愛している、だから殺した。

霧内杳/眼鏡のさきっぽ

文字の大きさ
25 / 29
第四章 それがあなたの愛だと知っていますから

4-1

しおりを挟む
毎日は穏やかに過ぎていく。

「受験票は持ちましたか。
あとは……」

「大丈夫です。
いってきます」

いつまでも心配し続ける野間に苦笑いし、家を出る。
今日はいよいよ、行政書士の資格試験の日だ。

パートの仕事を始めてからも、愛未は勉強を続けていた。
今の仕事には関係ないが、それでも資格を取ってキャリアアップし、転職したい。
それに野間が、資格が取れたら知り合いの事務所を紹介してくれるという。
それも励みになって、勉強を頑張った。
今日はその、成果を試す日だ。

試験会場で今まで学んだことをすべて出し切り、そして。

「ああーっ、疲れた……」

「お疲れ様です」

試験が終わり、野間と待ち合わせをしたカフェでぐったりと紅茶を啜る。

「どうでしたか」

「……たぶん、大丈夫だと……思いたい」

問題集についている模試では、合格点を出せていた。
きっと大丈夫だと信じているが、落ちたときはまた、次回挑戦するだけだ。

「発表は二ヶ月後ですよね。
それまでは忘れて、今までも労を労いましょう」

「はい……」

紅茶を口に運びながら野間は気楽でいいと思ったが、速攻で否定した。
野間だって食後のコーヒーを飲んだあと、いつも遅くまで調べごとや勉強をしている。
彼だってなんの努力もせず、エリート弁護士をやっているわけではないのだ。

「このあと、どうします?」

今日は食事を外でしようと言われたが、まだ少し早い。

「そうですね、街をぶらぶらしましょうか。
僕は頑張った愛未に、なにかご褒美を買いたいです」

「ご褒美って、まだ結果も出てませんよ」

野間が伝票を手に立ち上がる。
愛未もそれに続いた。

「でも、試験は頑張ったでしょう?」

「ありがとうございます」

なにかと愛未を甘やかしたがる野間に、笑ってしまう。
ふたりは一緒に、街を歩きはじめた。

こんな毎日が、ずっと続いていくのだと思っていた。
――しかし。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

白椿の咲く日~ひそかな恋、遠い日の思いは

紫さゆり
恋愛
結婚を控えた真由子は、久しぶりに異母姉の稚子(わかこ)と会う。 真由子の母の雪江は、大学教授であり著名な歌人の水上実之(みなかみさねゆき)の後添いとして水上家に嫁いだ。 婚約者の諒人(りょうと)のことなど、真由子は稚子と色々語り合ううち、庭の白椿の木は真由子がなついていた異母兄、靖之が植えたものだと知る。 白椿の木をめぐっての、ひそかな大人の恋物語です。

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

恋した悪役令嬢は余命一年でした

葉方萌生
恋愛
イーギス国で暮らすハーマス公爵は、出来の良い2歳年下の弟に劣等感を抱きつつ、王位継承者として日々勉学に励んでいる。 そんな彼の元に突如現れたブロンズ色の髪の毛をしたルミ。彼女は隣国で悪役令嬢として名を馳せていたのだが、どうも噂に聞く彼女とは様子が違っていて……!?

政略結婚が恋愛結婚に変わる時。

美桜羅
恋愛
きみのことなんてしらないよ 関係ないし、興味もないな。 ただ一つ言えるのは 君と僕は一生一緒にいなくちゃならない事だけだ。

偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜

紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。 しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。 私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。 近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。 泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。 私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。

【完結】恋人代行サービス

山田森湖
恋愛
就職に失敗した彼女が選んだのは、“恋人を演じる”仕事。 元恋人への当てつけで雇われた彼との二ヶ月の契約が、やがて本物の恋に変わっていく――。

Sランクの年下旦那様は如何でしょうか?

キミノ
恋愛
 職場と自宅を往復するだけの枯れた生活を送っていた白石亜子(27)は、 帰宅途中に見知らぬイケメンの大谷匠に求婚される。  二日酔いで目覚めた亜子は、記憶の無いまま彼の妻になっていた。  彼は日本でもトップの大企業の御曹司で・・・。  無邪気に笑ったと思えば、大人の色気で翻弄してくる匠。戸惑いながらもお互いを知り、仲を深める日々を過ごしていた。 このまま、私は彼と生きていくんだ。 そう思っていた。 彼の心に住み付いて離れない存在を知るまでは。 「どうしようもなく好きだった人がいたんだ」  報われない想いを隠し切れない背中を見て、私はどうしたらいいの?  代わりでもいい。  それでも一緒にいられるなら。  そう思っていたけれど、そう思っていたかったけれど。  Sランクの年下旦那様に本気で愛されたいの。 ――――――――――――――― ページを捲ってみてください。 貴女の心にズンとくる重い愛を届けます。 【Sランクの男は如何でしょうか?】シリーズの匠編です。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

処理中です...