愛している、だから殺した。

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第二章 野間さんが好きです

2-6

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……眠るとまた、さっきと同じ夢を見た。
ただ、違うのは。

「覚えて、ろ」

「忘れますよ、速攻で」

愛未の前に、立ち塞がるように野間が立つ。

「さっさと死んでください」

彼は手を伸ばし、飯田の首をへし折った。
そのあと、いくつも現れる飯田の首も次々に折っていく。

「殺し放題ですね」

などと野間は楽しそうで、怖いというよりも反対におかしくなってきた。

「野間さんって変な人ですね」

「うわっ、愛未さんが笑ってくれた!」

嬉しそうに野間が笑う。
……そこで、目が覚めた。

「おはようございます、よく眠れましたか?」

「……はい」

野間が手を貸してくれるので起き上がる。

「食欲はありますか?
なくても少し、食べましょうね」

一緒に寝室を出ながら、彼をちらり。
夢の中だからユーモラスに感じていたが、いくら死人でも笑いながら殺しまくっていた彼は、実は飯田以上に危ない人なのでは?

朝食は野間が用意してくれた。
自炊はできるらしく、目玉焼きとウィンナーに添えられた野菜、それにトースト。
けれどそれらを見ても、少しも食欲は湧かなかった。

「なにか食べないと倒れてしまいます。
これなら、どうですか?」

冷蔵庫から出してきて小さな容器に、スプーンを添えて野間が差し出してくる。
受け取ったものの食べられる気はまったくしない。
しかし、野間の言うとおり、このままなにも食べずにいれば緩やかに死へ向かっていくだけだ。
蓋を開け、それ――プリンにスプーンを突っ込む。
おそるおそる掬ったプリンを口に入れた。
途端に吐き気が襲ってきたが、かまわずに次々に入れ続ける。

「……ごちそう、さまでし、た」

どうにか、プリン一個を完食できた。
飯田に暴行を受けた日――いや、もっと前からまともに食事はできていなかった。
無理矢理ととはいえプリンひとつ食べられて、一歩だけ前に進めた気がした。

朝食のあと、野間は出勤の用意をしていた。
愛未も会社に行かなければと思うが、動けなかった。

「休みますか?」

「ダメ、ですか……?」

仕事に行って普通に過ごしたほうがいいなどと言われるのだろうか。
不安な気持ちで野間の顔を見上げる。

「いえ。
休むように勧めようと思っていました。
まだ、酷い顔色をしていますから」

そっと野間の手が愛未の顔に触れる。

「今日はゆっくり休んでいてください。
僕もできるだけ早く仕事を終わらせて帰ってきます」

「……ありがとう、ござます」

「愛未さんがお礼を言う必要なんてないんですよ」

愛未の頭を軽くぽんぽんと叩き、野間は出ていった。
ひとりになり、ソファーに倒れ込む。

「……なんであんな、平気そうなんだろう」

まだ、飯田を殺したという恐怖が抜けない。
けれど野間は普通に仕事へ行った。
……違う。
愛未を不安にさせないように野間は普通に振る舞っていたのだ。

「……優しい、人……」

どうしてそこまで、自分にしてくれるのだろう。
私にそんな価値は、ない。
携帯を手に取り、ニュースサイトを漁る。
こんなに早く見つかるとは思えないが、それでも不安だった。
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