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高校時代
①@カフェ(2)
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アルバイトを始めて数週間。最初は色々と手間取ってしまったけれど、常連さんが「ゆっくりで大丈夫よ」「焦らなくていいよ」と言ってくれたし、私の教育係となった白川くんが「1歩ずつ進んでいけばいいだろ」と言ってくれて、なんとかやっている。兄や私の友人たちもよく様子を見に来てくれて、少し恥ずかしい部分はあるけれど、「頑張ってね」といつも声をかけてくれるので来てくれるのを楽しみにしている。そして、店員だというもう1人の先輩も優しい人で、素敵な人たちと優しいお客さんたちと、楽しく過ごしていた。
そして最近もう1つ楽しみができた。それは、白川くんとお話しすることだ。松暮さんともう1人の店員さんは年が結構離れているけれど、白川くんは同い年なのだ。
「ねえ、白川くんて高校どこ?」
「内緒」
「ええ! 下の名前は? 挨拶の時も『白川です、よろしく』しか言ってくれなかったじゃない?」
「内緒」
「ええっ! 秘密主義!」
「そうだよ。っていうかこのやりとり何回目?」
「さあ、何回目だろう?」
よくシフトが被るし、お客さんがいない時はこうやってよく話している。白川くんのことが知りたくて色々聞くのにいつも答えてくれないから、このやりとりがお決まりとなってしまった。
こんな風にしてバイトが生活の一部になり、お金を貯めるという当初の目的を忘れるぐらいとても楽しくシフトに入っていた。そして2年生になったある日、店長の松暮さんから話があった。
「お客さんを増やすにはどうすればいいと思う?」
この店がオープンして1年ほど。常連さんは多いけれど新規のお客さんがあまり来ない、と言う。いいカフェなのにな。そう思っていたら、白川くんが「SNS使うのはどうですか?」と言った。
「SNS?」
「はい。今は幅広い年代の方がやっています。お店の宣伝にも使われています。山岸さんはそういうの得意だったと思うので、どうでしょうか?」
そう言って白川くんはもう1人の山岸さんに話を振った。
「そうですねえ。宣伝に関しては自信はありすが、それでどのくらいの新規のお客さんが来てくれるかは、未知数ですねえ」
「そうか」
「でも、やる価値はあるとは思いまがねえ」
「あ、私、学校で宣伝します!」
「学校で?」
「はい! 私SNSやってないからそっち方面ではお役に立てないんですけど。自慢ですけど、私、高校で有名人なんです。図書館の本を1か月で読み終えた人物、って。だからおすすめの本とか、色々な人に聞かれて各学年に知り合いたくさんいるんです。だから、その人脈使って宣伝します! 私の高校にSNSのフォロワーたくさんいる人多いので、彼ら、彼女らに話をして、ここに来てくれて、彼らのSNSでも宣伝してくれれば効果でるのではないでしょうか」
その話をしたら白川くんの顔が一瞬暗くなったけど、気のせいだよね。
「そうですねえ。そこから若い人たちに話が広がっていく、という可能性は大きいですし、それで私たちのSNSに目を止めてくれる人も増えるかもしれないですねえ」
そうして、山岸さんがお店の宣伝を私が高校での宣伝を担当することとなり、詳しい話をしていくことになった。
そして、7月。私は高校でできた人脈を使ってありとあらゆる人にカフェの宣伝をしていた。外観、内装、メニュー、あの話し合いの後常連さんたちからの意見も聞いて一部新しくした部分も含め、カフェの魅力を語りに語りまくった。そうしたら、少しずつ足を運んでくれる人たちが増え、SNSでも呟かれるようになり、多くのフォロワーを持つ人たちも来てくれて、おすすめ、と紹介してくれた。
その影響で夏休みは、県の内外からもお客さんが多く来てくれて、このカフェは一気に人気店となったのだ。夏休み後も勢いは衰えず、新たに常連となった人たちもたくさんおり、前のがらーんとした時が嘘みたいに活気溢れるカフェとなった。
