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第3章 運用廃止の危機ですよ!!
4.泊まりだなんて聞いてません!
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お弁当を食べたあと、約束どおり温泉に連れていってやるって車で移動した。
「えっ、ここですか……?」
着いたのは白亜の王宮みたいなホテルで、気後れしてしまう。
「そ、ここ。
ここで温泉入って、伊深はエステで身体磨いて、メシ食って、泊まって帰る」
「泊まるってなんですか!?
聞いてないんですけど!?」
「さあ、なんだろーなー」
はっはっはーとか、わざとらしく笑いながら入っていく滝島さんを追う。
アスレチックで汗を掻くし、シャワーあるから着替えとか用意しとけよ、とは言われた。
それが温泉ホテルで一泊だなんて誰も思わないって!
チェックインを済ませ、部屋に案内される。
洋室ツインの部屋だったけれど、外見と同じでどう見ても安ビジホとは違う。
高級リゾートの部屋だ。
「えっ、ここって高いんじゃ……」
急に自分のお財布事情が心配になってきた。
まだ月半ばまでいっていないから余裕は若干あるけど、これで使ったら今月はもやしと鶏胸で過ごさないといけないかもしれない。
「あー……。
ここ、ミツミが健康事業で提携しているホテルなんだ。
おかげで、社員価格で泊まれるの」
「あっ、そういう……」
と、いうことはあまり心配しなくていいのかな……?
予約してあるからエステに行ってこい、と滝島さんから部屋を追い出された。
「予約っていつしたんだろう……?」
意味がわからないままエステに向かう。
さすがミツミが健康事業で提携しているだけあって、エステでは体脂肪率や筋肉量はもちろん、皮下脂肪の厚さや美脚度なんかまでチェックされた。
「ダイエット中、でしたっけ?
体脂肪率もそんなに高くないですし、筋肉点数もいい感じです。
この調子であと少し頑張ったら大丈夫ですよ」
家のぼろい体重計じゃ減ったようには見えなかったけど、お正月太りした2kgは確実に減っていた。
重く見えるのは筋肉量が多いから、その分締まったでしょ? とか言われれば納得だ。
「滝島さん様々だ……」
さらにエステで磨いてもらい、若干引き締まった気がする。
うん、あと少し頑張ろう。
「戻りました……」
「どうだった?」
滝島さんはもうお風呂を済ませたのか、洗いざらしの髪になっていた。
「控えめに言って最高でした……」
うん、危うく寝落ちそうになっていたもんね。
「ふうん。
エステで体重とか量っただろ」
「はい」
「あれ、うちの最高級体組成計で、二十三万」
「ええっ!?」
いや、MITUMIってマークが付いているのは気づいていた。
それにちょっと載るだけで細かくデータが出て凄いなー、とは思ったけど。
そんなにするんだ、あれ。
「どうだ、欲しくなっただろ」
くいっと眼鏡を上げ、口もとだけで滝島さんがニヤッと笑う。
これはあれか、また私に売りつけようと!?
コーヒーは美味しかったのもあって買ったけど、これはそんなわけにはいきませんよ。
「なーんてな」
よっぽど私が変な顔をしていたのか、滝島さんはおかしそうにくすくす笑っている。
「いくらなんでもあれを買えなんて言わねーよ。
でも体組成計が欲しいって言ってただろ?
明日、帰りに見にいこうぜ」
「は、はぁ……」
この人の冗談は、どこまでが冗談なんだか判断に困るんだよね……。
夕食はフレンチだった。
でもきちんとカロリーなんか計算されている、ヘルシーフレンチなんだって。
「全然そんなふうに見えませんね。
味も」
「だろ」
滝島さんはさっきから、料理の写真を撮っている。
私も個人のアカウントに上げるのに撮っているけど。
滝島さんも同じなのかな。
「美味しかったー。
これでローカロリーとか嘘ですよね」
だって、ちゃんとデザートまで出てきたんだよ?
これで普通のフレンチの半分しかカロリーがないとかいわれても納得できない。
「だろ?
うちの指導と料理長の研究の賜物だ」
いろんな人のおかげで、こんなことが実現しているんだなー。
もう感謝しかないよ。
温泉に入ってきたらいいって言われて大浴場に向かう。
「うわっ、広い……!」
身体を洗いながらふと気づく。
今日は泊まりってことは、あっちのレッスンもあり……?
思わず、身体を擦る手に力が入る。
いや、エステで散々磨いてもらったあとだから大丈夫だとは思うけれど。
泡を流し、外に出てみる。
そこはバラを浮かべたお風呂になっていた。
「贅沢……」
エステ、フレンチ、温泉。
こんな贅沢、していていいのかな……?
「戻りました……」
私が部屋に戻ったとき、滝島さんはベッドに寝転んで本を読んでいた。
こんなところまで本を持ってきて読んでいるのは、なんだか滝島さんっぽい。
「喉、乾いてないか」
「あ、そういえば……」
戻るときに買ってくればよかった、いまから行こうかとか悩んでいたら。
「ほら」
「え、いいんですか」
滝島さんが冷蔵庫から出した、ペットボトルのミネラルウォーターを渡してくれた。
「そうじゃないかと思って買っておいたんだ」
なんでもないふうに笑っているが、なんでこの人はこんな細やかな心配りができるんだろう。
私も、そうなりたい。
「えっ、ここですか……?」
着いたのは白亜の王宮みたいなホテルで、気後れしてしまう。
「そ、ここ。
ここで温泉入って、伊深はエステで身体磨いて、メシ食って、泊まって帰る」
「泊まるってなんですか!?
