあさま、ごめんなさい。(困り眉)」


「今日の昼食は抜きよ!(ビシッ)」


「はい、継母様おかあさま。(困り眉)」



 ……えへへ、今日の昼食抜きになっちゃった! でもへこたれないの!


 午後からお兄ちゃんが来てくれるからね!

 私はより一層心を込めてに励んだわ‼






「……ルナ、お前、今日昼食食べてないな?(ギロリ)」


「(ギクリ)た、食べたよー、たくさんモリモリぱくついたよ、お兄ちゃん!」


「何食べたんだ?(ギロリ)」


「……えへへ?(テヘペロ)」



 剣術の稽古をつけてくれているお兄ちゃんはね、とってもかっこよくて、イケメンなの!

 短いに、真っ赤なお目々、透き通った白い肌に小柄な体躯でね、遠くから見たらまるでお姫様なんだよ!

 初めて会った日に、って呼んだらゲンコツくらっちゃった!(テヘペロ)

 怒ったら怖いし、ちょっとおっかないんだけどね、いつも、私のために厳しくビシバシ稽古してくれるの!


 ……トランス家の、継母様おかあさま義姉様おねえさま達との間には、なんだかよくわからないがあってね、いつも一緒にいるはずなのに、謎の疎外感が湧いて出てくるんだけどね、お兄ちゃんにはね、それが無いんだ!


 口は悪いし、私より可愛くて女の子な、チグハグなお兄ちゃんがね、世界一カッコよくて、自慢のお師匠様なの!



「……ほら、これを食べろ。」



 お兄ちゃんは、懐から大きな紙袋を取り出して、私にくれました。

 紙袋を開けると、最近、街で流行っているハンバーガー(?)っていう食べ物がたくさん入っていたのです‼



「全部食べるまで稽古は中断な。」


「お、お兄ちゃん、ありがとう!(ほわほわ)」



 ぶっきらぼうだけどね、街の食べ物とかを持ってきてくれたりしてね、とっても優しいんだ‼

 ……そういえば、私も、お兄ちゃんのためにおやつを用意してたんだった!

 私はおもむろに懐から大きな紙袋を取り出して、お兄ちゃんに差し出したの。



「お兄ちゃんも、食べてください!」


「お、おう。いつも、ありがとな。」



 私とお兄ちゃんは地べたに並んで座って、少し遅い昼食にしました。

 私はハンバーガー(?)に、お兄ちゃんは私の手作りお菓子にかぶりついています。


 お兄ちゃん、いつも、美味しい、美味しいって言って食べてくれるんだ!



「ルナ、美味しいな、これ。(バリボリボリボリ)」


「えへへ、そう言ってくれるのはお兄ちゃんだけなんだよ。(嬉)」


「いつか立派なお菓子職人になれるな。」



 お兄ちゃんは小さい笑みを浮かべて大切そうに、残りの砂糖菓子を懐へと仕舞ったのでした。



「……ルナ、急に、仕事の量が増えてな、剣術の稽古に来れる時間が少なくなりそうなんだ。(困り眉)」


「お兄ちゃん?」


「あのバカ王子が……いや、今のは忘れてくれ。本当は、毎日のように来て、ルナの成長を見届けたいんだがな。(しょんぼり)」


「……お兄ちゃん、ルナは大丈夫だよ‼」



 私はガバッと立ち上がって、木刀を手に取りました。なぜなら、お兄ちゃんに、安心してほしかったからです。



「ルナ、ひとりでも剣術の稽古はできるよ! お兄ちゃんが来れなくなっても、私は、木刀を振り回し続けるの!」


「……ルナ。」


「だから、お兄ちゃんも、大事なお仕事頑張ってね! 私も、大きくなったら、お兄ちゃんと同じお仕事につくから、待ってて‼」


「……ああ。(ウルウル)」



 お兄ちゃんが来れなくなるのは、正直、不安がいっぱいだけれど、私には、なんとなく、またお兄ちゃんと楽しく過ごせる日が来るってわかるんだ!

 その日が来るまで、たくさん自主練して、お兄ちゃんにいつかドヤ顔で勝つの!

 胸を張っていると、お兄ちゃんはなにやらゴソゴソしだして、やがて、一振りの立派な刀を取り出しました。



「ルナ、これを持っててくれ。」


「……?」


「俺の、愛刀『霧雨』だ。」


「『キリサメ』?」


「ああ、手懐けるのに少し時間はかかるが、いつか、ピンチのときにルナを守ってくれるはずだ。」


「……お兄ちゃん。(うるうる)」


「だが、扱いを誤れば、悪い因縁を積む。いいな、ルナ。この刀は、に抜くんだぞ。決して他の人間や生き物を殺めるようなことはしてはいけない。わかったな。」


「うん、お兄ちゃん! ありがとう!」


「それと、忘れるな。『ボロは着てても心は』?」


「『にしき』?」


「そうだ、生きていくうえで一番大事なことだからな。……ルナ、お前はべっぴんさんで賢い自慢のだ。周りから何を言われようが、一切気にするな。自信を持って生きろ。」


「うん、お兄ちゃん、大好き‼」



 私はガバッとお兄ちゃんに抱きつきました。

 太陽の匂いが私を包み込みます。


 ――神様、私は、世界一、幸せ者よ!



 ――これは、とあるの思い出である。――
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