天才魔導師と秀才魔法剣士を(いろんな意味で)癒すのがお仕事です

うづきなな

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夢じゃない

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 カイとシエルに散々イかされたゼリンダは気を失うように眠ってしまった。次に気がついたときは、自室のベッドで横たわっていた。カイの言った通り、三人でセックスをしたのであの部屋から出られたらしい。
 布団はかけていたが裸のままで、下腹部がダル重い。足を動かすと膣口からとろりと何かが流れ出る感覚があった。あの甘くとろけてしまう淫靡な時間が夢ではなかった証拠だ。
「あ、起きてる」
 すっかり身だしなみを整えたシエルが部屋に入ってきた。ゼリンダが起き上がろうとすると、穏やかな微笑みを浮かべて制止する。
「まだ辛いだろうから、横になってて」
「あ、ありがとうございます」
 照れながらベットに戻るゼリンダは頬が熱いと自覚する。
「こちらこそありがとう」
 赤くなったゼリンダがかわいいと思ったシエルは流れるように彼女の額にキスを落とした。予想外のシエルの行動にゼリンダは茹でダコのように全身真っ赤に染めた。それがまたかわいらしいとシエルは微笑ましい気持ちになる。
「ゼリンダさんは俺にとっては女神みたいな人だから。これからもよろしくね」
 この整った顔で、かっこいい声に優しくこんなことを言われて、老若男女、ほとんどの人間は舞い上がってしまうのではないかとゼリンダは思う。現にゼリンダは舞い上がっていた。
「はい……。ありがとうございます……。できるだけ優しくエッチしていただけると嬉しいです……」
 上擦る声でとんでもない願望を口にした自覚はあった。ゼリンダはもう好きになっていたが、シエルにとっては魔法石を浄化できる女でしかないかもしれない。しかしシエルはゼリンダが期待してしまう穏やかで華やかな微笑みで返してくれる。
「善処します」
 シエルはゼリンダの茶色の長い髪をすくい上げて口づけた。とても絵になる。ゼリンダはときめきながら凝視する。目が合うと、どちらからともなくくすくす笑っていた。この空気感を好ましいと互いに感じていた。
「魔法石は大丈夫?」
 聞かれて初めて、ゼリンダの澱を取り除く能力は魔法なのかと気がつく。左手の甲に存在するゼリンダの魔法石を可視化すると、透明な石が七色の輝きを放っていた。
「なにこれ……」
 自分の魔法石とは思えない。これまでのゼリンダの魔法石は濁ってはいないが特に輝きもない白い石だった。
「ゼリンダが覚醒したってことだろ」
 床からカイの声が聞こえてゼリンダは驚く。床に転がっていたカイは衣服は整えていた。起き上がってゼリンダの左手をつかむ。
「いい色」
 嬉しそうに口角を上げたカイはゼリンダの魔法石にキスをする。無邪気な空気をまとうカイにゼリンダの胸は高鳴った。
「ゼリンダが今まで使えなかった回復魔法が、できるようになるはず。王都で指導者を紹介する。澱の浄化ができることは誰にも言うなよ。方法知られたら誰彼構わずヤラされるぞ」
 カイの忠告にゼリンダは青くなった。そして何度も首を縦に振る。
「俺たちだけにしとけ。俺も、あんたの力が気づかれないようにしとくから」
 艶のあるカイの視線にドキリとして、ゼリンダは子供のようにこくりとうなずいた。