聞いてないんですけど!?」
「さあ、なんだろーなー」
はっはっはーとか、わざとらしく笑いながら入っていく滝島さんを追う。
アスレチックで汗を掻くし、シャワーあるから着替えとか用意しとけよ、とは言われた。
それが温泉ホテルで一泊だなんて誰も思わないって!
チェックインを済ませ、部屋に案内される。
洋室ツインの部屋だったけれど、外見と同じでどう見ても安ビジホとは違う。
高級リゾートの部屋だ。
「えっ、ここって高いんじゃ……」
急に自分のお財布事情が心配になってきた。
まだ月半ばまでいっていないから余裕は若干あるけど、これで使ったら今月はもやしと鶏胸で過ごさないといけないかもしれない。
「あー……。
ここ、ミツミが健康事業で提携しているホテルなんだ。
おかげで、社員価格で泊まれるの」
「あっ、そういう……」
と、いうことはあまり心配しなくていいのかな……?
予約してあるからエステに行ってこい、と滝島さんから部屋を追い出された。
「予約っていつしたんだろう……?」
意味がわからないままエステに向かう。
さすがミツミが健康事業で提携しているだけあって、エステでは体脂肪率や筋肉量はもちろん、皮下脂肪の厚さや美脚度なんかまでチェックされた。
「ダイエット中、でしたっけ?
体脂肪率もそんなに高くないですし、筋肉点数もいい感じです。
この調子であと少し頑張ったら大丈夫ですよ」
家のぼろい体重計じゃ減ったようには見えなかったけど、お正月太りした2kgは確実に減っていた。
重く見えるのは筋肉量が多いから、その分締まったでしょ? とか言われれば納得だ。
「滝島さん様々だ……」
さらにエステで磨いてもらい、若干引き締まった気がする。
うん、あと少し頑張ろう。
「戻りました……」
「どうだった?」
滝島さんはもうお風呂を済ませたのか、洗いざらしの髪になっていた。
「控えめに言って最高でした……」
うん、危うく寝落ちそうになっていたもんね。
「ふうん。
エステで体重とか量っただろ」
「はい」
「あれ、うちの最高級体組成計で、二十三万」
「ええっ!?」
いや、MITUMIってマークが付いているのは気づいていた。
それにちょっと載るだけで細かくデータが出て凄いなー、とは思ったけど。
そんなにするんだ、あれ。
「どうだ、欲しくなっただろ」
くいっと眼鏡を上げ、口もとだけで滝島さんがニヤッと笑う。
これはあれか、また私に売りつけようと!?
コーヒーは美味しかったのもあって買ったけど、これはそんなわけにはいきませんよ。
「なーんてな」
よっぽど私が変な顔をしていたのか、滝島さんはおかしそうにくすくす笑っている。
「いくらなんでもあれを買えなんて言わねーよ。
でも体組成計が欲しいって言ってただろ?
明日、帰りに見にいこうぜ」
「は、はぁ……」
この人の冗談は、どこまでが冗談なんだか判断に困るんだよね……。
夕食はフレンチだった。
でもきちんとカロリーなんか計算されている、ヘルシーフレンチなんだって。
「全然そんなふうに見えませんね。
味も」
「だろ」
滝島さんはさっきから、料理の写真を撮っている。
私も個人のアカウントに上げるのに撮っているけど。
滝島さんも同じなのかな。
「美味しかったー。
これでローカロリーとか嘘ですよね」
だって、ちゃんとデザートまで出てきたんだよ?
これで普通のフレンチの半分しかカロリーがないとかいわれても納得できない。
「だろ?
うちの指導と料理長の研究の賜物だ」
いろんな人のおかげで、こんなことが実現しているんだなー。
もう感謝しかないよ。
温泉に入ってきたらいいって言われて大浴場に向かう。
「うわっ、広い……!」
身体を洗いながらふと気づく。
今日は泊まりってことは、あっちのレッスンもあり……?
思わず、身体を擦る手に力が入る。
いや、エステで散々磨いてもらったあとだから大丈夫だとは思うけれど。
泡を流し、外に出てみる。
そこはバラを浮かべたお風呂になっていた。
「贅沢……」
エステ、フレンチ、温泉。
こんな贅沢、していていいのかな……?
「戻りました……」
私が部屋に戻ったとき、滝島さんはベッドに寝転んで本を読んでいた。
こんなところまで本を持ってきて読んでいるのは、なんだか滝島さんっぽい。
「喉、乾いてないか」
「あ、そういえば……」
戻るときに買ってくればよかった、いまから行こうかとか悩んでいたら。
「ほら」
「え、いいんですか」
滝島さんが冷蔵庫から出した、ペットボトルのミネラルウォーターを渡してくれた。
「そうじゃないかと思って買っておいたんだ」
なんでもないふうに笑っているが、なんでこの人はこんな細やかな心配りができるんだろう。
私も、そうなりたい。
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