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高校時代
③@カフェ(2)
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そしてお兄さん、改め谷口さんと出会ってメールのやりとりをするようになってしばらくして。本フェスティバルに一緒に行くことが決まってそれをウキウキで白川くんに報告していた。
「私、谷口さんと出かけることになった!」
「ふーん」
「しかも、冬だよ。寒いね、って言ってくっつけないかなあ」
「いや、お前そんな度胸ないだろ」
「うるさいなあ。まあ、そうだけど。でさ、どんな格好すればいいかな? 可愛いって思ってもらいたいんだけど」
「なんで俺?」
「だって白川くんモテモテじゃん。どんな女の子の格好にくらってくる?」
「知らねー」
そう言いつつも、白川くんはネットで検索をしてくれて、「こんなのいいんじゃね」といつもの私とは少し雰囲気が違うけれど、大人っぽいコーデを見つけてくれた。
「その谷口さんって少し年上なんだろ? なら大人っぽいのとかどうかなと思うけど」
そう言う白川くんは少し意地悪な顔をしていて。不思議に思ったけれど谷口さんとのお出かけで頭がいっぱいになっていた私は、特に突っ込まずスルーした。
「ありがとう!」
お礼を言ってそのコーデの写真を撮り、私は家にあるのでなんとかなるかな、いや、買いに行かないといけないな、と思い、友人を誘って明日の放課後に服を一緒に買いに行こう、と決めたのだった。
無事谷口さんとのデート? を終え、「服装褒めてくれた! ありがとう」と言ったら、なぜか少し顔を赤くして「良かったな」と言ってくれた。
そして2ヶ月ほど経ちバレンタインが近づいてきた。白川くんに「谷口さんってバレンタインもらってくれるかな?」とか、「谷口さんに何あげればいいと思う?」とか、それはまあいつも以上にいっぱい話しかけていた。そしたら、
「本人に聞けば?」
と真っ当なことを言われてしまった。
「そうだけどそうじゃないよー。本人に聞いて、『いらない』とか言われたらショックで寝込む」
「寝込むな寝込むな。まあ、無理だったら俺がもらってやるよ」
「本当に?」
「うまければな」
そう言ってくれたので、無理だったら白川くんにあげればいいか、と少し元気になり、私はお菓子作りを頑張った。谷口さんに『バレンタイン会えますか?』と連絡したら、『その日は忙しくて難しいかな。でも前日なら大丈夫だよ』と返ってきたので、前日に無事に渡すことができた。『え、いいの? ありがとう』と少し恥ずかしそうに笑いながら受け取ってくれてとても嬉しかった。
バレンタイン当日のバイト前。着替えて休憩室へ行ったら白川くんがいたので、昨日無事に谷口さんに渡せたことの報告とお礼をしようと思って声をかけた。
「ねえねえ、谷口さんもらってくれた!」
「ふーん」
「白川くんにもあげる」
「え?」
「無理だったらもらってくれる、って言ってくれてさ、安心したんだよね。だからお礼」
「ありがとう」
そう言って白川くん用に作ったお菓子をプレゼントしたのだった。
そして、ここでバレンタイン当日の大変さをみなさんと共有したい。以前、白川くんの人気がすごいという話はしたと思うけれど、バレンタインはそれはそれはすごかった。白川くんは、『好きな人がいるので無理です』とこれまた嘘をついて断っていたけれど、お構いなしにたくさんの可愛い子たちが綺麗にラッピングされたものを渡してくる。しかも、それ目当ての人たちが殺到したのでお店に入りたいのに入れない人たちや、いつも渡してくれていた常連さんたちから受け取ることができなくなり、それはそれは悲しい状態になってしまった。結局、人がすごいことになってしまったのでその日は急遽店を閉じたのだった。白川くんは責任を感じていたようだけれど、事前に何も対策をしなかった自分も悪いから、と松暮さんが声をかけたようで、白川くんは少しホッとしていた。
そして高校3年生になり、受験生となった。少し減らしていたけれどたまにバイトをしていた。受験勉強の息抜きになってちょうど良かった。けれど10月以降は流石に無理だと判断し、9月でバイトを辞めることにした。白川くんも同じだったようで2人揃ってのお別れ会をしてくれた。
このカフェでバイトをした約1年半はとても楽しかった。初めてのバイトで色々と不安もあったけれど、白川くんをはじめたくさんの人に支えられて仕事をすることができた。楽しくやったバイトで得たお金で大好きな本を買う。それができたこの1年半は私にとってとても思い出に残る時間となった。
お別れ会をした数日後。私の最後の出勤だった。常連さんたちからは、「最初は不安そうな顔をしていたけれど、どんどん楽しそうな顔になっていって嬉しくなったわ」や、「また会えるの楽しみにしているよ」などと泣きたくなるような言葉をかけてもらった。そして、
「たまに息抜きがてら来ます!」
と約束して最後のバイトを終えたのだった。
「私、谷口さんと出かけることになった!」
「ふーん」
「しかも、冬だよ。寒いね、って言ってくっつけないかなあ」
「いや、お前そんな度胸ないだろ」
「うるさいなあ。まあ、そうだけど。でさ、どんな格好すればいいかな? 可愛いって思ってもらいたいんだけど」
「なんで俺?」
「だって白川くんモテモテじゃん。どんな女の子の格好にくらってくる?」
「知らねー」
そう言いつつも、白川くんはネットで検索をしてくれて、「こんなのいいんじゃね」といつもの私とは少し雰囲気が違うけれど、大人っぽいコーデを見つけてくれた。
「その谷口さんって少し年上なんだろ? なら大人っぽいのとかどうかなと思うけど」
そう言う白川くんは少し意地悪な顔をしていて。不思議に思ったけれど谷口さんとのお出かけで頭がいっぱいになっていた私は、特に突っ込まずスルーした。
「ありがとう!」
お礼を言ってそのコーデの写真を撮り、私は家にあるのでなんとかなるかな、いや、買いに行かないといけないな、と思い、友人を誘って明日の放課後に服を一緒に買いに行こう、と決めたのだった。
無事谷口さんとのデート? を終え、「服装褒めてくれた! ありがとう」と言ったら、なぜか少し顔を赤くして「良かったな」と言ってくれた。
そして2ヶ月ほど経ちバレンタインが近づいてきた。白川くんに「谷口さんってバレンタインもらってくれるかな?」とか、「谷口さんに何あげればいいと思う?」とか、それはまあいつも以上にいっぱい話しかけていた。そしたら、
「本人に聞けば?」
と真っ当なことを言われてしまった。
「そうだけどそうじゃないよー。本人に聞いて、『いらない』とか言われたらショックで寝込む」
「寝込むな寝込むな。まあ、無理だったら俺がもらってやるよ」
「本当に?」
「うまければな」
そう言ってくれたので、無理だったら白川くんにあげればいいか、と少し元気になり、私はお菓子作りを頑張った。谷口さんに『バレンタイン会えますか?』と連絡したら、『その日は忙しくて難しいかな。でも前日なら大丈夫だよ』と返ってきたので、前日に無事に渡すことができた。『え、いいの? ありがとう』と少し恥ずかしそうに笑いながら受け取ってくれてとても嬉しかった。
バレンタイン当日のバイト前。着替えて休憩室へ行ったら白川くんがいたので、昨日無事に谷口さんに渡せたことの報告とお礼をしようと思って声をかけた。
「ねえねえ、谷口さんもらってくれた!」
「ふーん」
「白川くんにもあげる」
「え?」
「無理だったらもらってくれる、って言ってくれてさ、安心したんだよね。だからお礼」
「ありがとう」
そう言って白川くん用に作ったお菓子をプレゼントしたのだった。
そして、ここでバレンタイン当日の大変さをみなさんと共有したい。以前、白川くんの人気がすごいという話はしたと思うけれど、バレンタインはそれはそれはすごかった。白川くんは、『好きな人がいるので無理です』とこれまた嘘をついて断っていたけれど、お構いなしにたくさんの可愛い子たちが綺麗にラッピングされたものを渡してくる。しかも、それ目当ての人たちが殺到したのでお店に入りたいのに入れない人たちや、いつも渡してくれていた常連さんたちから受け取ることができなくなり、それはそれは悲しい状態になってしまった。結局、人がすごいことになってしまったのでその日は急遽店を閉じたのだった。白川くんは責任を感じていたようだけれど、事前に何も対策をしなかった自分も悪いから、と松暮さんが声をかけたようで、白川くんは少しホッとしていた。
そして高校3年生になり、受験生となった。少し減らしていたけれどたまにバイトをしていた。受験勉強の息抜きになってちょうど良かった。けれど10月以降は流石に無理だと判断し、9月でバイトを辞めることにした。白川くんも同じだったようで2人揃ってのお別れ会をしてくれた。
このカフェでバイトをした約1年半はとても楽しかった。初めてのバイトで色々と不安もあったけれど、白川くんをはじめたくさんの人に支えられて仕事をすることができた。楽しくやったバイトで得たお金で大好きな本を買う。それができたこの1年半は私にとってとても思い出に残る時間となった。
お別れ会をした数日後。私の最後の出勤だった。常連さんたちからは、「最初は不安そうな顔をしていたけれど、どんどん楽しそうな顔になっていって嬉しくなったわ」や、「また会えるの楽しみにしているよ」などと泣きたくなるような言葉をかけてもらった。そして、
「たまに息抜きがてら来ます!」
と約束して最後のバイトを終えたのだった。
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