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第4章 あなたの夢を叶えたい
3.私にできることはないですか
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帰ってきた玲さんと夕食を食べ、ソファーに座って抱き締められて過ごす。
最近は玲さんの腕の中が、凄く居心地のいい空間になっていた。
私の巣よりも。
慣れって怖い。
「それで。
今日はどうやってあーやは不審者を撃退したんだ?」
私の視線をあわせるように、玲さんがあごを持ち上げる。
いつもならおどおどと視線を逸らしていたけれど、今日は真っ直ぐに見るように心がけてみた。
「せ、説明、しただけ、ですよ?
こ、ここは、プライベートエリアだから、出ていってください、って」
「あーやがそれだけできたってだけで凄いな」
ちゅっ、と玲さんの唇が私に唇に軽く触れる。
「でも、それだけじゃないんだろ?」
「そ、それだけです、けど……?」
眼鏡の奥でいつもは氷の瞳を溶かして、玲さんが私を見ていた。
けれど彼がいったい、なにを言いたいのか見当がつかない。
「石塚から聞いた。
颯爽とフランス語で侵入者を撃退したあーやは格好良かった、と」
「颯爽……」
あれのどこが……?
ちょっとだけ気をつけて目を見て、それでもいつもどおりおどおど話しただけなんだけどな……。
「僕も格好いいあーやを見てみたかったな」
「んっ」
ちゅっ、ちゅっ、と二度、唇が触れて離れる。
「あ、あの!」
玲さんの手が私の顔を掴み、臨戦態勢になる前に止めた。
「なんだ?」
不満顔で見られたけれど、気付いていないことにする。
だってこのあとだと、まともに話せなくなるから。
「わ、私に、なにか、できることは、ない、ですか。
その。
……シーツ交換、とか」
「あーやがシーツ交換?」
レンズの向こうで水色の瞳がぱちくりと一度、まばたきした。
「あーやはそんなこと、する必要がない」
気を取り直して玲さんが顔を近づけてくるが、手で押さえて押し留める。
「ま、まて!」
それでも強引にキスをしようとしていた玲さんが、ぴたっ!と止まった。
こういうところはご主人様に忠実なわんこなんだよね。
「シ、シーツ交換は、たとえ、で。
私になにか、できるようなことは、ないです、か?
……人に会わない、仕事、で」
「あー……」
玲さんが天井を仰ぐ。
私はなにか、困らせるようなことを言っているんだろうか。
「あーやはなにか、仕事がしたんだ?」
うんうんと勢いよく肯定する。
「あーやにできる仕事、ね……」
考え込んだ彼を、期待を込めた目で見つめた。
たとえそれがゴミ拾いだってかまわない。
私にさせてくれるっていうのなら。
「あーやはフランス語ができるんだったな」
「は、はい」
それがなにか?
「もらった手紙に返事を書く仕事があるんだが、そこのフランス語のできる人間が最近やめてね。
あーや、やってみるか?」
玲さんがにっこりと笑い、うんうんとまた頷き返した。
手紙を書くだけだったら、私にもできるかもしれない。
「ただし、採用試験は受けてもらうが」
「は、はい。
頑張り、ます!」
そうだよね、コネだけで働かせてもらおうなんて虫がよすぎる。
採用試験、頑張るぞ!
