15 / 31
第弐譚
0015:悪は塒(とぐろ)を巻く
しおりを挟む
「皆さん、本日はこの会にお集まり頂き、まことにありがとうございます♪」
――ここは、トルネード王国の舞踏会場。――
時計の針がちょうど零時を指し示した頃。
絢爛豪華なシャンデリアに、美しい調度品が立ち並ぶ壇上へ、ある男は立っていた。
彼に目を向けている参加者達は皆指定された煌びやかな装束を身に纏い、目元だけを仮面で覆い隠し、異様さにひときわ磨きをかけている。そして、いつもよりもかなり控えめな照明が、不気味な空気感をいい感じに引き立てていた。
多くの参加者達は、壇上へと立つ彼の言葉を今か今かと待ち望んでいる。
「私、月国の王『ユエ』は、友好国として長い付き合いのあるトルネード王国の行く末を深く憂いておりました。」
透き通った、少し高い声音が、会場にいる人々の鼓膜を震わせる。
「痩せた土地によって作物が育たず、度重なる嵐の影響で住居の安全もままならない、資源も乏しいこの悪条件のなか、よくぞここまで持ち堪えられてきましたね。トルネード王国の国民の皆さんは今までに、数えきれないほどの困難辛苦を味わってきたことでしょう。」
どこからともなく、拍手が湧き起こる。
それと同時に、会場内が異常な熱気に包まれた。
発言者である、かの月国の王ユエは、更に続けて言葉を紡ぎ出す。
「しかし、私が来たからにはもう大丈夫です。母国の繁栄を一番に願う、第三王子リゲル殿下のアツい思いに、私の心は強く打ち抜かれました。」
ユエの背後から、長身の美丈夫リゲル殿下が現れた。そして、ユエと力強く握手をして参加者達に手を振る。先ほどの倍以上の拍手で、会場内は盛り上がったのであった。
「本日、我が月国と、友であるトルネード王国とが、より強固な同盟を結ぶことをここに宣言します!」
ワァーーーーーー‼
大きな歓声が会場中に鳴り響く。
「みんな、よく聞いてくれ!」
ユエの横に立つリゲル殿下が一歩前に出て、強くまっすぐな言葉を投げかける。
「トルネード国民からのたくさんの声が、やっと王国議会へと届いた。農作物に関すること、災害に関すること、政治に関すること。全て、国王陛下の耳には入っていて、対処していきたいと考えられている。……しかし、我が国の経済的な技術は、全てにおいて乏しい。……それが原因で、みんなの意見に応えていくことが難しいのが今の現状だ。……そんな中、国王陛下の古くからの親友である月国王『ユエ』陛下からあたたかいお言葉とお力添えをいただいた! 月国では最先端の学問、医療、技術、そして魔法が使用されており、月国民は皆幸福に暮らしているとのことだ。月国との同盟を強固にすることによって、それらの最先端技術を我が国にも取り入れたいと、国王陛下は願っている。……これからは、友である月国王『ユエ』陛下と相談しながら、みんなの望みを少しずつではあるが、叶えていけるよう切磋琢磨することをここに誓う!」
ウオォーーーー‼(リゲル殿下万歳‼)
「皆さん、トルネード王国第三王子リゲル殿下は、まだ若いですが、国民の声をよく聞き、国を良くしようと一生懸命努力をしています。しかし、第一後継者であるマーズ殿下はどうでしょう? 王国議会には出席しない、隣国アデル皇国の言いなりになって、母国を良くするどころか、不利益になることばかりを引き起こしています。誠に遺憾であり、断罪されてしかるべきだとは思いませんか?」
『そうだ、そうだ!』と、どこからか聞こえてくる。人々は、王族がするべきである仕事に携わらない第一王子に、何かしらの不満を持っていた。
「今から言うことを落ち着いて聞いてほしい。……とある筋から、アデル皇国が我が国へ戦争を仕掛けようとしているという情報が入った。現在、真偽を確かめている途中ではあるが、おそらく近い将来、アデル皇国との争いは避けきれないだろう。私は、祖国トルネード王国を、たとえ一人になったとしても、守りぬきたい。……みんな、こんな、非力な私に、力を貸してくれないか? みんなの力が必要なのだ‼」
シーーーーン
……パチ ……パチ ……パチ
パチ、パチ、パチパチパチパチ――‼
どこからともなく、人々の拍手が沸き起こり、やがて、一つの波となった。
人々の心の中に、第三王子リゲル殿下の炎が灯り出す。
会場内は、『リゲル殿下万歳‼』一色となったのであった。
――ある一部を除いてだが……。――
「……マーズ殿下、かなりヤバいことになってますよー⁉(ガクブル)」
――灰髪の女性を両手に抱えた漆黒の美女は、そーっと会場内から抜け出して、深い暗闇の中へと消えていくのであった。――
――ここは、トルネード王国の舞踏会場。――
時計の針がちょうど零時を指し示した頃。
絢爛豪華なシャンデリアに、美しい調度品が立ち並ぶ壇上へ、ある男は立っていた。
彼に目を向けている参加者達は皆指定された煌びやかな装束を身に纏い、目元だけを仮面で覆い隠し、異様さにひときわ磨きをかけている。そして、いつもよりもかなり控えめな照明が、不気味な空気感をいい感じに引き立てていた。
多くの参加者達は、壇上へと立つ彼の言葉を今か今かと待ち望んでいる。
「私、月国の王『ユエ』は、友好国として長い付き合いのあるトルネード王国の行く末を深く憂いておりました。」
透き通った、少し高い声音が、会場にいる人々の鼓膜を震わせる。
「痩せた土地によって作物が育たず、度重なる嵐の影響で住居の安全もままならない、資源も乏しいこの悪条件のなか、よくぞここまで持ち堪えられてきましたね。トルネード王国の国民の皆さんは今までに、数えきれないほどの困難辛苦を味わってきたことでしょう。」