そして、もう1つ変化が。なんと、白川くんがお店でナンパされるようになったのだ! 白川くんは髪の毛が少し茶髪で短く、前髪は上げていておでこが見えている。そんな彼は、「かっこいい!」「イケメン!」と話題になり、カフェの感想によく『白川くん』という言葉が書かれるようになった。まあ、確かに、イケメンだよな。でも、白川くんは「ずっと好きな人がいるので」と言って必ずかわしている。みんな、「一途なイケメン素敵!」と言っているけれど、それはその場を乗り切る嘘だろう、と私は思っていた。
そして最近もう1つ楽しみができた。それは、白川くんとお話しすることだ。松暮さんともう1人の店員さんは年が結構離れているけれど、白川くんは同い年なのだ。
「ねえ、白川くんて高校どこ?」
「内緒」
「ええ! 下の名前は? 挨拶の時も『白川です、よろしく』しか言ってくれなかったじゃない?」
「内緒」
「ええっ! 秘密主義!」
「そうだよ。っていうかこのやりとり何回目?」
「さあ、何回目だろう?」
よくシフトが被るし、お客さんがいない時はこうやってよく話している。白川くんのことが知りたくて色々聞くのにいつも答えてくれないから、このやりとりがお決まりとなってしまった。
こんな風にしてバイトが生活の一部になり、お金を貯めるという当初の目的を忘れるぐらいとても楽しくシフトに入っていた。そして2年生になったある日、店長の松暮さんから話があった。
「お客さんを増やすにはどうすればいいと思う?」
この店がオープンして1年ほど。常連さんは多いけれど新規のお客さんがあまり来ない、と言う。いいカフェなのにな。そう思っていたら、白川くんが「SNS使うのはどうですか?」と言った。
「SNS?」
「はい。今は幅広い年代の方がやっています。お店の宣伝にも使われています。山岸さんはそういうの得意だったと思うので、どうでしょうか?」
そう言って白川くんはもう1人の山岸さんに話を振った。
「そうですねえ。宣伝に関しては自信はありすが、それでどのくらいの新規のお客さんが来てくれるかは、未知数ですねえ」
「そうか」
「でも、やる価値はあるとは思いまがねえ」
「あ、私、学校で宣伝します!」
「学校で?」
「はい! 私SNSやってないからそっち方面ではお役に立てないんですけど。自慢ですけど、私、高校で有名人なんです。図書館の本を1か月で読み終えた人物、って。だからおすすめの本とか、色々な人に聞かれて各学年に知り合いたくさんいるんです。だから、その人脈使って宣伝します! 私の高校にSNSのフォロワーたくさんいる人多いので、彼ら、彼女らに話をして、ここに来てくれて、彼らのSNSでも宣伝してくれれば効果でるのではないでしょうか」
その話をしたら白川くんの顔が一瞬暗くなったけど、気のせいだよね。
「そうですねえ。そこから若い人たちに話が広がっていく、という可能性は大きいですし、それで私たちのSNSに目を止めてくれる人も増えるかもしれないですねえ」
そうして、山岸さんがお店の宣伝を私が高校での宣伝を担当することとなり、詳しい話をしていくことになった。
そして、7月。私は高校でできた人脈を使ってありとあらゆる人にカフェの宣伝をしていた。外観、内装、メニュー、あの話し合いの後常連さんたちからの意見も聞いて一部新しくした部分も含め、カフェの魅力を語りに語りまくった。そうしたら、少しずつ足を運んでくれる人たちが増え、SNSでも呟かれるようになり、多くのフォロワーを持つ人たちも来てくれて、おすすめ、と紹介してくれた。
その影響で夏休みは、県の内外からもお客さんが多く来てくれて、このカフェは一気に人気店となったのだ。夏休み後も勢いは衰えず、新たに常連となった人たちもたくさんおり、前のがらーんとした時が嘘みたいに活気溢れるカフェとなった。
そして、もう1つ変化が。なんと、白川くんがお店でナンパされるようになったのだ! 白川くんは髪の毛が少し茶髪で短く、前髪は上げていておでこが見えている。そんな彼は、「かっこいい!」「イケメン!」と話題になり、カフェの感想によく『白川くん』という言葉が書かれるようになった。まあ、確かに、イケメンだよな。でも、白川くんは「ずっと好きな人がいるので」と言って必ずかわしている。みんな、「一途なイケメン素敵!」と言っているけれど、それはその場を乗り切る嘘だろう、と私は思っていた。
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