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第8話 焼き肉デート
4.ショッピング
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夜になるまで買い物をしようと、二、三軒お店を回った。
どこの店でも奥の個室に通され、お茶と茶菓子付き。
なにも云わなくても尚一郎の欲しいものがわかっているのか、商品が運ばれてくる。
場所が自宅か店かの違いだけで、いつもと同じお買い物スタイル。
云われるがままに試着して、尚一郎があーでもないこうでもないと云ってるうちにはまだいいが、気がつくと好みのデザインにセミオーダー、などと決まっていていまだに冷や汗をかく。
「朋香は欲しいもの、ないのかい?
僕はもっと、おねだりして欲しいんだけど」
「え、えーっと……」
すでに今日、服や靴、アクセサリーをいくつお買い上げしたのかわからない。
だいたい、自分の感覚で多少贅沢、くらいのものならまだ遠慮なく買えるが、給料何ヶ月分!? なんてものは、無理。
いくら贅沢していいって云われても、無理。
「朋香のそういうところがreizend(可愛い)なんだけどね」
人前なのにちゅっ、ちゅっと何度も口付けを落とされて焦ってしまう。
どうにか引き剥がすと、尻尾ふりふりわんこモードで見てて、苦笑いしかできない。
少し気持ちを落ち着けようと、淹れられていたアイスティを飲む。
グラスを置こうとして、視界の端に好みのサンダルが見えた。
「あのサンダル、いいですね」
「あれかい?」
あっという間にサンダルが目の前に置かれた。
足首をベルトでホールドするタイプのサンダル。
ヒールの高さもさほどなく、普段使いによさそう。
「履いて見るかい?」
「はい」
サイズが確認されて、白手袋の店員が履かせてくれる。
履いてみるとしっくり足に馴染んだ。
それに、今日の服に合っている気がする。
「気に入ったのかい?」
「はい」
「じゃあ、これも追加しよう」
……きっと、いつも私が買う靴より少し高いくらいのはず。
うきうきとそのまま履いて店を出た朋香だったが。
あとで自分の初任給とあまり変わらない値段だと知って衣装室の肥やしにしそうになった。
けれど尚一郎から、似合っていたからもっと履いて見せてとせがまれて、比較的気軽に履くようになる。
どこの店でも奥の個室に通され、お茶と茶菓子付き。
なにも云わなくても尚一郎の欲しいものがわかっているのか、商品が運ばれてくる。
場所が自宅か店かの違いだけで、いつもと同じお買い物スタイル。
云われるがままに試着して、尚一郎があーでもないこうでもないと云ってるうちにはまだいいが、気がつくと好みのデザインにセミオーダー、などと決まっていていまだに冷や汗をかく。
「朋香は欲しいもの、ないのかい?
僕はもっと、おねだりして欲しいんだけど」
「え、えーっと……」
すでに今日、服や靴、アクセサリーをいくつお買い上げしたのかわからない。
だいたい、自分の感覚で多少贅沢、くらいのものならまだ遠慮なく買えるが、給料何ヶ月分!? なんてものは、無理。
いくら贅沢していいって云われても、無理。
「朋香のそういうところがreizend(可愛い)なんだけどね」
人前なのにちゅっ、ちゅっと何度も口付けを落とされて焦ってしまう。
どうにか引き剥がすと、尻尾ふりふりわんこモードで見てて、苦笑いしかできない。
少し気持ちを落ち着けようと、淹れられていたアイスティを飲む。
グラスを置こうとして、視界の端に好みのサンダルが見えた。
「あのサンダル、いいですね」
「あれかい?」
あっという間にサンダルが目の前に置かれた。
足首をベルトでホールドするタイプのサンダル。
ヒールの高さもさほどなく、普段使いによさそう。
「履いて見るかい?」
「はい」
サイズが確認されて、白手袋の店員が履かせてくれる。
履いてみるとしっくり足に馴染んだ。
それに、今日の服に合っている気がする。
「気に入ったのかい?」
「はい」
「じゃあ、これも追加しよう」
……きっと、いつも私が買う靴より少し高いくらいのはず。
うきうきとそのまま履いて店を出た朋香だったが。
あとで自分の初任給とあまり変わらない値段だと知って衣装室の肥やしにしそうになった。
けれど尚一郎から、似合っていたからもっと履いて見せてとせがまれて、比較的気軽に履くようになる。
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