「うん。
試験のことは追って知らせる。
……それにしても今日のあーや、いつもよりも可愛い」
今度こそ玲さんの手が私の顔を掴み、唇が重なる。
ちゅっ、ちゅっ、と軽く唇を啄まれた。
「ちゃんと僕の目を見て話してるからかな」
ちゅっ、とまた唇を啄み、玲さんの親指がそっと私の目尻を撫でる。
「そうやってもっと、昔のあーやに戻るといい……」
今度重なった唇は深く、すぐにぬるりと玲さんが侵入してきた。
じんじんとあたまの芯が甘く痺れ、ぼーっとしてくる。
もう限界、と思ったら、玲さんが離れた。
「ぷはっ」
唇を塞ぐものがなくなり、失った分の酸素を取り込む。
「……みぃっ!?」
ようやく呼吸が落ち着いてきた頃、玲さんから鼻を摘ままれた。
しかもそのまま、左右に揺らしてくるから堪らない。
「だーかーらー。
鼻で息しろって言ってるだろ。
いつになったら慣れるんだ? また手も、遊んでるし」
「ご、ごめん、なさい……」
鼻はヒリヒリと痛むが、それ以上に落ち込んだ。
毎日、練習だってこうやって玲さんとキスをしているが、いまだに言われたとおりにできない。
だって、玲さんが私を夢中にしているうちに、息をするのを忘れるんだもん。
「まあ、そういうあーやが可愛いんだけどな」
はぁっと小さくため息をついた玲さんの手が、後ろあたまに回る。
髪をかき分けてその手が傷痕に触れた。
「この傷はあーやが僕のものだって印だ」
玲さんはこのハゲに触れるのが好きだ。
ことあるごとに触れて、確かめる。
間違いなく私は、玲さんのものだって。
「あーや。
愛してる……」
また、玲さんの唇が重なる。
今度は忘れないうちに腕をその首に回した。
玲さんの想いが、私の隅々まで満ちていく。
だから自信ができて今日、あんなことができたのかもしれない。
「はぁっ、はぁっ……」
ぐったりと彼の胸に寄りかかり、荒い息を繰り返す。
ぼんやりとなったあたまではなにも考えられない。
「んー、まだ先にには進めないなー」
くすくすと笑いながら、玲さんが私を抱え上げる。
そのまま、お姫様抱っこで寝室まで運ばれた。
「今日は騒ぎがあって疲れただろ。
おやすみ」
瞼に口付けを落とされ、目を閉じる。
玲さんの愛に満たされた身体は心地いい。
なにも返せない私はせめて、彼の役に立ちたい。
試験に受かって採用されたら、少しは玲さんのお役に立てるのかな……。
最近は玲さんの腕の中が、凄く居心地のいい空間になっていた。
私の巣よりも。
慣れって怖い。
「それで。
今日はどうやってあーやは不審者を撃退したんだ?」
私の視線をあわせるように、玲さんがあごを持ち上げる。
いつもならおどおどと視線を逸らしていたけれど、今日は真っ直ぐに見るように心がけてみた。
「せ、説明、しただけ、ですよ?
こ、ここは、プライベートエリアだから、出ていってください、って」
「あーやがそれだけできたってだけで凄いな」
ちゅっ、と玲さんの唇が私に唇に軽く触れる。
「でも、それだけじゃないんだろ?」
「そ、それだけです、けど……?」
眼鏡の奥でいつもは氷の瞳を溶かして、玲さんが私を見ていた。
けれど彼がいったい、なにを言いたいのか見当がつかない。
「石塚から聞いた。
颯爽とフランス語で侵入者を撃退したあーやは格好良かった、と」
「颯爽……」
あれのどこが……?
ちょっとだけ気をつけて目を見て、それでもいつもどおりおどおど話しただけなんだけどな……。
「僕も格好いいあーやを見てみたかったな」
「んっ」
ちゅっ、ちゅっ、と二度、唇が触れて離れる。
「あ、あの!」
玲さんの手が私の顔を掴み、臨戦態勢になる前に止めた。
「なんだ?」
不満顔で見られたけれど、気付いていないことにする。
だってこのあとだと、まともに話せなくなるから。
「わ、私に、なにか、できることは、ない、ですか。
その。
……シーツ交換、とか」
「あーやがシーツ交換?」
レンズの向こうで水色の瞳がぱちくりと一度、まばたきした。
「あーやはそんなこと、する必要がない」
気を取り直して玲さんが顔を近づけてくるが、手で押さえて押し留める。
「ま、まて!」
それでも強引にキスをしようとしていた玲さんが、ぴたっ!と止まった。
こういうところはご主人様に忠実なわんこなんだよね。
「シ、シーツ交換は、たとえ、で。
私になにか、できるようなことは、ないです、か?
