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高校時代
①@カフェ(1)
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「お母さん、私バイトしたい!」
高校1年の冬。私は母にそうお願いしていた。本が好きな私は、毎週のように本屋に行き新刊を買ったり、読んでみたいけれど絶版になっている本を古本屋で見つけては買っている。最近はミステリーにハマり、海外の作品も買うようになってお金が足りなくなっているのだ。我慢することはできないし、お小遣いはもう十分すぎるくらいもらっている(双子の兄・匠は同じ金額でたくさん貯金できているから)のでこれ以上上げて欲しいなんて言えない。だから、自分でお金を貯めるしかない、と思った私は母にそう言ったのだった。
「あなた部活してないし、勉強を疎かにしないならいいんじゃない? まあ、怪しいバイト先だけは選ばないでね」
と言ってくれたので、早速バイト先を探すことになったのだが。
「あー! 高校生不可! こっちも!」
そう。家から近く、給料もいい感じのところはだいたい高校生不可なのだ。どうしよう、と悩んで数日。私がバイト探しに苦戦していると知った兄があるカフェを紹介してくれた。
「俺の友人の幼馴染の人がやってるところ。その人すごく素敵な人だから怪しくないし、前行ったら雰囲気も良くてご飯もおいしかったよ。バイト募集中で高校生もOKって言ってたから大丈夫だと思うよ」
友人が誰だか分からないけれど。その人と幼馴染でありがとう、と心の中でお礼を言った。そして翌日に、私は早速そのカフェに行った。
「わあ」
大通りから1本入ったところにあるカフェ。おしゃれなところで、老若男女問わず入りたい、と思わせるような外観だった。
からんからん
ドアを開けると、30歳くらいだろうか。髭を生やしたイケメンがエプロンをつけて机を拭いていた。ちょうど良いタイミングでお客さんは誰もいなかったので、私は勢いよく頭を下げてこう言った。
「ここで働かせてください!」
そう頭を下げてから、これは良くなかったのでは? と思った。急にこんなこと言ったらダメだったか。まずは、バイト募集のお知らせを見て、とか言わなきゃいけなかった? 後悔していたらその人が返事をしてくれた。
「もしかして橋水くんの妹さん? 昨日、バイト募集しているって話をしたら『近いうちに妹が来るかもしれません』って言ってたけど」
(兄ちゃん、グッジョブ!)
「はい! 突然すみません。兄から聞いてこちらでアルバイトをしたいと思っています」
「そっか、ありがとうね。あんまり人が集まらなくて困ってたんだ」
そう言ってその人は、「明日時間あるかな? 明日の13時にまた来てくれる? その時に詳しい話をしよう」と言ってくれた。そして私は、そのカフェでケーキと紅茶を頼んで1時間ほど滞在した後、家に帰ったのだった。
次の日。土曜日の13時。私は再びあのカフェを訪れていた。土曜日は13時から一時閉店らしく、CLOSEDの札がかかっていたが、昨日の人が入れてくれた。
「昨日ぶりだね。私は松暮です」
「橋水美紗です。よろしくお願いいたします」
「うん、よろしく。早速だけど、採用!」
「え、いいんですか?」
「うん。知り合いのお友達の妹さんだし、ここってあんまり人こなくてさ、今私と店員1人とアルバイト1人で回してるんだ。流石に足りなさすぎて大変な状況だから、こちらとしても嬉しいわけよ」
そう言ってくれた松暮さんは、色々と注意点などを話してくれ、月曜日に初めてのバイトが決まったのだった。
高校1年の冬。私は母にそうお願いしていた。本が好きな私は、毎週のように本屋に行き新刊を買ったり、読んでみたいけれど絶版になっている本を古本屋で見つけては買っている。最近はミステリーにハマり、海外の作品も買うようになってお金が足りなくなっているのだ。我慢することはできないし、お小遣いはもう十分すぎるくらいもらっている(双子の兄・匠は同じ金額でたくさん貯金できているから)のでこれ以上上げて欲しいなんて言えない。だから、自分でお金を貯めるしかない、と思った私は母にそう言ったのだった。
「あなた部活してないし、勉強を疎かにしないならいいんじゃない? まあ、怪しいバイト先だけは選ばないでね」
と言ってくれたので、早速バイト先を探すことになったのだが。
「あー! 高校生不可! こっちも!」
そう。家から近く、給料もいい感じのところはだいたい高校生不可なのだ。どうしよう、と悩んで数日。私がバイト探しに苦戦していると知った兄があるカフェを紹介してくれた。
「俺の友人の幼馴染の人がやってるところ。その人すごく素敵な人だから怪しくないし、前行ったら雰囲気も良くてご飯もおいしかったよ。バイト募集中で高校生もOKって言ってたから大丈夫だと思うよ」
友人が誰だか分からないけれど。その人と幼馴染でありがとう、と心の中でお礼を言った。そして翌日に、私は早速そのカフェに行った。
「わあ」
大通りから1本入ったところにあるカフェ。おしゃれなところで、老若男女問わず入りたい、と思わせるような外観だった。
からんからん
ドアを開けると、30歳くらいだろうか。髭を生やしたイケメンがエプロンをつけて机を拭いていた。ちょうど良いタイミングでお客さんは誰もいなかったので、私は勢いよく頭を下げてこう言った。
「ここで働かせてください!」
そう頭を下げてから、これは良くなかったのでは? と思った。急にこんなこと言ったらダメだったか。まずは、バイト募集のお知らせを見て、とか言わなきゃいけなかった? 後悔していたらその人が返事をしてくれた。
「もしかして橋水くんの妹さん? 昨日、バイト募集しているって話をしたら『近いうちに妹が来るかもしれません』って言ってたけど」
(兄ちゃん、グッジョブ!)
「はい! 突然すみません。兄から聞いてこちらでアルバイトをしたいと思っています」
「そっか、ありがとうね。あんまり人が集まらなくて困ってたんだ」
そう言ってその人は、「明日時間あるかな? 明日の13時にまた来てくれる? その時に詳しい話をしよう」と言ってくれた。そして私は、そのカフェでケーキと紅茶を頼んで1時間ほど滞在した後、家に帰ったのだった。
次の日。土曜日の13時。私は再びあのカフェを訪れていた。土曜日は13時から一時閉店らしく、CLOSEDの札がかかっていたが、昨日の人が入れてくれた。
「昨日ぶりだね。私は松暮です」
「橋水美紗です。よろしくお願いいたします」
「うん、よろしく。早速だけど、採用!」
「え、いいんですか?」
「うん。知り合いのお友達の妹さんだし、ここってあんまり人こなくてさ、今私と店員1人とアルバイト1人で回してるんだ。流石に足りなさすぎて大変な状況だから、こちらとしても嬉しいわけよ」
そう言ってくれた松暮さんは、色々と注意点などを話してくれ、月曜日に初めてのバイトが決まったのだった。
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