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ほんとのであい

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 皆さんは、趣味はありますか? 私の父は釣りが好きだし、母はよく編み物をしています。兄は体を動かすことが好きです。そして私は本が好きです。

 私と本の出会いはずっと前。小さい頃に両親が絵本を読んでくれたことがきっかけで好きになった。寝る前のそのひとときは家族との温かい時間だったし、絵本の登場人物(たまに動物だったけれど)が短い話の中で成長したり、良い方向に変わって行ったりするのを見るのはとても興味深かった。だから私は絵本が大好きだった。幼稚園生の頃は近くの図書館の読み聞かせ会に毎回参加していた。家にない絵本が出てくることもあるし、両親とは違う人が読むので同じ本でも読むスピードや声量、感情の込め方が違ってとても面白かった。

 そして小学生になって、伝記漫画を読むようになった。その人の一生を面白く学ぶことができて、何度も何度も読んだ。そして小説も読むようになった。最初は大きい文字であまりページがないものから読み始め、徐々に文字は小さく、本は厚くなっていった。近くの図書館に頻繁に通い、片っ端から読んだ。おすすめコーナーは新しくなるたびに行ったし、図書館で働いている人たちには顔も名前も覚えられるようになった。もちろん学校の図書館にも行った。休み時間の度にそこにいるので有名人になった。そのおかげでおすすめの本を紹介してくれる先輩たちもいたので、最初は惹かれなかった本も嫌だなとは思わずに楽しく読むことができた。6年間で、学校の図書館の本は全て読み、面白かったものは何回か読んだりした。

 図書館にはたくさん行ったけれど本屋にはあまり行かなかった。図書館の本をたくさん読んでいて、本を買っても読む時間がないと思ったから。でも、毎年1月1日だけは行った。本の福袋が販売されるからだ。まだ読んだことのない本はもちろん、あまり好きにはなれないジャンルの本が好きになれたらいいな、という思いもあっていつもお年玉で買っていた。そこで、同じくらいの年の男の子を毎年見かけた。本当は話しかけたかったし、周りに本好きがほとんどいないので本友達になりたいなとも思っていた。けれど、福袋を手に取ったらすぐに消えてしまう彼に話しかけることはできなかった。

 中学生になったら、図書館の規模が小学校と違い驚いた。そして、読むスピードも理解するスピードも速くなっていたので、小学校より短い時間で小学校より多い本を全部読んだ。そこには読んだことのある本もたくさんあったけれど、懐かしみながら読んだ。だいぶ前に読んでトリックを忘れていたミステリー小説では、初めて読んだ時のような驚きを再び体験できて、あの時もここに感動したな、と思い出すことができた。そして2年生の頃からお小遣いを持って毎月2回ほど本屋へ行き、本を買うようになった。店員さんたちが作るおすすめコーナーや興味を惹かれるポップに感動し、いつもいつも予定金額をオーバーしそうになりながらなんとか予算内に収めていた。もちろん福袋も買った。どんな本が入っているかワクワクするあの気持ちは、いつまで経っても私の心の中にある。毎年どんな本が入っているのかドキドキしながら袋を開けるのが私のお正月だ。

 高校生になっても私は本が好きだろう。そして本というものによって私の人生がこんな風になるなんて、この時の私は想像していなかった。
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