愛している、だから殺した。

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

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第二章 野間さんが好きです

2-8

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そのあとは、今後について相談した。

「その。
……野間さんは私を殺したいんですよね?」

だから、自分を助けた。
それ以外に理由はないはずだ。

「んー」

長く発したまま、野間は宙を見ている。
あまりにも長い間そうしているものだからなにかあるのかと見たが、なにもなかった。

「そう、ですね。
僕は愛未さんを殺したいです。
でも、それよりも愛未さんの笑顔が見たいです」

へらっと、実に締まらない顔で野間が笑う。
けれど、彼のそういう気持ちはまったく理解できない。

「さっきも言いましたけど。
しばらくは心のリハビリをしていきましょう。
愛未さんのここは酷く傷ついているので、治療が必要です」

とんとん、と長い指が、愛未の胸を叩く。

「必要なら病院でのカウンセリング等も考えましょう。
僕は愛未さんに笑ってほしいです」

するりと野間の手が愛未の頬を撫で、ゆっくりと視線を上げた。
レンズの向こうから野間が愛未を見ている。
それは悲しんでいて、同時に酷く愛おしそうだった。

「まあ、すぐにあれを忘れるのは無理でしょうし、落ち着かないかとは思います。
でも、僕はあなたのためならなんだってします。
なんだって、です」

愛未を見つめる野間の目は、強い決意に溢れている。
それは、嬉しいけれど。

「どうしてそこまで、私にしてくれるんですか」

「愛未さんが好きだからです」

野間は、即答だった。
確かに、儚くて守りたいところが好きだとは聞いた。
けれどそれは本当に、好きになる理由になるのだろうか。
それに、愛未は自分のそんなところが嫌いなのだ。

「私のどこが、いいんですか」

「僕ひとりに任せず、一緒に来てあの男の死を見届けた強いところです」

真っ直ぐにレンズの向こうから野間が愛未を見ている。
その瞳には一部の揺るぎもない。

「僕ひとりでるつもりでした。
でもあなたは一緒に来て、直接手を下さなかったとはいえ、目を逸らさずに一部始終を見届けた。
そんなあなたの強さに、改めて強く惹かれました」

「……私は、強くなどありません」

あまりに褒められるのは居心地が悪く、思わず目を伏せて視線を逸らしてしまう。

「それにあれは、私が頼んだことなので、最後まで見届けるのが義務だと思っただけで」

「そう考えられるだけでも、愛未さんは強いです。
そして実行に移せる、愛未さんはもっと強い」

野間の言うとおりなのだろうか。
ただ、あのときは無我夢中でそれ以外、考えられなかった。

「強い愛未さんを見て、僕は間違いなく理想の方を好きになったのだと確信しました。
愛未さんならきっと、僕の理想に応えてくれる」

野間は熱く語っているけれど。

「その。
……理想、って?」

「そう、ですね。
それは追い追い、お話しします」

淋しそうに野間が笑い、少し引っかかった。

「それより、お腹空きませんか?
今日はお昼返上で仕事をしていたので、僕はお腹ペコペコで」

自分の腹に手を当て、野間が情けなく笑ってみせる。

「私は……」

そこまで言ったところで愛未の腹が鳴り、一気に顔が熱くなった。
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