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第弐譚
0015:悪は塒(とぐろ)を巻く
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「皆さん、本日はこの会にお集まり頂き、まことにありがとうございます♪」
――ここは、トルネード王国の舞踏会場。――
時計の針がちょうど零時を指し示した頃。
絢爛豪華なシャンデリアに、美しい調度品が立ち並ぶ壇上へ、ある男は立っていた。
彼に目を向けている参加者達は皆指定された煌びやかな装束を身に纏い、目元だけを仮面で覆い隠し、異様さにひときわ磨きをかけている。そして、いつもよりもかなり控えめな照明が、不気味な空気感をいい感じに引き立てていた。
多くの参加者達は、壇上へと立つ彼の言葉を今か今かと待ち望んでいる。
「私、月国の王『ユエ』は、友好国として長い付き合いのあるトルネード王国の行く末を深く憂いておりました。」
透き通った、少し高い声音が、会場にいる人々の鼓膜を震わせる。
「痩せた土地によって作物が育たず、度重なる嵐の影響で住居の安全もままならない、資源も乏しいこの悪条件のなか、よくぞここまで持ち堪えられてきましたね。トルネード王国の国民の皆さんは今までに、数えきれないほどの困難辛苦を味わってきたことでしょう。」
どこからともなく、拍手が湧き起こる。
それと同時に、会場内が異常な熱気に包まれた。
発言者である、かの月国の王ユエは、更に続けて言葉を紡ぎ出す。
「しかし、私が来たからにはもう大丈夫です。母国の繁栄を一番に願う、第三王子リゲル殿下のアツい思いに、私の心は強く打ち抜かれました。」
ユエの背後から、長身の美丈夫リゲル殿下が現れた。そして、ユエと力強く握手をして参加者達に手を振る。先ほどの倍以上の拍手で、会場内は盛り上がったのであった。
「本日、我が月国と、友であるトルネード王国とが、より強固な同盟を結ぶことをここに宣言します!」
ワァーーーーーー‼
大きな歓声が会場中に鳴り響く。
「みんな、よく聞いてくれ!」
ユエの横に立つリゲル殿下が一歩前に出て、強くまっすぐな言葉を投げかける。
「トルネード国民からのたくさんの声が、やっと王国議会へと届いた。農作物に関すること、災害に関すること、政治に関すること。全て、国王陛下の耳には入っていて、対処していきたいと考えられている。……しかし、我が国の経済的な技術は、全てにおいて乏しい。……それが原因で、みんなの意見に応えていくことが難しいのが今の現状だ。……そんな中、国王陛下の古くからの親友である月国王『ユエ』陛下からあたたかいお言葉とお力添えをいただいた! 月国では最先端の学問、医療、技術、そして魔法が使用されており、月国民は皆幸福に暮らしているとのことだ。月国との同盟を強固にすることによって、それらの最先端技術を我が国にも取り入れたいと、国王陛下は願っている。……これからは、友である月国王『ユエ』陛下と相談しながら、みんなの望みを少しずつではあるが、叶えていけるよう切磋琢磨することをここに誓う!」
ウオォーーーー‼(リゲル殿下万歳‼)
「皆さん、トルネード王国第三王子リゲル殿下は、まだ若いですが、国民の声をよく聞き、国を良くしようと一生懸命努力をしています。しかし、第一後継者であるマーズ殿下はどうでしょう? 王国議会には出席しない、隣国アデル皇国の言いなりになって、母国を良くするどころか、不利益になることばかりを引き起こしています。誠に遺憾であり、断罪されてしかるべきだとは思いませんか?」
『そうだ、そうだ!』と、どこからか聞こえてくる。人々は、王族がするべきである仕事に携わらない第一王子に、何かしらの不満を持っていた。
「今から言うことを落ち着いて聞いてほしい。……とある筋から、アデル皇国が我が国へ戦争を仕掛けようとしているという情報が入った。現在、真偽を確かめている途中ではあるが、おそらく近い将来、アデル皇国との争いは避けきれないだろう。私は、祖国トルネード王国を、たとえ一人になったとしても、守りぬきたい。……みんな、こんな、非力な私に、力を貸してくれないか? みんなの力が必要なのだ‼」
シーーーーン
……パチ ……パチ ……パチ
パチ、パチ、パチパチパチパチ――‼
どこからともなく、人々の拍手が沸き起こり、やがて、一つの波となった。
人々の心の中に、第三王子リゲル殿下の炎が灯り出す。
会場内は、『リゲル殿下万歳‼』一色となったのであった。
――ある一部を除いてだが……。――
「……マーズ殿下、かなりヤバいことになってますよー⁉(ガクブル)」