……人に会わない、仕事、で」
「あー……」
玲さんが天井を仰ぐ。
私はなにか、困らせるようなことを言っているんだろうか。
「あーやはなにか、仕事がしたんだ?」
うんうんと勢いよく肯定する。
「あーやにできる仕事、ね……」
考え込んだ彼を、期待を込めた目で見つめた。
たとえそれがゴミ拾いだってかまわない。
私にさせてくれるっていうのなら。
「あーやはフランス語ができるんだったな」
「は、はい」
それがなにか?
「もらった手紙に返事を書く仕事があるんだが、そこのフランス語のできる人間が最近やめてね。
あーや、やってみるか?」
玲さんがにっこりと笑い、うんうんとまた頷き返した。
手紙を書くだけだったら、私にもできるかもしれない。
「ただし、採用試験は受けてもらうが」
「は、はい。
頑張り、ます!」
そうだよね、コネだけで働かせてもらおうなんて虫がよすぎる。
採用試験、頑張るぞ!
「うん。
試験のことは追って知らせる。
……それにしても今日のあーや、いつもよりも可愛い」
今度こそ玲さんの手が私の顔を掴み、唇が重なる。
ちゅっ、ちゅっ、と軽く唇を啄まれた。
「ちゃんと僕の目を見て話してるからかな」
ちゅっ、とまた唇を啄み、玲さんの親指がそっと私の目尻を撫でる。
「そうやってもっと、昔のあーやに戻るといい……」
今度重なった唇は深く、すぐにぬるりと玲さんが侵入してきた。
じんじんとあたまの芯が甘く痺れ、ぼーっとしてくる。
もう限界、と思ったら、玲さんが離れた。
「ぷはっ」
唇を塞ぐものがなくなり、失った分の酸素を取り込む。
「……みぃっ!?」
ようやく呼吸が落ち着いてきた頃、玲さんから鼻を摘ままれた。
しかもそのまま、左右に揺らしてくるから堪らない。
「だーかーらー。
鼻で息しろって言ってるだろ。
いつになったら慣れるんだ? また手も、遊んでるし」
「ご、ごめん、なさい……」
鼻はヒリヒリと痛むが、それ以上に落ち込んだ。
毎日、練習だってこうやって玲さんとキスをしているが、いまだに言われたとおりにできない。
だって、玲さんが私を夢中にしているうちに、息をするのを忘れるんだもん。
「まあ、そういうあーやが可愛いんだけどな」
はぁっと小さくため息をついた玲さんの手が、後ろあたまに回る。
髪をかき分けてその手が傷痕に触れた。
「この傷はあーやが僕のものだって印だ」
玲さんはこのハゲに触れるのが好きだ。
ことあるごとに触れて、確かめる。
間違いなく私は、玲さんのものだって。
「あーや。
愛してる……」
また、玲さんの唇が重なる。
今度は忘れないうちに腕をその首に回した。
玲さんの想いが、私の隅々まで満ちていく。
だから自信ができて今日、あんなことができたのかもしれない。
「はぁっ、はぁっ……」
ぐったりと彼の胸に寄りかかり、荒い息を繰り返す。
ぼんやりとなったあたまではなにも考えられない。
「んー、まだ先にには進めないなー」
くすくすと笑いながら、玲さんが私を抱え上げる。
そのまま、お姫様抱っこで寝室まで運ばれた。
「今日は騒ぎがあって疲れただろ。
おやすみ」
瞼に口付けを落とされ、目を閉じる。
玲さんの愛に満たされた身体は心地いい。
なにも返せない私はせめて、彼の役に立ちたい。
試験に受かって採用されたら、少しは玲さんのお役に立てるのかな……。
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