 しばらく休んでから、ゼリンダはカイとシエルと共に村長の家を訪ねた。ふたりについて行く決断を伝えた。村長夫妻は喜んでゼリンダを応援すると言ってくれた。ゼリンダはこれまで本当に世話になったことに感謝を伝えた。村長はカイとシエルにゼリンダをよろしくと、父親代わりに言ってくれた。
 そんなこんなで、村長の家から出たときにはすっかり夜になっていた。ゼリンダのなじみの飲食店で夕飯を済ませる。
 店を出て、ゼリンダはカイとシエルを宿へ送ろうと思った。
「ふたりの今日の宿はどこですか?」
 村にもいくつか宿泊施設がある。
「まだ決められてないんだ」 
「ゼリンダの家に泊めて」
 カイのさらりとした一言で今夜の宿が決まった。
「わかり、ました」
 ゼリンダは緊張したが、同時にまたあの淫らな時間が過ごせるのではないかと期待する。あれから魔法を使っていないから浄化は必要ないので何もないかもしれない。カイはどんなつもりで言ったのかともやもやしたが探りを入れるスキルをゼリンダは持ち合わせていなかった。
「百面相」
 村長の家での少しお姉さんぶった顔、食事をしていたときの幸せそうな顔、今のカチコチになったゼリンダの顔を見てカイはニヤリと笑ってつぶやく。表情豊かで見ていて飽きなかった。
 カイはどうやら本当に寝床を確保したかっただけだとゼリンダは理解する。下手なことを口にすればゼリンダだけが抱いた下心に気づかれそうで何も言い返せず、少し頬を膨らませて黙り込んだ。
「泊めてもらうお礼は何がいいかな?」
 シエルも純粋に質問していた。性欲にまみれているのは私だけなのかとゼリンダは頭を抱えたくなる。確かに魔法石はすっかり浄化されて、ゼリンダの力は必要ないかもしれない。
 だがゼリンダが初体験後の午睡から目覚めたときにシエルが女神のようだと言ってくれたことに一縷の望みを賭けて、ゼリンダはドキドキしながら彼の手を取る。気遣いの人っぽいシエルなら気づいてくれそうだと思った。女神だと言うのだから、期待に応えてくれるのではないか。ゼリンダの予想通り、シエルは彼女の望むお礼に勘づいて目を瞠った。
「……良いの?」
 夜目にもわかるぐらい頬を朱色に染めたゼリンダはうなずく。その横顔を見つめて、シエルはそっと微笑んだ。カイはシエルとゼリンダの間に流れる甘い空気に気づいていない様子で空を見上げて歩いている。
「お礼じゃなくて、俺へのご褒美になっちゃうな」
 シエルに耳元で低声で甘くささやかれて、ゼリンダは腰砕けになる。崩れ落ちそうになったゼリンダをカイとシエルが咄嗟に両側から支えた。
「どうした? 大丈夫か?」
 シエルだけではなく、カイまで優しかったことにゼリンダはときめいてしまう。自分だけが煩悩でいっぱいなことに罪悪感すら抱いた。
「大丈夫です……」
 頭の中がぐちゃぐちゃのまま、ゼリンダは自宅に到着した。いちゃいちゃするのは魔力を高めるため、決して色ボケているだけではないと自分に言い訳をしながら風呂に入る。
 部屋着になったゼリンダが風呂から出てリビングへに顔を出すと、すぐにシエルが風呂へ移動した。
「待ってて」
 すれ違いざまにシエルはゼリンダの唇に軽やかなキスをしてくれる。サービス満点でゼリンダは嬉しくなった。
 リビングでゼリンダはカイとふたりきりになった。カイはソファに座って静かに書物に視線を落としている。ゼリンダはどうするか悩んで、カイのすぐ隣に腰を下ろした。彼の読む本を覗き込んだが、この国の言葉ではない文字の羅列で内容はわからなかった。
 ゼリンダに気づいたカイは本を読み続けたまま姿勢を変えて、ゼリンダの肩に頭を預ける。
「あの……カイ、さん」
「何?」
 視線は古い魔導書に落としたまま、カイはゼリンダの呼びかけに応える。
「また、魔力の流れを感じる練習を……したい、です」
「たくさんした方が良い」
 カイから返事は来るが、これは通じていない。ゼリンダは緊張しながらもう一歩踏み込んだ発言をしようと決めた。
「その……カイさんに、触ってもらって」
「今も触ってるけど」
「ええと、その、もっと濃厚な……」
「ああ」
 ようやくゼリンダのおねだりを理解したカイは本にしおりを挟んで閉じる。
「ヤりたいってこと?」
「う……。はい。そう、です」
 カイの言う通りなのだが、包み隠さない言い方がゼリンダは恥ずかしくてうつむいた。
「敬語、いらない」
 ふ、と小さく笑ったカイは大きな手でゼリンダの頬を包みこんで口づける。その笑顔の無垢さにゼリンダの胸はキュンとなった。
「遠回しだと俺、気づかないから、わかりやすい言葉で言って」
「……はい」
 うなずいたゼリンダにカイは再びキスをする。
「また敬語」
 くすくすと笑いながらカイはゼリンダの耳殻を甘噛みした。
「あっ……は……ァん」
 甘い痺れにゼリンダはビクリと反応する。耳から首筋へとカイの唇が滑るとゼリンダの身体から力が抜けた。カイはソファの座面にゼリンダを横たわらせる。
「次、敬語出たら、エロいお仕置きする」
「えっ! そんなぁ……」
 ゼリンダはつい敬語で抗議してしまいそうになったので続く言葉は飲み込む。
「あんた、素直でかわいいな」
 カイの笑顔でのささやきにゼリンダの身体中がきゅうと反応する。
「ふしだらでごめんなさい……」
「ゼリンダにはセックス好きになってもらわないと困るからいいと思う」
 ゼリンダは耳と首が弱いと気づいたカイは集中的にそこへキスをしたり甘噛みをする。男らしい無骨で大きな手をゼリンダの部屋着の中に侵入させて乳房をもみしだいた。
「ふぁ……ァアアん♡」
 ゼリンダの愛らしさと柔らかさと甘さにカイの雄の本能が刺激される。陰茎海綿体へ血液が一気に流入した。
 文献でしか見たことのない能力を有していた女性だから興味を持った。まだ短い時間しか過ごしていないが明るく素直で愛らしいのに、妙なところで大胆で潔いところに好感を抱いている。誰かにこんな感情を抱く自分をカイは経験したことがなかった。
 カイは性的興奮で息が荒くなっていた。自分の身体の反応もおもしろい。早くゼリンダの素肌に触れたい。繋がりたい。カイはゼリンダを全裸にした。白く輝くような肌に視線が縫い止められる。
「あんまり見ないで……」
 照れるゼリンダがかわいくて、一刻も早く肌を重ねたいと自らも全てを脱ぎ捨てた。
「無理。いっぱい見る」
 ゼリンダの蜜壺はにそっと触れると、すでに蜜をあふれさせていた。
「もう濡れてる」
 カイは甘露に濡れた指先を味わうように舐める。シエルに蜜壺を愛でられて気持ち良さそうに啼いていたゼリンダの姿を思い出した。あれがゼリンダの官能を引き出すと考えたカイは、彼女の鳩尾から腹へとキスを落としていく。
「あ……ぁっ」
 腰をくねらせているが、ゼリンダの喘ぎにまだ余裕がある。カイは膣口にキスをして、愛液を舐め取った。
「ひゃんッッ♡」
 声も反応も一段上がった。性感帯としてここは特に弱点かと分析しながら、カイは花芽を舌先でつつく。
「やぁん……っ」
「嫌なのか?」
「ぃ、やじゃ……ぁぁ、ない、けどぉ……ッ♡ おかしく、な、りゅぅぅんんん♡♡」
 ゼリンダが軽く気をやったのがわかってカイは嬉しくなる。ムクムクと探究心が湧いてきた。
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