――灰髪の女性を両手に抱えた漆黒の美女は、そーっと会場内から抜け出して、深い暗闇の中へと消えていくのであった。――
――ここは、トルネード王国の舞踏会場。――
時計の針がちょうど零時を指し示した頃。
絢爛豪華なシャンデリアに、美しい調度品が立ち並ぶ壇上へ、ある男は立っていた。
彼に目を向けている参加者達は皆指定された煌びやかな装束を身に纏い、目元だけを仮面で覆い隠し、異様さにひときわ磨きをかけている。そして、いつもよりもかなり控えめな照明が、不気味な空気感をいい感じに引き立てていた。
多くの参加者達は、壇上へと立つ彼の言葉を今か今かと待ち望んでいる。
「私、月国の王『ユエ』は、友好国として長い付き合いのあるトルネード王国の行く末を深く憂いておりました。」
透き通った、少し高い声音が、会場にいる人々の鼓膜を震わせる。
「痩せた土地によって作物が育たず、度重なる嵐の影響で住居の安全もままならない、資源も乏しいこの悪条件のなか、よくぞここまで持ち堪えられてきましたね。トルネード王国の国民の皆さんは今までに、数えきれないほどの困難辛苦を味わってきたことでしょう。」
どこからともなく、拍手が湧き起こる。
それと同時に、会場内が異常な熱気に包まれた。
発言者である、かの月国の王ユエは、更に続けて言葉を紡ぎ出す。
「しかし、私が来たからにはもう大丈夫です。母国の繁栄を一番に願う、第三王子リゲル殿下のアツい思いに、私の心は強く打ち抜かれました。」
ユエの背後から、長身の美丈夫リゲル殿下が現れた。そして、ユエと力強く握手をして参加者達に手を振る。先ほどの倍以上の拍手で、会場内は盛り上がったのであった。
「本日、我が月国と、友であるトルネード王国とが、より強固な同盟を結ぶことをここに宣言します!」
ワァーーーーーー‼
大きな歓声が会場中に鳴り響く。
「みんな、よく聞いてくれ!」
ユエの横に立つリゲル殿下が一歩前に出て、強くまっすぐな言葉を投げかける。
「トルネード国民からのたくさんの声が、やっと王国議会へと届いた。農作物に関すること、災害に関すること、政治に関すること。全て、国王陛下の耳には入っていて、対処していきたいと考えられている。……しかし、我が国の経済的な技術は、全てにおいて乏しい。……それが原因で、みんなの意見に応えていくことが難しいのが今の現状だ。……そんな中、国王陛下の古くからの親友である月国王『ユエ』陛下からあたたかいお言葉とお力添えをいただいた! 月国では最先端の学問、医療、技術、そして魔法が使用されており、月国民は皆幸福に暮らしているとのことだ。月国との同盟を強固にすることによって、それらの最先端技術を我が国にも取り入れたいと、国王陛下は願っている。……これからは、友である月国王『ユエ』陛下と相談しながら、みんなの望みを少しずつではあるが、叶えていけるよう切磋琢磨することをここに誓う!」
ウオォーーーー‼(リゲル殿下万歳‼)
「皆さん、トルネード王国第三王子リゲル殿下は、まだ若いですが、国民の声をよく聞き、国を良くしようと一生懸命努力をしています。しかし、第一後継者であるマーズ殿下はどうでしょう? 王国議会には出席しない、隣国アデル皇国の言いなりになって、母国を良くするどころか、不利益になることばかりを引き起こしています。誠に遺憾であり、断罪されてしかるべきだとは思いませんか?」
『そうだ、そうだ!』と、どこからか聞こえてくる。人々は、王族がするべきである仕事に携わらない第一王子に、何かしらの不満を持っていた。
「今から言うことを落ち着いて聞いてほしい。……とある筋から、アデル皇国が我が国へ戦争を仕掛けようとしているという情報が入った。現在、真偽を確かめている途中ではあるが、おそらく近い将来、アデル皇国との争いは避けきれないだろう。私は、祖国トルネード王国を、たとえ一人になったとしても、守りぬきたい。……みんな、こんな、非力な私に、力を貸してくれないか? みんなの力が必要なのだ‼」
シーーーーン
……パチ ……パチ ……パチ
パチ、パチ、パチパチパチパチ――‼
どこからともなく、人々の拍手が沸き起こり、やがて、一つの波となった。
人々の心の中に、第三王子リゲル殿下の炎が灯り出す。
会場内は、『リゲル殿下万歳‼』一色となったのであった。
――ある一部を除いてだが……。――
「……マーズ殿下、かなりヤバいことになってますよー⁉(ガクブル)」
――灰髪の女性を両手に抱えた漆黒の美女は、そーっと会場内から抜け出して、深い暗闇の中へと消えていくのであった。――
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