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第三章 ふたりで歩む未来
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野間はホールのケーキと、ダイヤのピアスを買ってきてくれていた。
「ピアス、あけたいと言っていたでしょう?」
ふにふにと耳朶を触る野間の指がくすぐったい。
「言いましたけど……」
ピアスをあけると運命が変わるという話もある。
過去を断ち切るために、ピアスをあけたいとは考えていた。
しかしまだ、実行には移せていない。
「ちゃんとピアッサーも買ってあります」
さらに野間が愛未の手にのせた袋の中には、確かにピアッサーが入っていた。
「あけるかあけないかは愛未の自由です」
黙って、渡されたピアッサーを見つめる。
あけたいと思っていても、きっとこうでもされなければ思い切れなかっただろう。
彼にもらったピアスも無駄にしたくない。
「あけます」
パッケージを破り、中身を出して説明書を読む。
「え、今ここであけるんですか!?」
野間は慌てているが、なにか不都合があるのだろうか。
「はい」
一度、寝室へ行って鏡を取って戻ってくる。
場所を決めて消毒し、ピアッサーを当てた。
「え、今あけなくても……」
「反対に今あけなくてどうするんですか」
心なしか野間が青ざめているように見えるのは、気のせいだろうか。
「じゃあ、いきます」
「怖い怖い怖い怖い!」
「……は?」
あまりの野間の怯え具合に、一旦ピアッサーを外す。
ピアスをあけるのは愛未だというのに、彼はソファーの隅で小さくなっていた。
「えっと……。
あけるのは私ですか?」
「だって、耳に穴をあけるんですよ?
それを見るのは怖いじゃないですか」
「はぁ……」
野間はガタガタ震えている。
人を殺せるのにピアスをあける現場を見るのが怖いなど、わけがわからない。
「じゃあ……寝室であけてきますね」
「……待って」
ソファーから立ち上がったら、腕を掴んで止められた。
「なんかこう、見届けるのが義務というか……」
その割に野間の顔は真っ青だ。
「でも、怖いんですよね?」
「怖いです、怖いですよ。
でも、運命を変えると決めた愛未を、見届けたい気持ちもあります」
怖がっているが、野間は真剣だ。
愛未はソファーに座り直し、改めてピアッサーを手に取った。
「じゃあ、あけますけど。
今度は静かにしていてくださいね?」
「……はい」
野間はらしくなく萎れていて、つい苦笑いしてしまう。
ピアッサーをまた耳に当て、固定した。
「いきます」
「はい」
ピアッサーを押すと同時にバチン!と大きな音がした。
それと呼応して野間が短く悲鳴を上げる。
「反対側もいきますよ」
「はい、お願いします……」
お願いしますって、あけるのは私なんだけど。
軽く心の中でツッコみつつ、同じように反対の耳にも穴をあけた。
また野間が悲鳴を上げ、もう笑いを堪えるのが限界だ。
「そんなに笑わなくても……」
「だって」
野間は不満げだが、そもそもピアスをあけるようにピアッサーを買ってきたのは彼だ。
なのに、ここまで怯えるなんて。
「ピアス、あけたいと言っていたでしょう?」
ふにふにと耳朶を触る野間の指がくすぐったい。
「言いましたけど……」
ピアスをあけると運命が変わるという話もある。
過去を断ち切るために、ピアスをあけたいとは考えていた。
しかしまだ、実行には移せていない。
「ちゃんとピアッサーも買ってあります」
さらに野間が愛未の手にのせた袋の中には、確かにピアッサーが入っていた。
「あけるかあけないかは愛未の自由です」
黙って、渡されたピアッサーを見つめる。
あけたいと思っていても、きっとこうでもされなければ思い切れなかっただろう。
彼にもらったピアスも無駄にしたくない。
「あけます」
パッケージを破り、中身を出して説明書を読む。
「え、今ここであけるんですか!?」
野間は慌てているが、なにか不都合があるのだろうか。
「はい」
一度、寝室へ行って鏡を取って戻ってくる。
場所を決めて消毒し、ピアッサーを当てた。
「え、今あけなくても……」
「反対に今あけなくてどうするんですか」
心なしか野間が青ざめているように見えるのは、気のせいだろうか。
「じゃあ、いきます」
「怖い怖い怖い怖い!」
「……は?」
あまりの野間の怯え具合に、一旦ピアッサーを外す。
ピアスをあけるのは愛未だというのに、彼はソファーの隅で小さくなっていた。
「えっと……。
あけるのは私ですか?」
「だって、耳に穴をあけるんですよ?
それを見るのは怖いじゃないですか」
「はぁ……」
野間はガタガタ震えている。
人を殺せるのにピアスをあける現場を見るのが怖いなど、わけがわからない。
「じゃあ……寝室であけてきますね」
「……待って」
ソファーから立ち上がったら、腕を掴んで止められた。
「なんかこう、見届けるのが義務というか……」
その割に野間の顔は真っ青だ。
「でも、怖いんですよね?」
「怖いです、怖いですよ。
でも、運命を変えると決めた愛未を、見届けたい気持ちもあります」
怖がっているが、野間は真剣だ。
愛未はソファーに座り直し、改めてピアッサーを手に取った。
「じゃあ、あけますけど。
今度は静かにしていてくださいね?」
「……はい」
野間はらしくなく萎れていて、つい苦笑いしてしまう。
ピアッサーをまた耳に当て、固定した。
「いきます」
「はい」
ピアッサーを押すと同時にバチン!と大きな音がした。
それと呼応して野間が短く悲鳴を上げる。
「反対側もいきますよ」
「はい、お願いします……」
お願いしますって、あけるのは私なんだけど。
軽く心の中でツッコみつつ、同じように反対の耳にも穴をあけた。
また野間が悲鳴を上げ、もう笑いを堪えるのが限界だ。
「そんなに笑わなくても……」
「だって」
野間は不満げだが、そもそもピアスをあけるようにピアッサーを買ってきたのは彼だ。
なのに、ここまで怯えるなんて。
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