どこからともなく、拍手が湧き起こる。
それと同時に、会場内が異常な熱気に包まれた。
発言者である、かの月国の王ユエは、更に続けて言葉を紡ぎ出す。
「しかし、私が来たからにはもう大丈夫です。母国の繁栄を一番に願う、第三王子リゲル殿下のアツい思いに、私の心は強く打ち抜かれました。」
ユエの背後から、長身の美丈夫リゲル殿下が現れた。そして、ユエと力強く握手をして参加者達に手を振る。先ほどの倍以上の拍手で、会場内は盛り上がったのであった。
「本日、我が月国と、友であるトルネード王国とが、より強固な同盟を結ぶことをここに宣言します!」
ワァーーーーーー‼
大きな歓声が会場中に鳴り響く。
「みんな、よく聞いてくれ!」
ユエの横に立つリゲル殿下が一歩前に出て、強くまっすぐな言葉を投げかける。
「トルネード国民からのたくさんの声が、やっと王国議会へと届いた。農作物に関すること、災害に関すること、政治に関すること。全て、国王陛下の耳には入っていて、対処していきたいと考えられている。……しかし、我が国の経済的な技術は、全てにおいて乏しい。……それが原因で、みんなの意見に応えていくことが難しいのが今の現状だ。……そんな中、国王陛下の古くからの親友である月国王『ユエ』陛下からあたたかいお言葉とお力添えをいただいた! 月国では最先端の学問、医療、技術、そして魔法が使用されており、月国民は皆幸福に暮らしているとのことだ。月国との同盟を強固にすることによって、それらの最先端技術を我が国にも取り入れたいと、国王陛下は願っている。……これからは、友である月国王『ユエ』陛下と相談しながら、みんなの望みを少しずつではあるが、叶えていけるよう切磋琢磨することをここに誓う!」
ウオォーーーー‼(リゲル殿下万歳‼)
「皆さん、トルネード王国第三王子リゲル殿下は、まだ若いですが、国民の声をよく聞き、国を良くしようと一生懸命努力をしています。しかし、第一後継者であるマーズ殿下はどうでしょう? 王国議会には出席しない、隣国アデル皇国の言いなりになって、母国を良くするどころか、不利益になることばかりを引き起こしています。誠に遺憾であり、断罪されてしかるべきだとは思いませんか?」
『そうだ、そうだ!』と、どこからか聞こえてくる。人々は、王族がするべきである仕事に携わらない第一王子に、何かしらの不満を持っていた。
「今から言うことを落ち着いて聞いてほしい。……とある筋から、アデル皇国が我が国へ戦争を仕掛けようとしているという情報が入った。現在、真偽を確かめている途中ではあるが、おそらく近い将来、アデル皇国との争いは避けきれないだろう。私は、祖国トルネード王国を、たとえ一人になったとしても、守りぬきたい。……みんな、こんな、非力な私に、力を貸してくれないか? みんなの力が必要なのだ‼」
シーーーーン
……パチ ……パチ ……パチ
パチ、パチ、パチパチパチパチ――‼
どこからともなく、人々の拍手が沸き起こり、やがて、一つの波となった。
人々の心の中に、第三王子リゲル殿下の炎が灯り出す。
会場内は、『リゲル殿下万歳‼』一色となったのであった。
――ある一部を除いてだが……。――
「……マーズ殿下、かなりヤバいことになってますよー⁉(ガクブル)」
――灰髪の女性を両手に抱えた漆黒の美女は、そーっと会場内から抜け出して、深い暗闇の中へと消えていくのであった。――
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。
由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。
しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。
さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。
そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。
「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」
やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった!
しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って?
いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
大金で買われた少女、狂愛の王子の檻で宝石になる ―無自覚な天才調合師は第二王子の婚約者(虫除け)を演じることになりました―
甘塩ます☆
恋愛
「君を金貨三十枚で買ったのは、安すぎたかな」
酒浸りの父と病弱な母に売られた少女・ユナを救ったのは、国中から「放蕩王子」と蔑まれる第二王子・エルフレードだった。
「虫除けの婚約者になってほしい」というエルの言葉を受け、彼の別邸で暮らすことになったユナ。しかし、彼女には無自覚の天才調合師だった。
ユナがその才能を現すたび、エルの瞳は暗く濁り、独占欲を剥き出しにしていく。
「誰にも見せないで。君の価値に、世界が気づいてしまうから」
これは、あまりに純粋な天才少女と、彼女を救うふりをして世界から隠し、自分の檻に閉じ込めようとする「猛禽」な王子の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる